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すまない。

 一気に力を込める。


「ガぁ~~~クぅ~~~!!」

「……ルアン?」


 力を込める手前でルアンの大きな声が聞こえた。

 後ろを振り向くと、目の前にルアンがいた。


 サラがいつの間にか近づいていたようだ。

 ルアンの距離は目と鼻の先だ。


 俺は只々ルアンを見るしか出来なかった。

 なぜならばルアンがポロポロと涙を流していたからだ。


「うわぁ~~~。ガクがこわいぃ~~~」

「……ルアン」

「ダメなの!! ガクはわらってないとダメなの!! いっしょにあそんでくれないとダメなの!! グスン。ダメ……なの。……わらってないと……だめなの。うわぁ~~~」


 魔力を止めた。


 痛い。


 身体が痛んじゃない。


 心が。


 心がえぐれる程に痛い。


 俺は一体何をしているんだ。

 自分の怒りに身を任せ、あまつさえ大切な子を泣かせてしまった。


 俺がやった事はルアンを言い訳にしてダルダに八つ当たりしたに過ぎないじゃないか。


「うぅ~~~。ガク~~。うわぁ~~~~」

「……ごめんな。ルアン。俺がバカだったよ……」

「ガグぅ~~~~」

「よしよし。今日は一緒に寝ような」

「うぅ~~。きょうはサラクとねるの……」

「……うん。……そうか」


 解せぬ。


 あ、身体が徐々に痛み出した。

 メッチャいて~。


「サラもごめんね」

「いえ、ガクさんが行かなければ私が行ってました」


 周りがざわざわしている。


 やり過ぎたな。


「通してください!」

「邪魔だ!!」


 出入口から人をかき分けて二人ほど入って来た。

 その入って来た人達は全身鎧を身に纏い、マントをして剣を腰に携えている。


 見るからに騎士だ。


 二人いる騎士の一人がダルダに近づいた。


「ダルダさん。私はあれ程こういった強引なやり方はいつか、こういう目に遭うと言いましたよね? 何でするんですか? バカなんですか? 金さえあれば全てが許されると勘違いしてるんですか?」

「だ、だずけ……」


 鎧で顔が見えないが、おそらく女性がダルダを叱っている。


 騎士のもう一人が後ろで頭を抱えている。


 ……俺、身体が痛いから帰って良いかな?

 ガチで内臓がヤバイ気がする。


「……うぅゲハァ……」

「ガクさん!? 今、回復を!!」


 スゲ~。

 口から血が出るので演出で実際には出ないと思ってから以外に感動が大きいな。


 だが、スゴイ量だな。

 リットルレベルで出血している気がする。


 目眩が……。


「がく~。だいじょうぶ~」


 サラが俺を回復してるからルアンが俺の膝の上に乗って俺の体調を気遣ってくれる。

 なんて天使……。


「問題ないぞ~」

「そうなの~?」

「あぁ! 元気だ」

「じゃ~。あそぼ~」


 今の今で遊びですかい!?

 うちの姫は随分と気分屋だな。


「だめですよ。ルアン。今のガクさんは絶対安静です」

「だめなの~?」

「だ、ダメです」


 揺らいでらっしゃいますな~。


「あ~すまない。一応、事情を聞きたいんだが……」


 もう一人の騎士はどうやら男性のようだ。

 しかし、声が若いな~。


「あ、良いですよ」

「おぉ~。すまない」


 騎士が俺の目の前に座る。

 随分と軽い騎士だな。

 フレンドリーって言った方が良いのか?


「俺の名前はエンドル。騎士見習いだ」

「俺はガク。あいつをあんなにした張本人だ。処罰なら俺だけにしてくれ」

「ガクさん!?」

「あっはっはっは。随分と熱い男だな、君は」


 エンドルは笑い出して、ヘルムを取った。


「騎士がヘルムを取るって行為は敵意は無いって事を意味するんだ。つまり、俺に敵意はない」

「そうなのか?」


 サラに目線を向けると頷いたので、嘘を付いていないようだ。


「まぁな。途中から外で見ていたが、殺してなきゃ問題ないさ」


 殺す前に止めろよ。


 ……まぁ、あの時はルアンかサラの声にしか反応しなかったと思うけど。


「君は自分の正義を貫いた。誇って良い。大切な者を罵られて怒れるのは素晴らしい事だ」

「はぁどうも」


 熱い男だ。


 エンドルと名乗る騎士は年齢にして二十三ぐらいの好青年って感じだがどこかチャライ感じが見え隠れするな。

 髪は結構短髪だが逆立ってる。


 金髪イケメンかよ。爆発しやがれ。


 それか顎が割れれば良いのに。


「その子が今回の騒動の中心か」

「……だ~れ?」

「ん? 俺の名はエンダルだ。よろしくな嬢ちゃん」

「じょうちゃんちが~う。ルアンはルアン。よろしく~」


 おや?

 エンダルが停止している。


「おい。ガクよ」


 いきなり呼び捨てか。


「なんだよ。エンドル」

「この子は……可愛いな」


 ……フッ。


「分かるか。見る目のあるヤツだ」

「一瞬、天使かと思ってしまった。将来が末恐ろしいぜ」


 将来?

 はっはっは。

 何を言ってるのならな。

 ルアンは嫁に出さないぞ?


「どうしたの~?」

「エンダルがルアンの事、可愛いって。良かったな」

「えへへ~。……ありがとう」

「「グハァ!?」」


 か、可愛すぎる……。


「何やんの? エンダル」

「何やってるんですか? ガクさん」


 恐ろしい。

 よし。ファンクラブ作ろう。


「ん? シャルル。ダルダの説教は?」

「終わった。ケガは骨数本って感じで軽傷だから放置してきた」


 もう一人の鎧騎士の女の人はシャルルと言うのか。

 声的にエンダルと同い年ぐらいか?


 骨数本って軽傷なのか?


「で? エンダルは何してるの?」

「妖精と話してた」

「ハァ? とうとう頭がおかしくなったの?」

「いやいや。……ほら?」


 そうか。

 ルアンの姿をエンダルが遮って見えないのか。


 俺の膝の上を指して、シャルルがエンダルを避けるようにして膝の上で女の子座りしているルアンを見る。


「え? ほ、本物?」

「ん? うちの娘だ」


 俺に聞かれたからそう答えた。


「私の娘でもあります」

「えへへ~」


 後ろからサラも娘発言をした。


 ルアンも嬉しそうだ。


「え? え?」


 混乱しているな。


「道中で保護したんだ。だが、ルアンは俺たちの家族だ」

「あ、そういうことね」


 真面目さんか?

 それとも残念さんか?


「お前もヘルム取って自己紹介したらどうだ?」

「そうだね。けど、ここじゃ人目があるわ。……君の身体が大丈夫なら場所を移動したいのだけど?」


 俺は後ろにあるサラの方を見る。

 頷くサラ。


 俺の身体は大丈夫そうだな。


「分かりました。移動しましょう」

「このお店の前にあった馬車は君たちのかしら?」

「そうです」

「では、私たちが運転しよう。君たちは荷台に乗ってくれる?」

「分かりました」


 エンダルは俺がシャルルと話してる間にヘルムを装着した。

 移動する時は持ってたら邪魔だしな。


 視界は狭まらいのだろうか?


 俺たちが動くと人混みが勝手に分かれる。

 野次の中に数人本気でルアンを狙ってるヤツの視線を感じる。


 まぁ、俺が気が付くって事はサラは居場所も分かるって事だ。

 手を出したらぶっ飛ぶだけだな。


 それに目の前に騎士がいるんだ。

 堂々と盗るヤツはいないだろう。


 外に出て馬車の荷台に乗る。


「乗った? 動くかすわよ?」

「あ、はい」


 サラに回復をしてもらったが、痛みが消えない。

 むしろ痛みが強くなている。


 おそらく、痛みすら感じない傷から激痛を生じる傷に昇格しているのだろう。

 俺にとっては地獄だが、重傷から軽傷に移行している証だろう。


「あなたがダルダにあの傷を負わせたのよね?」


 手綱を握ったままシャルルは俺に質問する。


「そうだ。俺がやった」

「殺す気だったのよね?」

「あぁ」


 間違いなく殺す気だった。

 今もあいつがふざけた事を言ったら同じ事をしてしまうと思う。


「そう。でも、あの人はそこそこ常識人よ」

「そうなのかもな」


 特に心のこもってはいない。


「今は冷静じゃないから後でまた話すわ」

「そうしてくれ」


 あいつの話はイライラしてくる。

 カルシュウムが足りなのか?


 サラは一生懸命回復に専念してくれている。


 ルアンは疲れたのか、コックリコックリとボートを漕ぎだしている。

 大きな声をだして大泣きして俺が心配かけて疲れたのだろう。


「ルアン。寝ていいよ」

「うん……。おやすみ……ガク、サラク」

「おやすみ、ルアン」

「おやすみなさい、ルアン」

「スゥ~~……」


 バックからハンカチを取り出してルアンに被せる。


 ありがとうな、ルアン。

 良い夢を見てくれよ。


「ルアンちゃん寝ちゃったか~」


 エンダルが惜しそうに声を漏らす。


 ちゃん付けだと?

 いいじゃないか。


「どこに向かってるんですか?」


 サラがシャルルに話しかけた。


「騎士の宿舎よ。あそこなら場所もしまえるし、休む場所もある。何より静かよ」

「そうですか」


 沈黙が訪れる。


「……ねぇ。そこのアナタ」

「え? 俺?」

「違うわよ。女の方」

「私ですか?」

「そうよ!」


 なんだろう。

 シャルルが怒っている。


「あまり大きな声を出さないで下さい。ルアンが起きちゃうじゃないですか」

「……ならアンタも私たちに向けるのを止めなさいよ」


 向ける?

 何を向けてるんだ?


「そうだぜ? いくらなんでもそんなに向けられると気持ち的に良い気がしない」

「そうよ」


 どいう事だ?


「サラ、どういう事?」

「アンタ気が付かないの? その子、私たちにスゴイ殺気を向けてるのよ」

「……」

「サラ……」


 ……サラもルアンの事で怒っているのか。

 当たり前か。


 俺はサラの手を握った。


「ガクさん……」

「サラ、深呼吸するんだ。張りつめた糸をゆっくりと緩めるように……」

「はい」


 サラは目を閉じ、数回深呼吸をした。


「サラ、大丈夫だから」

「……分かりました」


 馬を操縦する為に前に座ってる二人が明らかにほっとしたような声を上げた。


「なんて殺気よ。手がまだ震えてるわ」

「俺なんて手汗ヤバイぜ」

「自慢にならないわよ。バカ」


 スゴイな。

 サラの殺気を受けて平然としているなんて。


  

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