ダンジョン都市
【~第三章開幕~】
押忍!! 漢を心に秘めている、その名はガク。サラとルアンが一緒に寝ている写真を最近入手してテンションが上がっています。
ルアンの件で少々時間が掛かり、到着日が予定より数日だが増えてしまった。
まぁ、ルアンの事で時間が掛かってしまったのはしょうがない。誤差の範囲内だ。
港町ヘイルを出て約一週間が経ち、目的地のダンジョン都市に到着。
結構平和な道中だった。
ルアン爆誕を除いてね。
俺はルアンの遊び相手になってたからそれ程レベルが上がってない。
そして、なぜかルアンは俺の言う事よりサラの言う事の方を優先するようになった。
だよね~。
馬車の運転に朝昼晩の料理等々があり、俺は特に何もしてないからね。
俺もサラに頭が上がらない。
つい先日も、笑顔のままルアンを怒っていた。
ルアンも反省していた。
何やったんだけ?
あぁ、そうだ。
食べ物を粗末にしたんだった。ダメだよね。うん。
そうそう。
ルアンの食事だが、結構なんでも食べる事が分かった。
肉、野菜、果物も全部パクパク食べる。
お腹いっぱい食べるとポッコリお腹になるから面白い。
最初見た時は俺とサラで大笑いしてルアンが怒ったっけ。
「ガクさん。そろそろ順番が回ってきますよ」
「分かった」
膝の上でスヤスヤとお昼寝中のルアン。
ニヤニヤしてしまう。
今日の服は赤いハンカチだ。
緑と赤のコントラストがよりルアンの良さを引き出している。
と、ルアンを見ている暇はなかった。
ルアンを隠さないと……。
「止まれ~。証の提示をしてくれ。どっかのギルドに所属してるんならギルドカードも出してくれ」
都市に入る為に軽い入国審査だな。
……入国か?
「こちらです」
「あ、俺のはこれです」
「あ~い。良いよ~」
やっぱり絶対見てないよ!
手元の書類しか見てないし。
このオッサン大丈夫か?
「ありがとうございます」
サラはやはり普通に馬車を進ませる。
こうして帝都『ダンジョン都市』に入る事が出来た。
キョロキョロと辺りを見回す。
フムフム。
人が多いな。しかも、防具や武器を腰や背中に持ってる人も少なくない。
外からは城壁しか見えなかったからな。
しかも砲台は中に向いてたしね。何を狙っているのやら。
街の家は基本二階建てかな?
やはり木が使われている。
しかも塗料を使っているのか様々な色をしている。
もう少し統一性な。
赤や青もまちまちだ。
迷彩柄や大阪のオバちゃんが着る服のようなトラ柄の家もあった。
需要あるのだろうか。
「ふぁ~~」
「ルアン。起きたか」
「うぅ~~……グスン、グスン」
ん?
嫌な夢でも見たかな?
泣き出してしまった。
「どうした~ルアン。よしよし、大丈夫だぞ」
「うぅ~~……グゥ~」
「フフフ。また寝てしまいましたね」
「そうだね。怖い夢でも見たのかもね」
「かもしれませんね」
さて、街の発展ぶりは日本の東京を知っているからな。
この人混みもハローウィンで仮装してるように思えば違和感もない。
ん?
「教会かな?」
「そうですね。大きくて立派です」
あ、今のもう一回言ってほしい。出来ればモジモジして。
冗談です。
「俺、教会初めて見たよ。奇麗だな~」
「フフフ。教会を見てそのような感想を言うのはガクさんぐらいですよ?」
「そうかな?」
「そうですよ」
ふむ。
日本にいた時にラジオで誰かが言っていたが、日本人は結構独特な価値観を持ってるとか。
その例として外国に行った時にその国の霊堂や教会に行くってのは結構稀な事で、日本人以外はあまり見ない行動らしい。
日本人は先人を敬う文化で、寺や古い建物が好きなのだそうだ。
京都とか好きだよね。
俺、行った事ないけどね。
な~んて事を思ったりした。
「掲示板の人達は俺と同じことを言いそうだけどね」
「確かにそうですね」
できれば写メを取りたいが、これだけ人がいるとさすがに難しい。
そいえばサラはどこに向かっているのだろう?
「サラ、これからどこに向かうの? ギルド? 宿屋?」
「違います」
「え? どこ行くの?」
「フフフ。秘密です」
「ひ、秘密……」
何だろう。
このそこはかとなく不安な感じ……。
「着いてからのお楽しみです」
「う~ん。そうか」
まぁ、サラに任せよう。
俺は体内の魔力を流動させながらルアンにそよ風を送る。
この辺りは湿気が高いからな。
海から少し内陸でおそらくも少し行くと山があるのだろうな。
懐かしいジメジメである。
この一週間で魔法スキルは三レベル上がりLv十六になった。
やはり、魔法スキルはレベルが上がりづらいな。
ゴソゴソとカバンをカモフラージュにして【アイテム収納アプリ】を起動させ、スイの衰えの分かるコアを出す。
色は真っ白だった。
良かった。
「ふぅ~」
「ガクさん?」
「ん? あぁ、スイの状態が安定してるって思ってね」
「一年以上の猶予があるんですよ? 今でそんなに不安に思っていたら持たないですよ」
「あはは……。そうですね」
心配しすぎだと思うが、こればっかりはね。
「うぅ~~……」
おっと、うちの眠り姫のお目覚めかな?
「ガク~……」
「どうした?」
ボケ~っとしてるが、寝ぼけてるのかな?
「……ちゃう」
「ん?」
聞こえなかった。
「もれちゃう……」
「……あ」
戦慄……。
今すぐ止めて外でする訳にはいかない!?
どうする!?
……ック!
「……タオル出すからちょっと待ってて」
「は~い……」
しょうがない。
洗えばいいのだから。
バックからタオルを出して折、その上にルアンを乗せた。
「外は危ないからそのまましちゃいなさい」
「……ふぅ~」
見てないよ?
そういう趣味はない。
「おわった~」
「了解~」
速攻、スマホの【アイテム収納アプリ】にぶち込む。
「……ついた~?」
「ついたぞ~。ここがダンジョン都市だ」
「わぁ~~。おうちがいっぱ~い。ひともいっぱ~い」
「そうだな~」
「フフフ」
俺とルアンの話を聞いてサラが笑っている。
「ルアン。俺はここで強くなるぞ~」
「ルアンもつよくなる~。ガクをまもるの~」
「ん? 俺がルアンを守るんだぞ?」
「ダメ~。ガクはルアンがまもるの!」
あれ? 俺ってルアンにも弱い認定されてるのか?
おかしいな~。弱い素振りは見せてないはず……。
「サラクとルアンでガクをまるの~。ガクはえがお~」
「そっか~。ルアンとサラに守ってもらったら怖いモノはないな。けどな、ルアン」
「な~に?」
「俺もサラとルアンを守りたいんだ。ダメかな?」
「ん~?」
サラはさっきからニヤニヤしてチラチラとこっちを見ている。
子煩悩だからなサラも。
「わかった~」
「おぉ~」
分かってくれたか!
「ルアンとガクでサラクまもるの~」
「ハハハ。そうだな。じゃ~俺とサラでルアンを守るぞ」
「わかった~」
俺が二人を守るのってのは傲慢だったかもな。
二人で一人を守るのが一番ベストか。
さすがはうちの子だ。
頭が良い。
サラに似たのかな?
それとも俺に似たのかな?
「あ、ガクさん、ルアン。そろそろ着きますよ」
「あ、分かった」
「は~い」
ルアンをそのまま晒すのは良くないからな~。どうするかな?
「ルアン。ガクのあたまのうえがいい~」
「そうか? あぁ、ならフードを被るか」
雨用のコートみたいなモノだが、ルアンを隠せればそれで良いだろう。
もし、ルアンに手を出せば怒る者が俺のほかに一名いるからな。
「むぐぅ~。むぐぅ~。……ぷはっ!」
「あ、ゴメン、ルアン。大丈夫だった?」
「だいじょうぶ~」
身を低くして寝てるみたいだな。
被ってるのがフードじゃなければ段ボールでも良いな。
この世界に段ボールないと思うけどね。
サラが馬車が通る中央から人が通る脇道に逸れた。
スピードは一段と遅くなり、あまり人と変わらない速度になる。
こっちの世界の人の徒歩スピードは東京のサラリーマンのように洗練されてるから、俺から見たら小走りだ。
しばらくそのまま進み、大きなお店の前で止まった。
ここ何店だろう?
宿屋ではないよな?
「では行きましょう」
「あれ? 荷物は?」
「そのままで大丈夫です」
「あ、了解」
ルアンを落とさないように気を付けながら移動する。
最近は慣れてきた。
ふむ。
外観は外国のカジノみたいに派手だな。
何階建てだろう? ……四階はあるかな?
お店の大きさは一般的な中学や高校の体育館みたいな大きさだな。つまりデカい。
こんな大きいお店は初めて来た。
サラは手綱を馬車に縛り、自分の荷物を持って降りる。
俺が手を貸してふわっと降りる。
もちろん俺が手を貸す必要はない。
だが、サラが喜んでくれるからやっている。
忘れた時は機嫌が悪くなる。
「サラ、ここのお店って何を売ってるの?」
「奴隷ですよ。さぁ行きましょう。ガクさん」
「はぁぇ?」
「ガク~? いかないの~?」
先に行くサラを見ながら、俺は思った。
『あれ? 俺、売られる様な事したっけ?』、と。
ルアン。可愛いです。




