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騙された!!

 押忍!!名は学。年は三十六歳。肉体は十五歳。男の中の漢。好きな食べ物は豆腐だ。


 スミスさんとリビングへ行くとサラクがキッチンで料理をしていた。仮面をつけて。


 なぜ、仮面をつけているのだろうか。 

 エプロンに仮面は似合わないだろう。


 そう思った時期も俺にもあったよ。うん。エプロン仮面は素晴らしい。見事じゃ!!

 あの仮面の質素で無機質な感じがエプロンを付けたサラクの顔に蓋をしてしまうが、蓋をされてもサラクの溢れんばかりの可憐さは感じることが出来る。

 隠されたことでサラクの隠された部分を想像してしまう。良きかな~。


「おい」

「ハッ!!」

「お前、大丈夫か?」

「すいません。考え事してました」

「何を考えてた?」

「エプロン仮面を世界の常識にするにはどうすればいいかと」

「サラク。こいつを使え」


 あれ? ナチュラルにスルーされたような気がする。

 気のせいだよね? 


 だって重要だよ? エプロン仮面。


 五人集めてエプロンジャーってどうかな? ……うん。ボツだね。落ち着け俺。


「なにを手伝えばいいですか? サラクさん」

「……サラと」

「え?」

「サラと呼んでください」


 近づいた俺に背を向けながらそう言う少女。少し震えてる。

 これは後ろから抱きしめるべきかな? まぁ冗談だが。


「分かった。……サラ」

「はい。ガクさん」


 こっちを向いたサラクの顔は仮面で隠されていたが、口元だけは見える。溢れんばかりの嬉しそうな顔が容易に分かってしまうほどサラクは喜んだ顔をしていた。


 よかった。サラクが仮面をしていて。

 また、心臓に負担をかけるとこだった。


 今度は完全に意識を失ってたな。


「……サラ」

「……ガクさん」


 俺の手は無意識にサラクの肩を掴もうとしている。

 身体が勝手に動くなんて。


「本来なら俺は席を外すが飯の準備があるから続きがしたければ他の部屋に行け。他の奴らが帰るだろうから静かにしろよ」

「「……」」


 俺も感情が頭で整理できていないらしい。スミスさんが声をかけてくれなかったら死んでいたかもしれん。……途中でな。


 俺がちゃんとしなければ。俺は三十六の年上なのだ。ここはちゃんとした大人の対応と言うものがある。俺がリードしなければ。


「料理を続けましょうか」

「……はい」

「……つまらん」


 スミスさんがボソッと何か言ったようだが聞こえなかった。


 俺はサラク……サラの手伝いをした。切ったり、かき回したり、盛り付けたりと誰でも出来る事だ。完成しテーブルにお皿を置くサラ。ナベをかき回す俺。


「あ~やっと昼だぜ。疲れた」

「そうですね」

「サラおねーちゃんただいま!!」


 声が聞こえたので振り向くとサラとスミスさんが入って来た三人と話をしていた。


 一人はガタイの良い男とその後ろに張り付く男。スミスさんと話しているな。


 三人目はサラをおねーちゃんと言っていた子だな。サラと喋っている。子供にやさしく、慕われるサラ。マジ可愛い。


 脱線した。子供は女の子。天真爛漫というか元気っ子だな。


 その後すぐにお昼になった。紹介は飯の後だそうだ。サラの手料理美味しかった。


 そして、自己紹介。


 ガタイの良い男がマス。

 その後ろに張り付く男がシャス。


 うん、男ってどうでもいいよね?

 チッ仕方ない。マスは三十三で裏の店員。シャスは十八歳でマスの部下らしい。


 サラをおねーちゃんと言ってた子はパッチ。実の妹ではないらしい。パッチは表の店員だ。


 他にも後二人ほどいるらしいが、次回紹介してくれるらしい。


 お昼の余韻を味わいながら紅茶を飲む。サラの入れてくれた紅茶はマジ絶品。あ、無くなった。


「サラ。もう一杯もらってもいいかな?」

「はい! 分かりました」


 笑顔での対応。マジ神対応。


「オイ。ガキィ!! サラクに馴れ馴れしくしてんじゃねーよ」

「私がお願いしたんです。どうぞ、ガクさん」

「ありがとう。サラ」


 なんだ? いきなり声をかけるな!

 ビックリするだろうが。マスが俺に文句を言ってきた。俺はサラに許可されたのだ。うらやましかろう。


「チィ。サラクの良いように騙されてんなぁ? 目を褒められた。だったか? そんなの嘘に決まってんだろうが」

「な!! ガクさんはそんな方じゃありません!! それに、ガクさんに失礼です!! 訂正してください!!」


 マスが俺の悪口を言い、それに怒るサラ。いきなりどうしたんだ?


「サラク現実を見ろよ。そのガキィはお前の身体が目当てなんだよ。目を褒めるなんざ演技だ」

「……そんな事は」


 イヤイヤイヤ。バカか?

 この男は。サラの目を褒める人々は俺の他にもたくさんいるぞ?

 主にネットを主体としたコミュニティーを形成して、確か引きこもりと言う人種だったりオタクって職種の方たちだ。

 あの方たちはサラの目を見て神と崇め、お祭り騒ぎ。薄い本の発売にまでなるだろうな。薄い本など没収しに買いに行かないとな。うん。……すいませ~ん。三部ください!!


 しかも人聞きの悪い。誰が体目当てか!!

 そんな事……完全に否定できない俺がいる。と言うか話の流れが変わって来たな。俺をバカにしていたマスだが今度はサラを標的にし出した。


 サラの声が若干泣きそうな声になっていた。


 俺の中に表現できないフツフツとした感情が出て来た。


「お前の目は醜眼なんだぞ? 気味悪がられたり、化物呼ばわりされる。そんなお前の目を褒める奴なんているわけないだろう。お前自身がそれを一番分かっている。そうだろう?」

「……」


 フツフツがグツグツになって来た。


「昔のお前のセリフは確か、『私の目を褒めてくれる人は必ず現れると思います』だったか? そんな色した目を本気で褒めるなんざ頭がおかしいとしか言えんな。いてもまともじゃない。その目が原因でどんな不幸がお前自身に起きた? そろそろ現実を見ろよ。お前はこのガキに騙されてる。現に否定の言葉の一言もありゃしない。お前は一生仮面を手放すことが出来ない。その目が不幸を運んでくるんだよ。まぁ、仮面をすりゃまともに見えるからな」

「……」


 今、こいつなんて言った?


「ずっと仮面してるってんなら俺の嫁にでもしてやるよ。ガハハハハハ」

「うぅ……」


 サラが涙を流している。体も小刻みに震えている。手で口元を隠して。


「フザケンナ!! サラは俺の嫁だ!!」


 俺が、盛大に間違えた!! イヤ。間違ってないけどね。サラは俺の嫁。そう、サラは俺の嫁。大事な事だから二回言ったぞ。


「間違った!! 訂正しろ!! サラの目は幸福を運んでも不幸を運ぶことは絶対にない」


 サラが仮面越しでも分かるぐらいに驚いた顔してる。そういや何でずっと仮面つけてんだ?


「本気で言ってんのか? お前、本気でそんな事言ってんのか?」

「本気に決まってるだろう!! サラの目は醜くない。普通に考えて、何であんな綺麗な目を持つサラが不幸を運ぶなんて、呪われてるなんて考えるんだ? ちゃんとサラの顔を見ろよ。サラの笑顔がどんなにかわいいことか!! サラは笑顔が一番似合う。エプロンと仮面のコンボも惜しいがそれでも笑顔がないと意味がないんだぞ!!」


 俺は何言ってだろう?

 心の中の感情が収まらない。まぁ何を言いたいのか伝わればいいが。


「なに言ってんのか分んねな」


 ダメ出でした!!

 俺も冷静に聞いたら支離滅裂な事口走ってたな。

 だが、これだけは声を大にして言いたい。エプロン仮面はたまにやって欲しい。


「サラはかわいい。笑顔が似合う。エプロン仮面も似合う。そして俺の嫁。これだけ分かればいい!!」

「……お前は? ……バカなのか?」

「な!! そんな事な……」

「そうだ。こいつはバカなんだ。警戒するだけ無駄だ。」

「……スミスさん?!」


 スミスさんが俺の言葉を遮り、バカたと宣言。合ってるけどサラの前では言わないで~~~。


「スミスさんなんてことを言うんですか!!」

「事実だ」

「知ってますけど!! 人の口から言われると釈然としない!!」

「もう、お前はサラと別の部屋に行って愛を深めて来い」

「パッチちゃんがいる前で何てこと口走ってんですか!!」

「ほえ?」

「ガクさん……ダメ。……ですか?」

「グ!! 喜んで行きたいですが、行ったら俺は間違いなく意識を保てない!!」

「一体何なんだ。この茶番は。ボスも楽しそうに」

「ハハハ。そうですねマスさん」


 スミスさんが会話に入ったことでこの場が和やかになった。俺やサラをからかってるだけだが、多分スミスさんはあえてやっているんだろう。スミスさんには勝てそうにない。


「オイ。ガキィ。俺に訂正させたきゃ三週間ボスの指示に従え。やり遂げたら訂正でもなんでもしてやるよ。……仕事に戻んぞ。シャス」

「ハ、ハイ。マスさん。サラクさん、お昼ありがとうございました」

「はい。マスさんもシャスさんもお仕事頑張ってください」

「おう」

「はい」


 ん? 仲がいい? マスとサラの距離感がさっきと違う。どういうことだ?


「マスにまんまと騙されたな。ガクよ」

「スミスさん。どういうことですか?」

「マスがサラクの悪口を言うわけがない。ってことだ」

「え?」

「サラクを奴隷から救ったのはマスだ」

「ハァア!!」

「クックック。伏せといて正解だったな」

「なんであんな事……」

「あいつなりにお前を試したんだろう。不器用な男さ。お前を怒らせるために自分が悪者になろうとするなんてな」

「俺を怒らせる?」

「お前を怒らせて、自分になんて返すのか聞きたかったんだろう。包み隠さないままに。予想よりバカな答えが返ってきて驚いただろうがな」

「え? でもサラが涙を……」

「私、涙なんて流してませんよ?」

「え? はぁ?」

「いきなりマスさんが三文芝居を初めたので、どうしたんだと考えていました。あまりのハマりっぷりに笑いそうになってしまって。クスクス」


 声が震えてたのも、身体が震えてたのも、手で口を押さえたのも笑いを抑えたから?


「マスさんがあんな事言いませんよ。私にいつも『お前の目を認めてくれる男が現れる』って言って励ましてくれてましたし、そもそも親子は結婚できませんしね」

「……親子?」

「マスさんは私の父親ですよ。血は繋がってませんが」

「うっそ~~~~ん」

「だから言っただろう。お前はあいつにうまい具合に騙されたな」


 マジで芝居だったの? あれが? とてもそうは見えない。

 マジでスゲーなマス。


「クスクス。私はガクさんの嫁ですか?」

「あ!! いや、えっと!! ……すいません。口が滑りました」

「あ、いえ!! 落ち込まないでください!! ……うれしかったですから」

「え?」

「とても……うれしかったです」

「……サラ」

「……ガクさん」

「パッチ片づけするぞ。手伝え」

「は~~い!!」

「「……」」

「俺もやります」

「私も」


 顔が熱い!!

 何だろう。超えてはいけない一線が低すぎやしないか?しかもスミスさん。ナチュラルなスルーっぷり。そこには痺れるが憧れはしない。


「マスに嫌われたかな?」

「フフフ。そんな事無いですよ。マスさんに激励をもらったじゃないですか」

「激励?」

「三週間頑張れって言ってましたよ?」

「え? でもあれって」

「マスさんなりの激励ですよ」

「マジか~~」


 俺、マスにかなり騙されてんな~~。

 いきなりサラに嫁宣言しちゃうし。

 俺がサラに会って六時間。


 スピード結婚なんてもんじゃないな。


 でも、会ってまだ六時間か。なんか先が思いやられるな。

1日って長いよね~wって思ってくれるとありがたいです。


サラクの心情SSをどっかで入れたいと思います。

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