ニャン!
押忍!! 男の中の漢のガクです。小学校の時、缶蹴りをして楽しかった思い出があります。今の年になってやっても楽しいものなんですかね? 今度、サラとやってみようかと思います。
「何だこりゃ!?」
俺は甲板に出て開口一番がコレだった。
何故かというと、いたるところが焦げてボロボロになっていたからだ。
「俺がやったのって水蒸気爆発だよね!? 焦げないよね? あ、サラの魔法の威力が高くて水で消えなかったのか……?」
見るも無残な船の姿にそんな事を呟く。
あぁ、船の請求っていくらかかるんだろう?
「ガクさん。この船のダメージはガクさんが思ってるのと違いますニャン」
「そうなの?」
「はいニャン」
え?
何でサラの語尾が『ニャン』になってるのかだって?
そんなの簡単じゃないか。
俺にタックルした事を謝ってくれた時に何か罰をお願いします。と言われたので、じゃ~語尾をニャンにしてって言ったら了承された。
やったね!
そんな訳で今日一日はサラの語尾は『ニャン』になる。
もちろん俺との会話のみだ。
流石に人との会話もニャンニャン言ってたらおかしい人認定されてしまう。……俺がだよ?
「何があったの?」
「弾丸魚の海域を出た後に不運にも『爆裂イカ』の群れに出くわしましたニャン」
「爆裂イカ?」
「はいニャン。爆裂イカは物音に反応して突撃して爆発しますニャン」
「何その怖い生き物。俺の知るイカじゃないよ」
サラの語尾に意識が持っていかれて会話の内容があまり入ってこないが、まさか爆発するイカがいるなんて……。
ニトログリセリンとニトロセルロースを体内に蓄えてるのか?
いや、ただの魔法って事もあるか?
「それでこの惨事か……」
「はいニャン」
あ!
思い出した……。
最初に修理中の船をフローで見たが、こんな感じだった。
アレは爆裂イカにやられた損傷だったのか。
「所々穴だらけでなんで沈まないんだろうね」
「そうですね……ニャン」
サラの可愛さが上昇中だな。
出来ればもう少し恥ずかしがってくれればな~。
あ、手を握りめてる所を見ると恥ずかしいのを必死に隠してるのか。別に隠さないで良いのにな~。
むしろハニカミながら言ってくれると嬉しさ倍増なんだけど。
「そう言えば今朝、気を失ってる時に神様に会ったと言ってましたが、どんな事をお話になったんですかニャン?」
「ほとんどが下らない事だよ」
そうだった。
サラには嘘を見抜く目があるから俺が嘘を言ってない事が分かるのか。
良い目だな~。
「少しだけ良い話をしたって事ですニャン」
「バレたか。でも良い話って訳じゃないよ。直接お礼を言っただけだよ」
「そうですかニャン」
「うん」
本当にこの世界に来れて良かった。
俺がシミジミと海の地平線を眺めていると野太い声が聞こえる。
警告音が聞こえないので魔物の襲撃ではないようだ。
「島が見えたぞ~!! 降りる準備をしろ~!!」
どうやら島に付いたらしい。
船の進行方向を見るが島らしき陸地はまだ見えない。
到着するまでまだ時間は掛かるだろう。
「降りる準備をしちゃおうか」
「そうですニャン。とは言ってもガクさんのおかげで荷物はないですがね……ニャン」
どうやらニャンが付けづらい語尾があると戸惑ってしまうらしい。
それもまた可愛いので問題ない。
問題があるとすれば周りが俺を見る目だけだ。
特に女性の目が痛い。
おかしいな。
サラの罰ゲームなのに何故か被害が俺にまで来ているぞ?
まるで俺がサラに無理を強いてるようじゃないか。
……実際にそうだな。
今度罰ゲームをする時はよく考えるようにしよう。
それから俺とサラは部屋にある荷物を片付け、到着に備えた。
港に到着する前にサラから軽く今後の予定を話し合った。
到着する港の名前はヘイルと言うらしい。フローより少し発展してるらしいが売ってる物はそれほど変わらないらしい。
到着時間で変わるが、ヘイルで一泊した後に帝都を目指し馬車を使って村々を移動する。
早くて後、一週間で帝都に到着するだろうとの事だ。
長いような短いような感じだな。
サラと話し終えると丁度良くトコンが訪れた。
「失礼します。お二人にはこの船で出会う事が出来て良かったです」
「私たちもお会いできて良かったです」
サラが普通に対応する。
俺は間違ってニャンと言わないかな~。とか思っていたりする。
「港にしばらく滞在しますので、お買い求めがありましたら訪ねて下さい。この絵の看板が目印です」
そう言って絵の描かれた紙をサラに渡す。
「ありがとうございます。港を出る時はお声をかけますね」
「はい。では」
あっさりとした挨拶をして部屋を出てしまったトコン。
もう少し長い話になると思った。
そして、サラが言葉を間違えなくて残念だ。
「ガクさん。この絵がトコンさんのお店の目印ですニャン」
「ありがとう。お店を持ってたのか」
商人ってお店を持ってるイメージがなかったけど、すごいな。
……ドラゴンの首が書かれてるな。
「カッコイイですニャン!」
サラの感性を刺激したって事は俺が不吉に思った事は間違ってないようだ。
さて、俺はなんと答えるべきか。
「……俺には少し不吉な感じに見えるよ」
「そうですかニャン? ……う~ん」
絵を見てうねってる。
正直に言っても問題ないようだね。よかった。
「そろそろ到着するかな?」
「行ってみますかニャン?」
「そうだね。行こうか」
「ニャン!」
はいをニャンに置き換えて返事をした。
笑顔が可愛い。
仮面してるけどね。
甲板に出ると陸地が見えていた。
タイミングは良かったようだ。
フローではない港町が遠方に見える。
違う島に到着か~。
感慨深いな。
「よう、お二人さん。お疲れさん」
「船長。お疲れ様です」
港を眺めてたら後ろから船長が声をかけてきた。
「お前さんらのおかげで船は軽傷で到着したぜ。ありがとな」
「いえいえ。運が良かっただけです」
「ガハハハ!! 若いのに調子に乗らないてのは良い事だ。……おっと、そろそろ浅瀬だから俺が舵を握らねーといけね。またな!」
「はい」
豪快な船長だな。
以前の俺だったなら調子に乗っていただろう。
調子に乗ってサボるだろうな。
でも、今は違う。
目標があるから頑張れる。
俺より強いサラを超えるまで俺は調子に乗る事も出来ない。
そして、童貞も卒業出来ない。
エロは人を変えるのだ。
良い方にも悪い方もね。
何を言っているのだろうか俺は。
それから三十分ぐらいして船は港に到着した。
「到着~~!! 港街ヘイル!」
周りで騒いでいるのは俺一人。
少し寂しいぜ。
船から降りると荷物を下ろす作業が待っている。俺が従業員が下した荷物の中から自分たちの荷物を判別し、サラは近くで待機しているレンタル馬車を手配する。
そして、荷台付き馬車の後ろにどんどん荷物を入れる。主にサラが。
俺の『アイテム収納アプリ』にはまだ収納に余裕はあるが、荷物を持たないのは流石に怪しまれるので保存食などを入れてある。
もちろん木箱ではなく樽なのでかなり重い。
軽々持ち上げるサラには本当に感謝である。
馬車に荷物を載せて向かうはギルド会館。
船長に依頼のサインをもらった時に場所を聞いて出発した。
「やっぱり異世界の景観をぶち壊していると思うんだよな~」
「そうですかニャン? 私は慣れてきましたニャン」
俺が港街にビルのある風景に慣れるはもっと先かな~?
そんな事を思いつつ入る。
自動ドアは何か違うと思うんだよな~。
「いらっしゃいませ~」
時間がお昼時だからなのか人があまりいない。
受付の人も一人だ。
「依頼をクリアの報告をしたのですが」
「はい。こちらで出来ますよ。依頼書の提出をお願いします」
いつも通り、依頼クリアは受理された。
クリア報酬は銀貨五十枚。
少し安い感じがするけど、乗船代が浮いた事を考えるとそのぐらいが妥当かな?
「依頼を受けますか?」
「ガクさん、どうしますか?」
「え? う~ん」
依頼をする時間はないよな~。
帝都方向の依頼なら受けてもいいかな?
「帝都方向の依頼なら受けてもいいんじゃないかな?」
「ありますか?」
「少々お待ちください」
猫耳受付嬢が耳をピコピコさせながら依頼を漁っている。
触りたい。
「帝都に向けての依頼はありませんね」
「そうですか」
俺の方を見るサラに俺は首を振る。
お金を稼ぐよりも強くなる方が優先だからな。
依頼を受ける事はなくギルドを出る事にした。
「ガクさん、このまま宿を探しましょうニャン」
「あ、サラ。それもうやめてもいいよ?」
「……分かりました」
なんで少し不服そうなんだよ。
「宿を探そうか」
「はい」
サラが少し機嫌が悪くなったが、宿を探す。
探してすぐに発見した。
宿の名前は森林。
ここは港なんだがな。
大きい宿屋で馬車も一緒に置けるようだ。
「いらっしゃい。うちの宿に泊まるのかい?」
恰幅のいいおばさんがお店から出てきた。
「そう思ってます。朝食付きで一泊いくらですか?」
「うちは朝食付き一泊で銀貨十五枚だよ」
銀貨一枚が百円だと考えると一泊一万五千円は少し高くないか?
お金には困ってないけど、使えばなくなってしまうからな。
「ここはギルド割引はしてないんですか?」
「おや? あんたたちギルドに入ってるのか。なら銀貨十枚でいいよ」
「では、一泊お願いします」
「あいよ。馬車はそのままでいいよ。荷台は無くなっても保証しないよ」
「分かりました」
荷物は俺のアプリの中に入れました。
サラが宿屋のおばさんに何か言っていたので問題はないだろう。
お昼も宿で済まし、部屋でゆっくりする事にした。
サラとベットで横になって話していたら疲れがあったのだろうか、いつの間にか寝てしまっていた。
お金の単位を変更いたしました。
過去の話も随時変更いたします。




