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朝食

 押忍!! 男の中の漢のガクです。この身体になって驚いた事は若い身体は動かしやすい! です。三十六歳の時は腰や肩が痛かったので驚きました。たまに肩を回したり、腰を叩いたりしてしまいますがね。


 いや~。昨日は散々だった。


 弾丸の如く飛んでくると魚と遭遇だったり、撃退の案を無茶ブリされたり、撃退後にサラにタックルされて幽体離脱したり、散々だった。


 まぁ、神ちゃんに会えたのは嬉しかったけどね。

 帰りに告白をしたが、ぶっちゃけた話をすれば返事は期待していないのだ。


 それもそのはず、相手は神様。


 どう足掻いても叶わないことの方が多い。

 直接神ちゃんに告白できたことはでも俺的には満足だ。


 ……コレで夢でしたってオチはないよな?

 怖くなって来たぞ?


 それに俺が死んだらおそらく神ちゃんのところに行くだろからその時は百年ぐらい傍にいても良いか聞くとしよう。

 なんとなくだが、ダラダラと愚痴を言った後に渋々だが許可をくれそうだ。


 死後の楽しみがあるってのはどうかと思うけどね。


 そんなことをベットでゴロゴロしながら考えているとドアをノックする音がした。


 誰だよ!

 サラの寝顔を見ながらニヤニヤしてたのに!


「すいません。トコンです。朝食がまだお済ではないのならご一緒にどうですか?」


 ……結構です。


 と、言いたいが昨日は俺の看病に付き添ってくれていたし、好意を無下にするのは忍びない。


 しょうがない。


 俺が起きてドアを開ける。


「おや? まだお休みでしたか」

「えぇ。昨日は気を失ってた時に神様とお喋りをしていて疲れていたので」

「面白い事を仰いますね。そのぐらいの事を言えるのでしたらお身体に異常は無いようで安心いたしました」


 事実なんだが。

 疲れたのは嘘だがな。


「その節はありがとうござます。目を覚ますまで付き添って頂いて」

「いえいえ。それでいかがですか? 体調がよろしければ朝食など」

「ありがとうございます。お言葉に甘えようと思います」


 せっかく誘ってくれたんだから受けよう。

 この人は面白い人だしね。


「分かりました。お誘いを受けて頂いてよかった。では、ご準備が出来ましたらまた訪れますので」

「分かりました」

「それでは」


 トコンさんの後ろ姿を見てドアを閉める。


「朝食れすか?」

「あ、サラ。起こしちゃった?」

「らいじょうぶれす~」


 サラは緊急時や自分から起きた時は寝ぼけることはあまりないが、起こされた時などは大体が寝ぼけている。

 これはコレで可愛いので俺としては不満より幸福感がハンパない。


「サラ? 寝ぼけてる?」

「ねぼけましゃんよ~! しゃんとおきてるじゃなれすか~!」


 なんで半ギレなのかは分からないが、とても可愛い。

 枕を両手でポフポフして自分の怒りを表現しているが動きがスローだ。


「サラ。生麦生米生卵って言ってごらん」

「らまむぎらまごめらまままご……ん? いえました~」


 最初から言えてないぞ。

 可愛いので合格としよう。


「偉い偉い」


 あまりにも可愛いのでナデナデしてみる。


「えへへへ~~」


 顔が緩みっぱなしだ。

 俺の顔も緩んでしまう。


「ガクしゃ~ん」

「ヤバッ!?」


 サラに近づき過ぎて抱き付かれてしまった!


「ぎゅ~~~~~」

「イダダダダダダダ~~~~~~~!!」


 身体からはメキメキ言ってる!!

 鳴っちゃいけない音が鳴ってる!!


 腰が!?

 腰が折れる!?


「あれ? あ、ガクさん。……おはようございます」

「おぅ……。おはよう。サラ」

「……回復させますね」

「お願いします」


 恒例になりつつあるな。これ。


 サラは寝ぼけていたが、なぜかトコンさんとの朝食の話は覚えていた。

 本当になぜ?


 まぁ、説明が省けたと思って納得しておこう。


 トコンさんが再び訪れたのは俺とサラが着替えたり身嗜みを整えたりが終わって五分後だった。


 あ、着替えの時は俺は目隠しをしてるよ?

 それか外に出ている。


 生着替えを見れないのはとても悔しい限りだが、目を隠されていることで耳に集中することができるのだ。分かる人ならこの言葉で分かるだろう?

 着替える際に出してしまう音やあえて抑えようとする音などがあるのだ。

 呼吸や吐息も意外に多いのが目を隠されたことで知ったことだ。


 後、目を隠されたことで集中できるのは耳だけではない!!


 想像力がフルに発動できるのだ~!!


 分かるか?

 服を脱ぐ際に自分でも気が付かない無意識に出してしまう音を聞き、想像するのだ。


 現実ではただの作業だ。

 着替えなど見てもたいして興奮することはないだろう。……俺はするかも。


 だが、想像は現実を超える!!


 素晴らしきかな目隠し着替え。

 機会があれば試すといい。数を重ねると分かってくるさ。


 で、どうして俺はこんなにもおバカなことで盛り上がってるだっけ?

 どうでもいいか。


 俺たちの部屋を訪れたコトンさんに付いて行き、ある部屋に到着。


 ここで俺たちが乗っている船の説明をしようと思う。

 簡単にだがな。


 全長が四十m

 全幅が十メートル


 日本にある木造船より小型だが、あんなボロボロなのを数日で直す手腕があればこれより大きな船も作れるだろうな。

 おそらくこの大きさが目的に沿っているんだろう。


 一般の部屋は少なく十部屋もない。乗組員を含めてやっと十部屋に届くだろうな。


 船のほぼほぼが荷物を入れる部屋で初日にサラと探検したが、あまりにも荷物部屋しかなくて退屈だった。

 部屋には入ってないよ? 部屋に貼ってある看板を見ただけだ。 

 

 そして重要なのが一般の部屋の階層だ俺とサラの部屋は全三階ある二階だ。

 一番したが三階層で荷物の階層で一階層は部屋が三つしかない。

 一階層はいわゆるVIP階層ってこと。


 まぁここまで説明すれば分かると思うが、コトンさんが俺たちを案内したのは一階層だった。


 日本にいたころの偏見なのだが、VIPとか高級な場所にいる人にいい奴はいないと思っている。

 性格が腐ってたり、お金にモノを言わせて碌なヤツいないと思ってしまう。


 あれ? 今、一瞬だけスミスさんがタバコを加えて俺を見下してるのが見えたがなんでだろう?

 寒気が……。


 あぁ……。この寒気はこれからの予感を予想させるモノなのだろう。

 お金持ち怖い。


「どうぞ」


 そう言ってドアを開けるコトン。


「失礼します」

「し、失礼します」


 サラと俺が部屋に入り、後ろから少し遅れてコトンが入った。


 部屋は広いが、そこまで広いという分けでもないらしい。

 ベットはないが、テーブルとイス。それとソファーとかがあるぐらいか。


 まぁテーブルの近くにシェフらしき人がいるのは緊張する。


「こちらにどうぞ」


 シェフがイスを引いてくれた。

 

 スゲ~。

 高級店ってこういうサービスがあるって聞いたけど、本当だったんだ!


「本日、皆さんにお食事を提供するダゴン、と申します」


 渋い声や!

 鍛えているのだろうか洋服を着ていても胸板や背中、腕や足の筋肉が隆起している。

 だが、締まっているのか太ってる印象はうけない。


 眉や髭が濃く目つきは少し鋭いな。

 本当に料理人か?


 剣士とかじゃないよな?


 そう思いながら席に着いた。


「ダゴンさん。料理お願いします」

「かしこまりました」


 そう言って部屋を出るダゴンさん。

 歩く動作にブレがない。


 強そうだ。


「料理を待ちながら少し昨日のことを聞いてもよろしいでしょうか?」

「大丈夫ですよ。何をですか?」


 俺に話が振るわれるって珍しい。


「昨日の弾丸魚を追い払った現象についてです!! あれは何という現象なんですか!?」


 身を乗り出して聞くことだろうか?

 それにしても近いな。


「昨日のヤツは水蒸気爆発と言うものです。今回も成功して良かったです」

「ほうほう。水蒸気爆発……ですか」


 いきなりコトンさんがブツブツと呟き始めた。


「……なるほど。水と高温の物体をぶつけることで急速に気化をさせ、水蒸気を発生させた。と言うことですね?」

「簡単に言えばそうです。詳しく言うと大変なので省略しますね」


 水蒸気爆発と言えば水に高温の鉄球を入れれば爆発すると思う人が多いが実際にはメカニズムがあり、素人が水蒸気爆発をさせようとしても起こるのは激しい蒸発現象。鍋で水がブクブクと煮立つのと同じことが起こる。


 水蒸気爆発の現象を簡単に言えば瞬間的な小さな蒸発の連鎖だ。


 専門的な用語や現象名などは忘れたので説明の使用はないが、ポイントは固形物ではなく流動したモノや粒子物が望ましいって事だな。


 後は魔法で同じ現象が出来て良かった。


 ってことを執拗に聞いてくるコトンに説明をした。

 省略したいって言ったのに……。


 その頃には朝食を持ってきてくれダゴンさんによって止められ、普通に朝食タイムになった。


「コトンさん、そういえば雇い主の方がお見えになりませんが、お食べにならないのですか?」

「あ~。船酔いで朝食は抜いているんですよ。昼は食べてますよ。ただすぐに戻してしまいますがね。アハハハハ」


 アハハハ。

 じゃなくない?


「そうなんですね」


 サラは笑ったことはスルーするようだ。

 

 その後は俺の絶対時間が発動され、誰からも話をかけられない!

 自分で言てて悲しいぜ!


 サラとトコンさんは魔法の話で盛り上がってるようだ。


 あぁ。中学でご飯食べようとグループになるも一言も話さずにお昼が終わったあの頃を思い出すぜ……。


 そして特に何もなく食事が終わった。


 料理の感想は昨日の弾丸魚が出てビックリしました。

 たいへん美味しかったです。


 俺とサラはお礼を言って部屋を出ようとしたらトコンさんに話を振られた。


「ガクさん。そう言えばこんな噂をご存知でしょうか」

「噂?」

「はい! どうやら魔族が動き出すと言う根も葉もない噂です。あなたはどう思いますか?」


 ドキッ!

 っと少ししたが表情には出なかったはず。


「……そうですね。火のない所に煙は立たずと私の居た場所では言うので、何かしらが起こっているのかもしれませんね」

「貴重な意見が聞けました。ありがとうございます」

「こちらこそ。失礼しました」


 ドアを閉めてバクバク鳴る鼓動を落ち着かせる。


 そもそも何で俺がドキドキしているのか自体謎なのだが?

 何でドキドキした?


 恋じゃないぞ?


 変な回答はしていないだろう。


 そう思い俺はサラの後を追った。



--------


「あの二人です。どうです? あなたの目に留まりましたか?」


 サラク、ガクが去った部屋にいるトコンがシェフのダゴンに話を振る。


「お前が気になるヤツを見つけたと言って変装までしたのに……」

「ダメでした?」

「女はそこそこだろうが男はダメだな。金の気配がしない」

「オーナーの基準は厳しいですね」

「俺はお前みたいに甘くはない」


 ダゴンは服を緩め、トコンの向かいに座った。


「サラクさんはあの若さで私より魔法の力量が上なんですよ?」

「……お前って生粋の魔法使いじゃないじゃん」

「ガクさんは私より奇抜な思考を持ってますよ!」

「お前って自分の興味あること以外覚えないじゃん」


 二人の間に寒い風が流れる。


「まぁあのガキは少し見る目があるな」

「おぉ! それは何ですか?」

「フッフッフ」


 ダゴンは立ち上がり服に手をかけ、脱いだ。


「この筋肉をキラキラ目で見たのは高評価だ!!」

「あ~。……はい。そうでしたね」


 興味を失ったように愛想笑いをし、お茶を啜るトコン。


 自分の筋肉を主張させるように様々ポーズをするダゴン。


 カオスな空間が広がっていた。

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