私の目標
押忍!!漢が眠る男。名は学。三十六歳。肉体は十五ぐらいです。戦闘でサラはやっぱりチートだな~。と再認識しました。
サラと部屋で先ほどの戦闘の話をしていたらサラが突如、立ち上がった。
「では、出かけましょうか」
ん?
お出掛けとな?
俺的に今日はサラと一緒にこの部屋でお話しでも構わないんだけど。てか、どこに行くの?
「アレ?ガクさん。今日はギルドと船の修理工場に行く予定ですよね?」
「……そうだった」
今朝の衝撃で色々と抜けてしまったよ。
よっこいせ。と重い腰を上げて準備をし始める。
と言っても特にやる事はないんだけどね。
「最初はどっちにする?」
「修理工場にしましょう。ギルドに行ったらいつ帰れるか分かりませんからね」
「分かった」
と、いう事で修理工場に向かう。
ガガとペルモッツによろしくと伝え、俺は安定の荷台に乗る。
あぁ、今日はいい天気だな~。と思いながら揺られ、これからの予定を考える。
まずは船だ。
船って一つ作るのにどれくらいの時間が掛かるのか若からないけど、二・三日で出来る程、簡単じゃないよな~。
一ヵ月は掛かるのかな?
そうなると、帰りも不便だな~。
飛行機ないかな?
「ねぇ、サラ?」
「何ですか?」
「サラって空飛べる?」
サラぐらいの魔法が使えると空とか余裕そうだね。
「フフフ。ガクさんは面白い事を言いますね。人が空を飛べるはずがないじゃないですか」
「あ、違うよ?魔法とかで」
サラは俺が人は空を飛ぶと本気で思ってるのだろうか、地味にショック。
「魔法で空を飛ぶって事ですか!?」
「そうそう」
サラは急に黙り込んでしまった。
俺は何かマズイ事を言ってしまったのだろうか。
「考えた事がありませんでしたね」
「そうなの?」
意外だな。ゲームだと空を飛ぶ魔法なんてありきたりなんだけど。
「はい。物を浮かす魔法はありますが人が飛ぶ魔法はありません。その発想がありませんでした」
「そうなんだ。じゃ~テレポートは?」
「テレポートって何ですか?」
分からないか。そりゃそうだね。
「別の町から別の町に一瞬で移動できる魔法みたいな感じのモノ」
「それは……存在したら大変な事になりますね」
少し考えてサラの言葉の意味を理解した。
俺の説明不足もあったけど、好きな場所に移動できたら戦争と暗殺などで活躍できる。
「無いんだね?」
「多分、魔法では存在しませんね」
「魔法じゃなければあるの?」
「ありますよ」
魔法じゃなければ存在するのか。
「魔道具?」
「そうです」
俺も中々、分かってきたじゃないか。
「高いの?」
「高いのもあれば安いのもありますね」
ピンキリか。
「一回で壊れる物は安いですが、複数回使えるのは高いですね。」
「そうなんだ」
「はい。そもそも使い方としてはダンジョンでピンチになった時に使う物ですからね」
緊急避難装置みたいなものか。
必ず買おう。
「別の町に行く魔道具はありません。存在したらかなり高いはずですね」
「そっか~」
残念だ。
「残念そうですね。どうかしたんですか?」
「あれば簡単に移動できるからね。帝都からこっちに帰って来る時の時間が早くなる分、向こうで長く鍛える事ができるじゃん?」
移動時間に割く時間が多いのがネックだ。
「あ、そういう事ですか。大丈夫ですよ。焦りは禁物です」
「焦りって程のモノじゃないよ。ただ、あったら楽だな~。って思っただけで……」
焦ってる訳じゃない。と思うけど、サラの実力を見たら焦る気持ちが出てもおかしくはないかな?
「確かに楽ですが、私はこのままがいいですね」
「なんで?」
大変じゃないのかな?
「ガクさんと一緒に旅が出来て嬉しいんです」
ジ~ン。と心に響いた。
目頭が熱くなってしまった。
「え、あ、ガクさん!?何で泣いてるんですか?」
「泣いてないよ。ただ、嬉しくてね。年を重ねると涙もろくてね~」
実年齢は三十六だからね。
「スミスさんも同じ事を言ってましたね」
「ごめん。冗談。二度と言わない。俺はまだ若い」
肉体の年齢は十五歳だしね。
「フフフ。分かってます。楽しんで旅をしましょう」
「そうだね。二人で強くなろう」
楽しく。
「私の目標は空を飛ぶ事にします」
何だかかなりやる気になってるけど、サラだと簡単に出来てしまいそうだな。
「俺の目標は……とりあえず楽しむだね」
「フフフ。ガクさんらしいですね」
「ありがとう、サラ」
最終目標はハーレムだが、簡単な目標を俺たちは決めた。
サラの空を飛ぶ目標を応援しよう。
空を飛ぶ時はスカートでして欲しいな。グヘヘ。
そんなこんなで、修理工場に到着。
「おう。来たな~」
親方がちょうど、近くを通りかかって俺たちに気が付き話をかけに来てくれた。
「どうも。船の修理状況を聞きに来ました」
「船は大方、大丈夫だ。後は船の護衛を付けるだけなんだが、コレが大変なんだ」
おい、オッサン。今なんつった?
船ってそんな簡単に出来ないだろう?
「護衛の基準はありますか?」
「そうだな~。必須は風。準基準は水と陰か陽って感じで強さは魔法学校卒業って感じだな」
あぁ、この世界にレベルって概念がないからな。魔法レベルがいくつって感じで言わなんだった。
魔法学校ってなんだ? サラと一緒に行ってみたいな。来るか? 学園生活!
「それをギルドには?」
「申請済みだ。明日か明後日に集まらないようなら、『赤城の魔導士』に依頼を出そうかと思ってるところだ」
赤城の魔導士。カッコイイな。
「依頼なら私が受けますので、大丈夫です。私は準備、準基準の魔法を使えます」
「う~ん。嬢ちゃん一人じゃ厳しいな。複数人は必要だ」
「分かりました」
おや? 俺はサラの強さなら余裕だと言って無理やり乗せてもらうと思っていたんだが、考え違いだったか。
「おう。嬢ちゃん以外の魔法使いが数人居れば、船は数日中には出向するだろう」
「はい」
そう言って手綱を握り、馬車を出発させる。今回、俺は喋っていない。
「では、ギルドに行きましょう」
「うん。でも意外だったな。サラは、『私が一人いれば大丈夫です』って言うかと思ったよ」
「フフフ。私もそう言おうかと思ったのですが、『赤城の魔導士』に頼む程の依頼ですからね。甘く見ない方が良いと判断しました」
また出た。
「その『赤城の魔導士』って誰?」
「フフフ。ガクさんも知っている方ですよ?」
俺の知ってる人は少ないぞ? 誰だ?
「フフフ。スナーチャさんですよ」
「マジか……」
「マジです」
赤城の魔導士がスナーチャさんだったとは。世間は狭いね。
「なんで赤城の魔導士?」
「スナーチャさん曰く、『赤い死体が城ほど積み上げた魔導士』らしいです」
怖い話だな!!
「でも、スナーチャさんはこの名前が不服らしいですね」
「そうなの!?」
カッコイイのに。
「はい。『今なら死体程度、消し炭も残さない』だ、そうです」
どっかで聞いたぞ、そのセリフ。
そのセリフをリアルで聞くことになるとは、身震いが止まらないぜ。
「スナーチャさんに頼む程の依頼だから、素直に引いたって事ね」
「そうです。幸いにも私以外の魔法使いは居ますしね」
そうなのか?
「早めに行けそうで安心しました」
「それなら良かった」
それからしばらくしてギルドに到着。
「相変わらず人がいないね」
「そうですね」
人がいない。平和って事でいいのだろうか。
「あ、こんにちはにゃー」
俺は反射的にサラの後ろに隠れてしまった。
「こんにちは。お元気そうで良かったです」
「その件では申し訳なかったにゃー」
俺はサラの後ろから顔を出して挨拶した。
よかった。元気そうで。
「ギルド長に私たちが来た事を伝えてください。後、船の護衛の依頼を受けに来ました」
サラが受付の人に伝えた。
「分かりましたニャー。ギルド長には別の人に伝えに行ったニャー。なので、依頼の手続きをしますニャー」
そう言って紙を出し、サラがスラスラと書いていく。
「あ、それとランクアップの修正を行うニャー」
「どういう事ですか?」
俺も思った。
「前回は私じゃない私が手続きを行ったニャー、しかもかなり間違いが多くて大変だったニャー」
「それで?」
「間違った箇所を正しく変更したら、二人のランクが上がるのニャー」
「なるほど」
これは嬉しいね~。
「では、ギルドカードを貸して欲しいニャー」
俺たちはギルドカードを渡した。
「どれくらい上がるんですか?」
俺が聞いた。
「う~んとニャー」
「どうかしたんですか?」
言いづらそうだ。
「グレードが上がるニャー」
「「ハァ!?」」
グレードって俺たちがCになるって事だ。
「試験はどうするんですか?」
「ギルド長が免除を言われたニャー」
ギルド長は何を考えているのだろう。
「そうですか。では、Cグレードの十ランクと言う事ですか?」
「そうニャー」
おぉ。これは幸先がいいな。
「少し待ってて下さいニャー。Cグレードのギルドカードを持って来るニャー」
そう言って席を立ったメイド受付。
「サラ、Cグレードになれて良かったね」
「そうですね。このグレードなら簡単にダンジョンに入れそうです」
ダンジョンに入る時にランクが高いと入れるダンジョンの数が変わるらしいからな。高い事は良いことだ。
「お待たせしたニャー。これがCグレードのギルドカードニャー」
形は変わらず、素材が少し良いモノになったかな~程度のギルドカード。
だけど、少しうれしいね。
「ギルド長が呼んでたニャー。ギルド長室に向かうニャー」
「分かりました」
「はい」
俺とサラは依頼とランクアップの手続きを終えてギルド長室に向かった。
エレベーターに乗って向かったが、何を言われるのか分からないが怒られたら嫌だな~と思い。俺の心は少し重い。
サラはエレベーターの外を見て、ニコニコしていた。可愛い。
ギルド長室がある階に到着し、しばらく歩き、到着。
コンコンとノックをして声をかけるメイド受付。
「ギルド長!!連れて来たニャー!!」
すると中から、
「どうぞ」
の、言葉があり、
「入るニャー」
と言って入っていくメイド受付さん。
大変だな~。ギルド長っとなぜか思ってしまった。
「失礼します」
「します」
部屋に入るとギルド長はテーブルで書類と格闘していた。
「私は戻るニャー」
そう言ってメイド受付さんは帰って行った。
「ふぅ。……お掛け下さい」
帰ったと同時にため息交じりに息を吐き、俺とサラを席に促すギルド長。
その顔は昨日見た時より少し疲れが見え隠れしていた。




