戦闘二
では、戦闘でサラがどうやって敵を倒したのかを話そう。
最初に結末を話そう。だけどこれは分かってる通り、サラの圧勝で終わる。そして戦闘時間は計っていないので正確な時間は分からないが、十分も掛かっていないだろう。
そして俺は何も分からず、棒立ちしていただけだ。
敵が声を上げて攻撃を仕掛けてきた瞬間にサラは敵全員にデバフ系の魔法を使った。しかもダブルで。
デバフ系の魔法の効果は『動きの阻害』だ。
簡単な話、動きを遅くするだけの魔法。
先制をサラが取ったのは距離の問題と敵の魔法使いの熟練度の浅さが原因。
敵の魔法使いは丁寧に詠唱を開始していたのだ。サラに言わせたらカモだ。
PVPの基本は如何に先手を出し続けるか、戦闘を優勢に進められるかに掛かっている。
魔法使いが詠唱を唱えるのは敵が自分に気が付いていない時か味方が敵を抑えている状態になってからだ。
敵の動きは見るからに遅くなった。
敵の魔法使いは詠唱していた魔法を辞め、新しい詠唱に切り替える。
戦士と剣士は肉体強化のスキルを使い、いつも通りの動きを取り戻そうとする。
が、ダブルのデバブ系魔法の効果を完全に打ち消す事が出来ないらしく、動きが遅いままこちらに向かって来た。
サラは更に砂の魔法を使った。
細かな砂が敵を飲み込んだ。
戦士と剣士は足を止める事無く突き進み、魔法使いも詠唱を続けている。
サラは砂を目潰しや足を止める為に敵に向けたのではなく、戦士と剣士、魔法使いと女の間に壁を作る為に砂を向けた。
そして、サラは敵の間に壁を作る事に成功する。
魔法使いはまた詠唱を辞め、別の詠唱を始めた。
剣士は壁を壊す為一旦下がり、戦士はそのまま突き進む。
サラは敵戦士が近づく間に自分にバフ系のスキルをかけた。
その数は五つ。
五重強化魔法。
しかもそれぞれが別々の魔法で効果は『速度上昇』『防御力上昇』『筋力上昇』『動体視力上昇』『身体能力上昇』だ。
そして、俺はこの辺からサラの動きが分からなくなってしまった。
サラが五重強化魔法をかける間に戦士が接近し、サラに攻撃を仕掛けた。
四人の武器は二人が短剣、一人が拳、一人が小斧。
それぞれ片手に武器。片手に盾を持っている。
右正面から拳の戦士が大振りで渾身の右ストレートを放ちサラに殴りかかったが、サラはその攻撃を避けた。
避けた際に回し蹴りを食らわせ、吹っ飛ぶ戦士。
俺はビックリ。
左正面から片手剣と右側面から小斧を持った敵がサラに攻撃を仕掛けるが、サラは頭上から降ろされる短剣を手刀でへし折り、真横から来る小斧を杖で頭上に弾く。
そこにサラの右ストレートが短剣の男の腹に、その反動を活かした回し蹴りがまたもや炸裂し小斧を持った男の左わき腹にのめり込む。
そして吹き飛ぶ二人。
ビックリする俺。
残った戦士は壁を壊していた剣士二人を呼び、攻撃するように指示。
だが、サラは残った戦士との距離を一瞬で縮め、杖でお腹をド突き、敵は吹っ飛ぶ。
吹っ飛んだ方に剣士の一人がいた。
サラはあえてその方向に戦士をブッ飛ばし、一人の剣士を足止めした。
サラが作った壁はこの時に崩された。
魔法使いが崩れた壁からサラを視界にすると、デバフ系魔法をかけた。
だが、サラの動きは変らない。
サラも防具が敵の魔法を弾き飛ばしたのだ。
サラは戦士を壊滅させ、剣士のいる場所に突撃をかけた。
向かう途中に光の魔法を使った。
ここら辺で俺はサラを完全に視界から消える。多分「目が~~、目が~~」とか言っていた。
サラは自分の後ろで発動させ、自分は全く目をやられる事なく剣士に近づき、頭を杖で殴打。
戦士を飛ばされた剣士もすくい上げる杖をあごに受けて撃沈。
この時点で、残るは魔法使い四人と女と剣士が二人だ。
サラは剣士が放つ飛ぶ斬撃を事もあろうに素手で破壊し、距離を詰める。
魔法使いもデバフ系魔法が効かないと分かると火や石の魔法を使い、サラに攻撃するがサラは同じ魔法を同質量ぶつけて相殺していた。
女も焦りの色が見え、残った連中に檄を飛ばしていた。
未だに目が復活しない俺。
サラは二人の剣士を相手に杖術で攻撃していた。
魔法使いは接近し過ぎた剣士を魔法で巻き込みたくないので攻撃魔法を打ち出すタイミングを伺うが、サラが火や石の魔法を敵魔法使いに放つ。
剣士の左右から来る攻撃を杖で受け流し、時には避けて魔法使いに魔法を使わせない。
サラは剣士二人をあえて攻撃せず、魔法使い四人に攻撃をさせないようにしていた。
四人の魔法使いは熟練度が低いのは見抜いてるので、後は魔力切れを狙う。
その為に相殺できる程度の魔法を次々と放つ。
しかも、剣士二人の攻撃を捌きながら。
剣士動きに疲れを感じたサラは、二人の剣士の剣を杖で粉砕し魔法で威力を上げた杖で腹部を殴打。
吹っ飛ぶ剣士。
やっと目が回復し見えるようになった俺。
またしても一気に距離を詰めて魔法使い四人を手刀で落とす。
四人は魔力がそこを尽き、立っているのもやっとの状態だった。
そこで女がサラに向かいナイフを投げた。
サラは避けず魔法で弾く。
女は最初のデバフ系攻撃から戦士の一瞬の壊滅、壁のを作られ戦力の分断。魔法使いのデバフ系魔法が効果が無く、攻撃魔法も相殺され。剣士も惨敗し魔法使いは魔力切れ、残る者は自分一人で精神的にかなりおかしな方向に向かっていた。
狂気のようなモノへと。
サラは杖で攻撃するも、女は執念で起き上がってきた。
サラも殺さないように手加減し、四肢の骨を砕きやっと女は地に伏したのであった。
そして俺は辺りを確認し、敵がいつの間にか全滅した現状を理解し、「スゲー」と言葉が無かった。
今回、サラがやった事は常に戦闘で先手を打ち、相手が予想出来ない攻撃をし続けた。
デバフ系の魔法は効果時間があり、時間経過で効力を失う。バフ系のスキルも同じだ。
長さはバフ系のスキルの方が早く切れる。
サラが剣士二人の相手をしてる最中に効果が切れたらしいが、剣士の腹部を殴打する際に風の魔法を使い先端の速度を上げて殴った。
その結果はバフ系のスキルを使った時と同じ威力があった。
魔法使いの処理は魔力切れを初めから狙っていたのだ。
魔法は相手を認識しなくては打てない。なので最初は壁を作り戦力を分断。
その間に戦士を倒す算段だ。
すべてサラの計算通りに事が運んだらしい。
思う事が一つ。
俺はサラを超える日が来るのだろうか。
――――――――――――
「かなり話が大きくなってませんか?」
「でも事実でしょ?」
サラはモジモジとして小さな声で、
「はい」
と、答えた。なにこの反応。マジで可愛いんだけど。
「サラ、五重強化って難しい?」
「難易度は種類によって変わりますね」
ん?種類とな?
「例えばすべて木の魔法の五重強化とそれぞれが別の魔法では難易度がかなり変わってきますね」
「どれくらい?」
サラは「むむむ~~」と考えた。
ヤバイ。これも可愛い。
「すべて同じ魔法で五重強化をするのは同じ字を素早く書くと思って下さい」
「ほうほう。それぞれが別の魔法で五重強化を使うのは?」
「両手両足と口で同じ字をキレイに完全に同時に書くぐらい……ですかね」
難易度上がり過ぎじゃね?
「多分、もう少し難しいと思いますけど」
想像を絶する難しさ。
「サラって何歳くらいから魔法を使ってるの?」
「約十年前くらいですね」
十年でこの強さか。
アレ?
単純に俺って十年ぐらいはサラにエロい事出来ないのかな?
あぁ、頑張ろう俺。
「他に聞きたい事はありますか?」
「あ、何で回し蹴りとか出来るの?」
パンチも意外だった。
「マーナ姉さんに稽古を付けて頂きました」
「うん。納得」
そうか。マーナさんに教えてもらったのか。
格闘技術使え、魔法も使え、杖術も使え、料理が出来て、優しくて、家庭的で、可愛い。
サラはやっぱりチートだな。
読み難い箇所がありましたら知らせて下さい!!




