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考え

 押忍!! 中々漢を見せる事が出来ない男子。36歳。名前はガク。あ、今からちょっと殺し合いの現場に入ります。はい。


 サラの付けたマーキングを頼りに敵を追い詰めてる感じで後を追っています。


 敵さんからしたら俺達をおびき出してると思ってるんだろうけど、こっちからしたらそれを承知で罠に飛び込んで捻り潰すとか考えてたりで俺の心の余裕がガリガリと音を立てて削れてます。


 敵さんが向かっている場所は貧民街の中のより悪い者達が生活したり縄張りしたりしているところだ。とサラに聞いた。


 あぁ。何で戦地に向かわないと行けないの~!?


 と思う俺の残り少ない余裕で考えるが『敵は商品』が信条のスミス家の教えを忠実に受けたサラは頼もしい背中でドンドン先に進んで行く。


 サラって十六歳だよね。


 情けない三十六歳を大目に見て下さい!!


「……敵が止まりました」


 サラが足を止めて小声で俺に伝えてくれた。


 つまり……。


「敵が私たちを殺す場所に付いたって事ですね」


 言い方を少しオブラートに包んで欲しいな。


「……行くんだよね?」

「え?そうですよ?」


 いきなり後ろの俺を見て頭に?マークを浮かべたサラがさも当然ですよね? 的なノリで聞いて来た事に俺の心ではなく、胃が痛んできた。


「ちょっ……。先に行かないで~」


 何でサラはそんなにドンドン進めるの~。


 追いついた。


 と思い前を見ると俺を殺そうとした人とシルエットが一緒の人物がこっちを見ていた。


「こんな朝早くにお散歩かしら?」


 距離は二百メートルぐらいは離れてるが大きな声でこっちに話しかけて来た。


 彼女は顔をスカーフで隠しボロボロのマントをしていて一目見て分かるような恰好をしていなかったが声を確認して彼女と分かった。


「あなたこそ散歩ですか?」


 サラが彼女に言葉をかける。中々カッコイイ。


 地面は歩き固められた土。


 周辺は物置のようなモノがいくつか点在する程度だ。


 何を仕掛けてくる?


「あ~~私がそこの男の子を殺そうとしたからってピリピリしないでよ。アレは仕事だったんだ。すまないとも思ってるわ」


 ん?謝って来た?


 俺は寛大な男だから今なら許しますよ?


「嘘ですね。よくもそこまで嘘を並べられるモノです」

「ハッハッハッハ!!バレちゃったか~!!」


 ウソかよ!!


 サラには嘘を見抜く目があるから嘘は通じない。


「金になりそうだったら男は生かそうと思ってたんだよ?」

「嘘ですね」


 だと思った。


「正直に話してくれたら分け前を上げるし困った事があったら手を貸すよ?」

「嘘です」


 でしょうね。


「何だよ~少しは信じなよ~。人の話は信じるモノだよ?」

「本心で話していれば信用はしなくとも耳は貸したでしょうね」


 サラは戦闘態勢に入っていた。


 俺も杖を構える。


「ハァ~~。…………つまらん」


 彼女は大きく息を吐いた後、ドスの利いた声でポツリと呟いて殺気を全開で俺たちに向けてきた。


「あんたも気が付いていると思うけど、敵は私一人じゃないから」


 彼女は指を鳴らす。


 そしたら物置の裏からゾロゾロと人が出て来た。


 隠れてたのね。


「とりあえず魔法使いが四人、戦士が四人、剣士が四人の十二人と私が君と戦うから」


 ……逃げよう。


 一目散に逃げよう!!


「サラ。逃げない?」

「え?なぜですか?」


 アレ? 俺、今の質問はまともな部類だと思うんだけどサラはまた頭に?マークが浮かんでる。


「イヤイヤ!!人数多いし強そうだよ?」


 敵さんは魔法使いは後衛


 剣士は中衛


 戦士が前衛


 の陣らしい。


 剣士が中衛なのが謎だと思うが、こっちの剣士は平気で斬撃を飛ばしてくるからね。


「……う~ん?」


 サラが困ってる顔をしている。


 この顔は知っている。


 今思ってることを俺に言ったら俺が傷つく場合が多い。


「えっと。殺しちゃダメだよ?」

「あ、大丈夫だと思います」


 おぉ。頼もしい!!


「お喋りは終わったかい?」


 待っててくれたのか。いきなり襲い掛かるのだと思ってた。


「一つあなたに忠告します!」


 サラは指輪型の魔法武器から腰まである杖を装備し直した。


「何だい?」


彼女はスカーフとマントを脱ぎ、サラの答えを待った。


「まだ、引く事を許します」


 しばしの沈黙の後。


「フザケンナ!!やれ、お前ら!!」

「「「「オォーーーー」」」」


 戦いの火ぶたが今、切られた。



――――――――――――



「ガクさん終わりましたよ?どうです?誰も殺してないですよ!!」


 褒めて褒めて~と俺に抱き着いてきたサラを完全にシカトして今起こった戦闘の一部始終を目の前で見て思った感想なのだが。


「ス、スゲー……」


 すまんがこれが限界だ。


「化け物が!!」


 おう。この人まだ意識あんのかよ。


 俺だったら死んでるような傷だけど大丈夫なの?


「あなた方をギルド会館に連行します」

「素直に言う事を聞くと思ってんのかよ」


 彼女の傷は致命傷は避けてるとはいえ、普通に喋るだけでも激痛だろうに……。


「あなたの意志は関係ありません」

「ハッハ!……今、私を殺した方がいいぜ?」

「なぜです?」

「私は上の命令を聞いただけだが私の失敗は上に伝わって私は処分されるだろう。その時、お前らの情報も上に行く。そしたら終わりだ」


 壊れた笑みを浮かべる彼女の言葉は確かな重みがあった。


「本当のようですね」

「あぁ。組織はお前らを追うだろうさ。だから今のうちに殺しておいた方がいいぜ?」

「……」


 サラは俺の顔を見た。俺が決めて良いって事だろう。


 サラの綺麗な目をマスクの隙間から見えた気がした。


 俺は無言のまま首を横に振った。


「なぁ!……なんで殺さない!!殺せ!!」


 彼女の目が俺を取らえ睨んでいる。


 横たわる彼女を見て思った事は薄っすらとした恐怖だ。


 サラが負けていれば俺たちの立場は逆転し、俺が地面に伏している事だろう。


 だから怖かった。


 これが負けた先にある未来なのだと知った。


 俺が彼女を殺さないのはただの俺の我儘なんだ。


 それを多分、彼女は理解できないだろう。


 俺が彼女たちの直ぐ殺すと言う考えが分からないと同じように俺の殺さないと言う考えが分からないのだと思った。


 俺は彼女にかける言葉が見つからない。


 ただ、無言のままにその場を離れた。


「待て!!私の質問に答えろ!!」


 立ち去る俺に何度も同じとを言う彼女はサラに魔法で眠らされた。


「答えなくてよかったのですか?」

「……答えが見つからなかったんだ。俺は彼女にかけようと思った言葉が小さ過ぎて……言葉に出来なかった」


 俺はサラに背中を向けてながら話していた。


 少し上を見上げて顔に降り注ぐ太陽の光が少しウザく、直ぐに下を向いた。


「そう……ですか」


 座っていろいろと考えていたが、しばらくして騒音を聞いて警備の人がすっ飛んで来てサラがいろいろと話していた。


 ギルドの職員の人も呼んだのか、戦闘で気絶した十三人を運んだ。


 俺はこの世界に来て、いろいろと考える事が多くなった。


 答えのない問題を何個も解いてるような気分だ。


 だから何だと言う話なんだが、俺はこの世界に来てよかったと思う。


 俺が日本で死んでそれで終わりより、こっちの世界でもう一度やり直せてよかった。


 この、グチャグチャでこんがらがった問題を生きながら解いていくのが俺の人生なのだと思う。


 多分、解けない事の方が多そうだけど考えよう。死ぬまで思考は止めるなと言われてるしな。


「ガクさん。帰りましょう」

「うん」


 俺は立ち上がり、サラの正面に立つ。


「ガクさん?」


 俺は無言のままサラを抱きしめた。


「ガガ、ガガガ、ガ、ガクさん!?」


 ただ一言。


「無事でよかった」


 付け加えて。


「助けてくれてありがとう」


 サラは静かだ。


「サラ?」


 サラの顔を見たら湯でタコのように真っ赤になってアワアワしていた。


 俺は大笑いしてしまい、サラに少し怒られてしまった。

 

戦闘シーンは次話で!!

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