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ナイフ

 押忍!男の中の漢。名を学。三十六歳。サラの様子を見て、余裕って重要なんだな〜と思いました。


 馬車を使って修理工場に向かい中。


 手綱は安定のサラ。すまない気持ちで荷台でスマホをイジってます。

 あ、コレは【掲示板アプリ】をやってるだけね? 遊んでないよ?


「サラ、荷物を出す時はどうするの?」

「どうするとは?」

「えっと。俺のスマホを使って木材を出しても大丈夫なのかな~って思ったんだ」


 このスマホはなるべく人には見せてはいけない物だしね。


「それは大丈夫です」

「そうなの?」

「はい。荷物を出す時は人払いをして頂きます」

「なるほど!」


 よし。


 これで憂いはない。


「こんにちは~~」

「おう!!依頼か?」

「そうです。木材を持って来ました」


 親方が出迎えてくれた。


「そうか?……どこだ?」

「魔道具で持って来ました」

「魔道具!?そりゃ~大変だ。人払いするか?」

「お願いします」

「あいよ!!隣の倉庫に行くか」


 おぉ!!

 流石はサラだ。スムーズに人がいない場所をお願いできた。


 親方の後追って向かったのは隣にある修理場よりも一回り大きな倉庫だ。


「ここには人は入らねから安心していい」

「ありがとうございます」

「えっと。どこに出せばいいですか?」


 俺が久しぶりに口を開く。


「ん~どのくらいだ?」

「この木材が……三百本です」


 俺は木材を一本だけ出して分かりやすいようにしてみた。


「そんなに持って来たのか!!」

「すべて買い取れますか?」

「あ、あぁ。それは問題ねーがよくもそんなに持って来たもんだ」

「では、こちらにお名前を」

「あいよ~」


 サラと親方で話が付いたようだ。

 俺は後ろで大人しくしてる。


「兄ちゃん。こっちに全部出してくれ」

「分かりました」


 一角に木材が横に置ける場所があった。入れられて五十本ぐらいしか入んないな。


 あ、近くに同じような入れ物が後、八台ぐらいあった。


「ちゃんと三百本だな。余分な木材は買取になるから、報酬と一緒に受け取ってくれ」

「分かりました」

「木があれば船は直せるからな。明日にでもまた来てくれ。その時に詳しい日時が出せると思う」

「はい」

「ありがとな」

「いえいえ。それでは」


 サラは親方からサインをもらった紙をしまってそそくさと帰る。置いて行かないで!!


「それではギルド会館に向かいますね!!」

「そうだね。行こうか」

「わーい!!」


 サラが可愛い。鼻血出そう。


「サラ、馬車のスピード出過ぎ!!」

「早く行きましょう」

「怖い、怖い、怖い、怖い、怖い!!」


 馬車のタイヤの部分が軋んでる!!


 馬がかなり本気で走ってるし、道幅が狭いからかなり怖い!!


「付きました!!」

「コラ!!」

「アイタ!!」


 俺はサラを軽くげんこつした。


「サラ。危険な事はしては行けません!」

「……はい。ごめんなさい」

「うん。反省してるなら大丈夫だと思うけど、気を付けないと駄目だよ?」

「……はい」


 ヤバイ。抱きしめたい。


 我慢だ!!


「じゃ~行こうか」

「はい!!」


 ハハハ。サラの笑顔には勝てそうにないな。


「こんにちはニャ~」

「こんにちは。依頼完了の報告です」

「了解ニャ~。依頼書を提出してニャ~」

「これです」

「確認するニャ~。ちょっと待ってくださいニャ~」


 前回と同じ猫耳の受付嬢がいた。今日も暇そうだな。


 周りを見渡してもギルドにいるのは俺とサラのみ。


 平和なのだろう。良い事だよ。うん。


「お待たせニャ~」


 書類をいくつか持って来た。


「え~っと。木材の調達も依頼の完了をギルドの名の下に正式に告げるニャ~」

「ありがとうございます」


 なんか偉い感じで言われたな。

 こんな感じなのか。思ってたよりしっかりしていて少し感動してしまった。


「これが報酬ニャ~。確認をしっかりするニャ~」


 依頼達成の報酬は銀貨で百枚あった。

 高いように思うけど、普通の木材一本が五~八銀するとして船用の木材は十銀程度。その木材が依頼で七十五本が必要って事になったらしい。

 締めて七百五十銀の木材を運んだのだ。


 ギルドを通すと手数料を取られるが今回の依頼で親方は金貨一枚以下の出費。日本円だと十万以下だと考えると妥当だと思う。


「確かにありますね」

「では、こちらが買い取り用のお金になるニャ~」


 買取になる木材は依頼分の七十五本を抜いた二百二十五本分。


 今回の場合は買取と言っても木の値段ではなく、ここまで運んだ手間賃の事になる。


 木を俺たちが買い取って無く、ギルドを仲介として挟んだ形になっているのでこればかりは仕方ないね。


「全部で三百五十銀ニャ~」

「ありがとうございます」


 おぉ!!親方も少し多めに渡してくれたみたいだね。さすが親方!!


「これで依頼の手続きは終了ニャ~。ギルドカードを提出して欲しいニャ~」

「はい」

「これですね」


 俺とサラは言われた通りにギルドカードを出した。


「ランクアップしたニャ~。おめでとうニャ~!!」

「え!?」


 もう、ランクアップ? 早くない?


「早くないですか?」

「早めだと思うけど、一定の金額を出したので問題ないニャ~」

「問題ないんですか……」


 ギルドのランクアップの仕様は依頼でどの程度の報酬を受け取ったか、らしい。


 俺達みたいに一回の報酬で大金をもらうとランクアップするのが早いらしい。


 これでランクは九ランカーだね。


 グレードがS~Dの五段階あり、ランクが一~十の十段階ある、最初はDグレード十ランクからスタートして、ドンドンランクを上げて一にしてDの試験を受ける。


 その試験を合格するとCグレードとなり、ランクまた十からスタート。


 名乗る場合はCグレード十ランク。と言うらしい。


 俺たちはDグレードランク九。Cグレードが付くと一人前のレッテルが張られる。


 カッコいい!!


「今、受けられる依頼はありますか?」

「今はないニャ~」

「そうですか」


 やっぱり平和なんだね~。


「サラ、見に行こうか」

「はい!!」


 さっきからソワソワしてたもんね。


「最近、新しいのが入荷しニャ~。私も行くニャ~」


 いいのか?


 また怒られるぞ?


 三人で二階に上がる。


 サラは一瞬でメイド服の場所に行く。見えなかった。恐るべし、洋服パワー。


「イヤ~~。元気な子だニャ~」

「昨日から行きたいって言ってましたから、仕方ないですよ」


 おぉ!!

 サラの目がキラキラしてる。


 最近、ストレスが溜まってる感じがしたからこれで少しは解消できたらいいけど。


「ガクさんはこの世界とは違う方ですニャ~?」

「!?」


 後ろにいた猫耳の受付女性が意外な事を言った。


 俺は不意を突かれての質問に戸惑うことしか出来なかった。その戸惑いが肯定を意味していたとしても。


「おっと。前を向いててニャ~。これから話す事は他言無用でお願いしますニャ~」

「……」


 動揺を隠せない俺に受付の猫耳が質問してきた。


「このフロアーにあった手紙の内容は読めたかニャ~?」

「何のことだ」


 知らないことにしてみた。

 多分、読めてると思ってるんだろうけど。


「その内容はお金になりそうかニャ~?」

「知らない」


 なんなんだ?


 前回の人とまるで別人みたいだ。


「ん~素直に話して欲しいニャ~。出ないと……」

「!!」


 冷汗が俺の背を伝う。


 今、俺の背後で武器を構える人物がいるのが分かる。


「お前は誰だ」

「……受付のお姉さんニャ~」


 違う。


 何かが違う。


「お前は前回会った人じゃない」

「なんでそう思うニャ~?」


 なんで?


 そんなの……。


「カンだ」

「ふざけてるのかのかニャ~?」


 殺気が背後から伝わる。怖い。


 膝が笑ってる。


 ヤバイな。この人に勝てる気がしない。


「言わないのかニャ~」

「読めないモノを伝える事は……出来ない!!」


 瞬間、俺は受けの人の方を向いて、【アイテム収納アプリ】から杖を取り出して、相手に向けた。


「遅いニャ~。死ぬニャ~」

「ヤバ……」


 受付の猫耳女性の持っていたナイフが俺のお腹に吸い込まれるように刺さろうとしていた。


 俺はグッと目をつむってしまった。


 痛いだろうな~。と思っていたけど、その痛みは襲ってこない。


 片目を開けると……


「サラ!!」


 サラが受付の猫耳女性の手を止めていた。


「ガクさんは私が守ります」

「クソ。お前は向こうに気が散ってると思ってたんだがね」


 猫耳が消えて、姿が変わる。


「あなたは誰ですか?」

「……フフフ。知らなくてもいいでしょう?」


 俺は膝から崩れ落ちた。


「ガクさん大丈夫ですか?」

「大丈夫。殺気に身体が少し強張っただけだから」


 何、この状況。

 誰か説明して欲しい。


「頼りない男だね。そんな男の何がいいのやら」


 ブチ!!


 ん?

 今、何かが切れる音がしたけど気のせいかな?


「フフフ。フフ、ハハハ。アッハッハッハッハ」


 サラが怖い!!


「あなたが誰で何故ガクさんを狙ったのかはこの際、不問にしましょう」


 アレ?サラを中心に風が吹いてない?


「ふん。元々喋らねーよ」


 あ、この人気が付いてない。


「おい!!お前、サラに謝れ!!」


 俺は敵に向かって声をかける。どうか間に合え!!


「バカかお前、なんで私が謝るんだよ。死ねキモ男」


 ドン!!


 お腹に響く音が鳴った。


「死にますか?あなた」


 サラの手には轟轟しい火の塊が存在していた。


「魔法使いか……」


 敵の女性は魔法を見ると懐から何かを取り出して下に投げつけた。


「煙幕か!!」


 凄い濃度の煙がフロアーを覆いつくす。


「男は消す」


 やばい!!

 この煙じゃ何も見えない。


「……この程度の事で」


 風が吹いたと思ったらサラを中心に煙が吹き飛ばされてる。マジかよ。


「ガクさんは殺させません」


 敵の女が距離を置いた。


「魔法の同時使用は不可能なんじゃないの?」

「愛は不可能を可能にするんです」


 なんだろう。

 この嬉し恥ずかしい感じ、ここに居づらい。


「お前がいたらそいつを殺せないか……。今日はここまでか、またな」

「逃がしませんよ?」


 サラの手には火の玉がある。


「さらば!!」

「チッ!!」

「ギャ~~!!」


 俺に向けてたくさんのナイフが飛んできた。


「ガクさん!!」


 サラの魔法ですべてが叩き落とされた。


 マジで何だったんだよ。


「大丈夫ですか?」

「大丈夫、だけど。少し休みたい」

「そうですね」


 俺は俺にまっすぐ殺気を向けられた事が無かった。


 今日、この時まで俺は自分がここまで甘い人物なのかを思い知った。


 そして、サラがカッコいいのを再確認した。 

サラ、カッケー!!

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