ギルド会館
押忍!!男の中の漢。名を学。三十六歳。俺とサラは好き同士。って事は付き合ってるのか? ……付き合うって何? 今度、サラに聞いてみよう。
おはよう!!
良い朝だね~。
フローは港が近いって事もあって中々朝日がキレイだ。
昨日は夜に街に着いたから分からなかったけど、海がキレイだ。
サラに海に入る? って聞いたら食べれますよ? って言われた。……青い海が真っ赤に染まる。俺の顔は真っ青になる。
何でも海は魔物のオンパレードらしい。
海に入るとか死にたがりな人でもやらないとか。
何だよそれ!! 水着のサラ見れないじゃん!!
落ち込んでる俺を慰めるサラ。
プール的な物はあるらしい。……希望はあるね。
まぁ、なかったら作ればいいだけの事だ。
そして今、港にいます。
「すいません。船が出るのはいつぐらいですか?」
「あ~~~。すまんな。いつになるかまだ分からんな~」
「何故ですか?」
「木材が足りねーんだわ」
現在、港にある船の修理工場の中。
大きな船から小さな船までたくさんあって、大きな船が工場の中心で修理中らしい。
さっきの話で分かるように、海は危険な魔物が多い。
なので船は魔物の攻撃にさらされる事になり、傷や穴などが多くなる。
サラの話に船の状況次第だと言っていた意味がそこにある。天候などの状況ではなく、船の状況。
つまり、船の修理の状況で次の出港の時間が決まる。
らしい。
「ギルドに頼もうと思ってるんだが、量が量だけに迷っててな~」
「どういう事ですか?」
「船に使う木材はそこらの木材よりも丈夫でしなやかじゃいけないんだ。しかも、大きさもかなりのモノ。馬車もそれなりの大きさになる」
「なるほど」
「商会会館はここにはないからギルド会館になっちまうが仕方ないか」
「では、木材次第で出港日が変わると」
「そう言うこったな」
「ギルドにはいつ頃依頼を出しますか?」
「今から行くぞ?」
「分かりました。ありがとうございます」
相変わらず俺が空気なのは気にしないでくれ。……これでも俺って必要なのかって考えてんだからな?
「ではガクさん。ギルド会館に向かいましょう」
「え?馬車の売り場に向かうはずじゃなかったけ?」
「そうなんですが、船の修理に木材が必要になり、ギルドに依頼が出されます」
「うん。それが?」
「でしたらそれを私たちが受け、モークの街に木材を取りに行けばかなりの日にちを短縮できます」
「おぉ。なるほど!!……モークに戻るのがこんなに早いとは……」
「……仕方ありませんね」
俺とサラは馬車でギルドに向かう。
朝の市場もあったけど今回は寄らなかった。
「う~ん。やっぱり世界観をぶち壊してるな~」
「……慣れませんね」
ギルド会館前。
相変わらずの鉄筋コンクリートの建物の五階建てビル。……本当に誰が作ったんだよ。
「行きましょうか」
「だね」
意を決しビルに入る。
「お帰りなさいませニャー。ご主人様!お嬢様!」
「「……」」
俺とサラは無言で建物から出た。
……メイド喫茶じゃねーか!!
何だよ!! 何なんだよ!!
猫耳で可愛い衣装を着てお帰りを言われたのは嬉しいけど、かなりのインパクトが何個もあり過ぎて消化不良を起こしてリバースしそうなのを堪えた感じがする。
心の叫びを言うと、本当に誰が作ったんだよーー!!
「……サラ?」
さっきから大人しいサラを見ると、何だか嬉しそうだった。
「あ、ガクさん。あの服装可愛くありませんでしたか?!」
「可愛かったね……」
「私、あのような服装に憧れがあってたんです!!……一度は来てみたいです~」
そうか。サラはギルドに猫耳メイドがいても違和感ないのか……。
落ち着いたとこでもう一度入る。
「お帰りなさいませニャー。ご主人様!お嬢様!」
うん。一回見たから何とか耐えられる。
俺とサラは受付に行く。
「お帰りなさいませニャー。今日はどのようなご用件かニャー?」
「あ、あの。その服はどこで売ってる物何ですか?」
「この服はどこにも売ってないニャー。貸出もしてないニャー。」
「そ、そうなのですか。……残念です」
サラさんや。用件が間違ってないかな?
「でも、二階の試着室でこの服を着る事は出来るニャー」
「ほ、本当ですか!!」
「本当ニャー。試着室はギルドランク外だから誰でも行けるニャー。種類もたくさんあるから楽しいニャー」
「使わせてもらってもよろしいですか?」
「良いですニャー」
「ありがとうございます!!」
「……サラ。『ありがとうございます!!』とか言って二階に行こうとしない。ここに来た本当の理由を思い出して」
俺は二階行こうとするサラの手を握り、言葉をかける。……サラの手は柔らかいな~。
「……忘れてました。すいません」
「良かった。思い出してくれて」
「どうかしたのかニャー?」
「すいません。俺たちはギルドの登録に来たんですよ」
「そうだっだのかニャー。じゃ~こっちの紙に必要事項を書いて提出して下さいニャー」
「……あの。一つ良いですか?」
「何かニャー?」
「なにぬねのって言ってもらっても良いですか?」
「ニャー?なにぬねのニャー。これがどうかしたかニャー?」
「あ、いえ。すいません。ありがとうございます」
「あ~もしかし、私たちの語尾のニャーを言わそうとしてるニャー?」
「あ~バレました?」
「ふっふっふ。これでも仕事をしてる身ニャー。語尾以外にニャーが付かないように訓練したニャー!」
何と言うプロ意識の高さか!!
「では、書けたらまた来てニャー」
「はい」
俺はサラに書いてもらった。俺はこの世界の文字は読めないし書けないからね。
書く欄には名前と生まれた町とか必要事項だった。必ず書くのは名前だけらしい。
「書けました」
「確認するニャー」
受付の猫耳メイドさんがどっか行った。
「ガクさん。二階に行きましょう?ね?ね?」
「モックに行って帰って来てからなら時間もあるし大丈夫かな?」
「ガ~~ン……」
口でガ~~ンって言うほどショックか。……俺がサラの水着姿が見れないって分かった時はこんな感じだったのだろうか。
少しかわいそうだな。
「やっぱり、依頼を受けたら少しだけ行こう。俺も見てみたし」
「ガクさん!!」
咲いた花のように明るくなるサラの顔。……面白いな。
やっぱり止めたって言ったらどんな顔をするかな?……しないよ? 嘘だって分かるしこんなに嬉しそうなサラにそんな事は言えない。
「お待たせしたニャー。これが二人のカードニャー」
「どうも。……サラ?……後で俺から渡します」
「分かったニャー」
「これで依頼を受けれるんですか?」
「そうニャー」
「じゃ~木材を運ぶ依頼ってないですか?」
「え~っとニャー。ちょっと待っててニャー」
「はい」
サラはさっきから二階の階段を見てそわそわしている。そこまで行きたいのか。……気持ちが分かるから強く注意もできないな。
「あったニャー」
「俺でも依頼を受けれますか?」
「あ、説明をしてなかったニャー」
「説明?」
「そうニャー。ゴホン。ギルドに登録すると様々な恩恵がございます。その中には宿泊施設の割引や街や国、関所などの料金の無料化などがございます」
「……」
「もちろん、恩恵だけではなく登録者にも負担はございます。依頼の仲介料や魔物、モンスターの素材アイテムの売却の際の手数料。高ランクの方には招集もございます」
「……」
「ですが高ランクになればこれ以上の恩恵を受けられますが現段階では省略します。次にギルドランクですが、一番下がDグレードで上がSグレードとなっています」
「……」
「注意事項の説明に入ります。ギルド会員同士の争いに会館は介入しません。そして会員は非会員に対し一方的な暴行などをした場合、牢屋行きになります。会員証を紛失した場合、料金とペナルティー五が課されます。ペナルティーが十になると会員証がはく奪され一からの登録となります」
「……」
「以上が説明となります。分からない事がございましたその都度お聞き下さいニャー」
声が変わった。
さっきまでスラスラと喋っていた時は声が低くなって秘書的な感じで淡々と話していたけど最後だけおちゃらけた感じになった。……ファンタジー。
「それで君たちが依頼を受けられるかニャンだけど……んん。なんだけどニャー」
言い直した。……たまに出るんだな。
「ランクが足りないんですか?」
「違うニャー。受けるランクはそれほど高くないニャー。君達でも受けられるニャー」
「なら何で?」
「依頼は運搬系に入るニャー。しかも量がかなりの量になるニャー」
「それは問題ありません」
スマホの【アイテム収納アプリ】に入れれば問題ない。あれはチートだからな。
「う~ん。それじゃ依頼者と会ってから出発した方が良いニャー」
「分かりました。ありがとうございます」
「それじゃここにサインを。これ以上長く話すと彼女が怖いから早く二階に行くニャー」
「そうですね」
サラがだんだん怖い目でこっちを見てるのは気づいていたがスルーしていた。……かわいいけどね?
「これで大丈夫ですか?」
「……大丈夫ニャー。これが依頼を受けた証ニャー。ここに行けば依頼主に会えるニャー」
「分かりました」
話し終わった瞬間にサラに手を引かれ二階に引きずられた。
腕が外れそうになった。……サラのステータスはぶっちゃけ俺より上なので俺を片手で引きずる事も容易である。
でも、あそこまで一方的に引きずられると男の子としてのプライドやら尊厳やら自尊心やら意志とか決意とか何から何まで粉々になりそうだったよ。……羞恥心はないよ?
二階に到着したサラは試着していた。
俺?……ダメージが入ってたから休んでたよ。
「これも可愛い!!……こっちも来てみたいです~~!!あぁ。夢のようです~~!!」
サラがフィーバーしていた。
「元気だニャー彼女」
「あ、さっきの受付の……」
「ちょっと心配で見に来たニャー。と言いつつ暇だから来たニャー」
「暇つぶしですか……」
仕事しろよメイド。
「内緒ニャー」
クソッ!!
座ってる俺に向けてウィンクをして人差し指を口に当てて少しだけ下を出す仕草……可愛い。
あ、思い出した。あの事も聞こうと思ってたんだ。
「あの、財ってここで見てもらえるんですよね?」
「むむ?財かニャー?」
「はい」
「あれは基本予約制ニャー」
「そうなんですか。今から予約できますか?」
「う~ん。ここで予約するより大きな街に行ってやる方が早いニャー」
「そうなんでか?」
「そうニャー」
「分かりました」
「それにしても彼女すごくこの服を気に入ってるニャー」
「そうですね~」
「この服を考えた人が見たら喜びそうニャー」
「この服を考えた人ってどんな人なんですか?」
「う~んと。このギルド会館の設計図を書いて、私たちをギルドの受付に決めて、この服を作り、受付のマニュアルを作り、ギルドをこの港に作った人ニャー」
「……名前って分かりますか?」
「確か『工藤 燐火』って人ニャー」
……何やってんだあの人は!!




