到着
押忍!!男の中の漢。名を学。歳は三十六歳。サラとの旅は精神が鍛えられます!!
時間にして六時。太陽が沈み辺りは真っ暗になったが道の先に明るい街を視界に捉えている。まぁ、日本じゃないからそこまで輝いた街並みは分からないが、あそこに街があるのは分かる程度の光源はあるな。
「そろそろ街ですね。……ガクさんこれを身に着けてください」
「何これ?」
「証ですね」
「おぉ!これが証か!!……名前しか書いてないね」
「それで十分なんですよ」
「そうなんだ……」
「門番の人に身分証はあるかと問われるのでそれを見せれば通してくれます」
「なるほど~」
ブレスレットのような大きさで縦一センチ、横が五センチぐらいの横長の鉄のプレートに名前が掘ってある。
……こんな簡単な作りで大丈夫なのだろうか。
しばらく馬車に揺られる事、三十分程度。街の入り口に到着。
出入口は広く、入りで馬車二台分、出でも馬車二台が同時に出入り出来る程の大きさだ。
今は出入りは一か所になっている。
「こんな夜に馬車が来るとはな」
「夜遅くにすいません」
「イヤ、かまわない。身分証はあるか?」
「こちらですね」
俺も無言だが証を付けた手を見せる。……見えるのか?
「確認した。では一度、馬車を降りてて魔具に触れてくれ」
「分かりました。ガクさんも一緒にお願いします」
「わ、分かった」
サラさんやこうなる事は事前に言って下さい!! 何かやっちゃったのかドキドキしちゃったじゃないですか!!
馬車を降りて近くの建物に入る。多分、門番の人の休憩スペースだと思うけど。
門番の人は近くにあった水晶を指さした。
「あれに触れてくれ、まぁ大丈夫だと思うが規則なんでね」
「はい」
サラは水晶になんの躊躇も無く触れた。
「はい。次~」
俺の番か。……触れる時間短くね?
水晶に触れた。
「お疲れさまでした。入場を許可します。ここはギルド会館があるのでギルドの方は入場が無料ですが、それ以外の方は一律の一五〇Gをお支払い下さい」
未だに水晶に触れてる俺を他所にサラはお金を払い俺に「行きましょうか?」的な目で俺を見た。
門番の人も「お前いつまで触ってんだよ」的な目で見てる。……すいません。
「……嬢ちゃんの方は確か、かなり前にここを通ったな。大きくなったもんだ」
何だ? この門番、サラのファンか何かか?
「えっと。どこかでお会いになりましたか?」
知らないのかよ!!
「十年ぐらい前にもここで門番をしていたんだがな~。あの時は嬢ちゃんも子供だったし。分からんか」
何年門番してんだよ。この人。
それにしても十年前に通った人の顔を覚えてるもんだろうか?
「すいません。覚えていません」
「ハッハッハ。だろうな。すまない。……通っていいぞ」
「ありがとうございます」
馬車を動かし街に入る。
到着!! フローに到着しました~~!!
「それにしても何で門番の人はサラの顔を覚えてたんだろう?」
「多分ですが、あの人の財だと思いますよ?」
「……ザイ?」
「はい。財産の財です。その人の財産と言う意味ですね」
「その財って何?」
「えっと。ギルドに行くと分かるのでその時で良いと思っていたのですが、財はその人が持っている才能だと言われています」
「才能か……」
「はい。ギルドでおおよその財を知ることが出来ます。門番の人の財は人の顔を忘れないと言った物なのだと思います」
「スゴイな財!!」
「そうですね。まさか一度見た人の顔を覚えてるとは」
「俺はサラのファンなのかと思ったよ」
「ファンとは何ですか?」
「……ん~~。好きな人って事かな?」
「ではガクさんは私のファンですか?」
「そうとも言えるいえるけど俺の場合はサラも俺の事好きだから両想いかな?」
言ってて恥ずいけど、頑張った。
「……両想い。フフフ」
「サラ?」
「楽しいですね。ガクさん」
「ん?そうだね」
どうしたんだろう? サラが上機嫌だ。
財。初めて知ったな。
ん?どっかで見たような気がする。……まぁ良いか。
才能みたいなものか。スゴイな。
ギルドに行きたくなってきた。
「では、宿屋に行きますか」
「そうだね……」
夜だしな。ギルドに行くより泊まる場所を探さないとな。
サラは子供の頃に来た記憶を頼りに宿を探しているようだ。
「ここの辺りのはずなのですが……」
「誰かに聞いてみようか」
「そうですね」
近くに歩いている人を探す。……暗いから分かりづらいな。
「すいませ~ん」
「はい?」
おばさんが居たので話かけてみた。
「この辺りに宿屋はありますか?」
「そうね~。この辺りに宿屋は無いわよ?」
「どの辺にありますか?」
「そうね~。一旦門の場所まで戻って壁沿いに右に行けばあるわよ?もし分からないようなら門番に聞くといいわ」
「ありがとうございます」」
「いえいえ」
親切だな。
良かった。最近、優しそうな感じのおばさんを見るとスミスさんがチラリと顔を出して来て大変なんだよな~。
結局、あの人の違和感に慣れたけど、慣れたら慣れたで普通のおばさんに違和感を感じるのはスミスさんに慣れてしまった障害なのだろうな。
一旦道を引き返し、宿を探す。
その後、数人の人に話をかけ、宿屋に到着。
安くて、馬車も置ける宿屋は少なく、少し街を散策してしまった。
「宿屋の名前は緑の緑龍ですね。良い名前です」
「そうだね」
……そうか?
「あぁ!!ガクさん。嘘を付きましたね!!」
「しまった!!」
「もう知りません!!」
プンスカ、プンスカ怒ってるサラも可愛い。
頬を膨らますサラは可愛いな~。
ツンツンしたい衝動に駆られるぜ!!
「ちょ!ガクさん!……頬をツンツンしないで下さい!!」
「あ!!ゴメン。あまりにサラの怒った顔が可愛くてつい」
「ついじゃありません!!全く、私は怒ってるんですよ!」
「ごめん」
ちょっと調子に乗り過ぎたな~。嫌われたかな?
「あ、えっと。すいません……そこまで落ち込むとは思いませんでした」
「ん?」
「冗談のつもりだったのですが……」
「ハ~~~。良かった。サラに嫌われたのかと思った」
「フフフ。私がガクさんを嫌う事などありません」
「サラ」
「……ガクさん」
「人前の宿屋でいつまでイチャついてんだ!!さっさと入るなり退くなりしな!!邪魔だよ!!」
「「すいません!!」」
ビックリした!!
「で?どっちなんだい?泊まるのかい?」
「はい。そうです!!」
ちっこいおばさんだな。
「だったら入りな。来な」
「はい」
俺とサラは馬車を降りて宿屋に入る。
「で?何泊するんだい?」
「えっと。船の出る日までなのですが……」
「あ~船か。だったら明日にでも港に行きな。最新の情報があるだろう。」
「分かりました」
「とりあえず一泊で部屋は一つベットはいくついる?ん?」
「……二つでお願いします」
サラの顔が真っ赤だ。
俺も真っ赤だがな!!
「ここはギルドと連携しててね。ギルドの会員なら安くなるよ?」
「今日か明日にでも登録しに行こうと思ってるんですけど……」
「後からの割引はしてないよ。今日の分は通常料金だ」
「分かりました」
「一部屋でベットが二つ。馬車は一日だけかい?」
「そのつもりでいます」
「なら銀貨十二枚になるよ」
「分かりました」
宿屋をゲット。
部屋の鍵をもらった。
そのまま部屋に行っても良かったけど馬車の荷物を俺のスマホに入れてもう一度馬車で街を徘徊。
「時間も時間ですが一度、ギルド会館に行きましょう」
「おぉ!!ギルドか~」
テンプレはあるのかな?
ギルドの場所は宿屋のちっこいおばさんに聞いた。
「ここがギルド会館?」
「……そのはずですが」
街の景観ぶち壊しの建物。
ファンタジーの世界に佇む現代日本にあるであろう建物がそこにあった。
何で鉄筋コンクリートを使っている建物があるんだよ!!
「ビルだな。小さいけど5階はあるかもな」
「ビルですか。……この建物は私がこの町に来た際には無かったはずですが……」
……閉まっていた。
時間は朝、七時から夜十九時と書いてあった。
この世界には時間の読み方は存在しない。
朝、昼、夜は太陽などを見ておおよそで時間を把握しているので何時などは無い。
つまり、この建物を作った人は異世界人だ。
……やり過ぎだと思うがな。
「宿に戻って明日の朝、もう一度来ようか」
「そうですね」
一体誰がこんな建物を作ったのだろうか。
立派に出来ているけど、ファンタジー感が全くない建物は入り辛いと思うが。
「明日は港、馬車の売り場、ギルドの順に回りましょう」
「分かった。馬車の売り場は何で?」
「馬車を返す為です。船には乗せられませんから」
「あ、だから馬車を買うんじゃなくて借りたのか」
「そうです。船に馬を乗せる事は出来ますが高いので向こうで新しい馬車を買うのが普通ですね」
「なるほどね~」
そうか。こいつらとはもうお別れなのか。
「船の状況ですが、宿の方によると二週間ぐらいではないかと仰ってました」
「二週間もあればギルドのレベル上げられるかな?」
「フフフ。どうでしょうね?」
よっしゃ!!
明日も頑張ろう!!
財……才能。個性。




