ダンジョンコア
(11/3)更新しました。
押忍!!男の中の漢。名は学。精神年齢は三十六歳で肉体年齢は十五歳だ。今、全員が武装をしてダンジョンに入りました。
「ここからの案内はお前に任せるぞ」
「分かりました」
スミスさんの言葉で俺が先頭になった。
俺は木の魔物のモックがいた場所に向かった。ダンジョンの入口から時間にして二時間ぐらいの場所だが、辺りの風景は全く変わらないし、まっすぐ向かってるのかも分からないだろうと思う。
その点、俺は「地図スキル」の能力である、自分の歩いた道が感覚的に分かるこの力でモックの場所までまっすぐ向かった。
現状、人数が俺を含めて八人の為、二人だけPTから漏れてしまいマスとマーナはPTに入っていない。
じゃんけんで決めたが、二人はとても残念そうにしていた。
フルPTはしたことが無かったが、これはスゴイな。
全員の能力値が高くなるのは知っていたが、上昇率が物凄い事になっている。
多分、この上昇率はPTに入っている者のスキルの+の値をそれぞれに適応され、その状態で自分のスキルの上昇も入るのだと思う。
他人のスキルが高レベルだとその分の上昇がデカいが、レベルが低いとそこまでの上昇率にはならないのだろうな。今だと俺が低レベルの存在だな。悔しいがな。
PTに入った全員が驚いていた。一番驚いたのは俺だがな。何故かだって?一番弱いのが俺だぜ?その分、上昇率が異常な訳だよ~。HPの数値が一気に四桁も上がったら驚くでしょ?俺は悪くないよ?
このPTは俺が一番弱いからな~。俺が皆によって上がってるけど、どのぐらい強くなってるのかは分からないから実戦で慣らさないといけないな。
そんなこんながあったが、何にもなくモックの場所までついた。
「モック!いるか?」
《おぅ!!ガクさっきぶりだな~》
相変わらずのおっさんみたいな喋り方だな。
俺は皆の方に顔を向けたらマスとマーナ以外が驚いたような顔をしている。どいう事だ?
「ガ、ガクさん。木が喋ってるのは気のせいですか?」
「え?サラにも聞こえるの?」
「お、俺にも分かるぞ」
「え!? スミスさんも?」
全員に聞いたらPTに入ってる人はモックの言葉が分かるらしい。
「PTに入ってる人は俺の久久能智神の能力が適応されてモックの話が分かるのかもしれない。……っと思う」
《なんか大丈夫か? すまんな俺が喋ったばっかりに……》
「イヤ、驚いた俺達が悪い。すまない」
スミスさんがモックに話しかけるが、多分だが話が聞こえないマスとマーナはスミスさんが木に話しかけてるようにしか見えないのだろうな。
実際、俺にはそうしか見えない。ちょっと面白い。
結局、サラとシャスが二人にモックの話を伝えるって事になった。大丈夫か?
《イヤ~まさかガクがこんな早くに仲間を連れて来るとはな~》
「ダンジョンコアが時間が無いって言ってたからなるべく早く来たんだよ。それで、どうしたらダンジョンコアに会えるんだ?」
《……ちょいと待ってな?……グググ》
「ん?」
モックの幹の中心がメキメキ音を立てて穴が空いた。その穴の中には拳ほどの水晶が入っていた。
《その水晶がダンジョンコアに続く道を指し示すぞ》
「……モック。お前身体大丈夫か? ドテッ腹にこんな穴開けて……」
《問題はないぞ? この木が俺の本体って訳じゃないからな~》
「そ、そうですか……」
俺が水晶を取ると、メキメキと音を立てて元に戻った。なんだ、戻るのか。
「キレイに戻ったな」
《まぁな。……それにしてもお仲間も完全武装とはな。必要ないと思うけどな~》
「罠の可能性があるのでな」
《必要ないぞ? このままその水晶の示す方向に行けば簡単に会える》
「信用できないな」
《ならしょうがないな~。……ガク》
「何?」
《ダンジョンコアのとこで待ってるぞ。またな》
「分かった。待っててくれ」
モックの気配が消えた。中枢に行った時と同じ感じだな。中身がないと言うか、意識がない感じだ。
俺は手に持った水晶に鑑定をすることにした。使い方分からんし。
「鑑定」
~鑑定結果~
・名前 ダンジョン核の一部
・説明 ダンジョンコアのさらに中枢の核一部。魔力を流すと共鳴し、本体の場所を指し示す。破壊されると修復ができない。
「ハァーー!?」
なんだこれ!!命の欠片じゃねーか!!こんなもん簡単に渡すのかよ!!
「どうしたガク」
「スミスさん……コレ。ダンジョンコアの命の欠片です。破壊されると修復もできないらしい」
「……これをどう見るか」
「スミスさん?」
「丸々信用するのは無理だが、少なくとも敵意はないと言っているようにも取れる」
「なるほど……」
「これ自体が罠の可能性もあるがな」
怖ーよスミスさん。そこまでいくともはや疑うしかないじゃん。
「どちらにしても行くしかない。警戒は怠らずに行こう」
「「「はい」」」
よし。ダンジョンコアに行こう!!
魔力を流す……?やり方分からん。
「スナーチャさん。これに魔力を流してもらっていいですか?」
「……ハァ~」
「ため息しないで下さいよ!!地味に落ち込みますから!!」
「……貸して」
「はい」
スナーチャさんの手にある水晶は徐々に輝きだした。ある程度光が大きくなると光の線がまっすぐに森を指した。
飛行せ…ゴホンゲフン。口が滑りそうになったがイメージに近いのがあれだな。間違ってもバ○スなって叫ばないようにしないと。ダンジョンが崩壊してしまう。
「……行こう」
「……はい」
まっすぐ森を指してるな。この先は俺も行った事がない。と言うかこの周辺って誰か来た事あるのか?
「スミスさん。質問なんですが、いいですか?」
「なんだ? 俺の好きな酒はバッターニャの酒だぞ」
「バッターニャがどこで何なのか分からないし、今の状況で好きな酒を聞く俺って頭おかしすぎますよね!?」
「冗談だ。で?なんだ」
「このダンジョンってどこまでが人が入った事があるんですか?」
「半径数キロ未満だな」
「……浅くないですか?」
「だろうな。お前はあまり分かっていなかったが、ダンジョンとタワーとでは大きな差がある」
「そういえば皆、深刻な顔してましたね」
パッチちゃんも深刻な顔してたし、当たり前と言うか常識の範疇なんだろうな。
「まず、ダンジョンとタワーの大きな違いは魔物が出るか出ないかがある」
「タワーは出ないんですよね?」
「まず出ないな。後は変遷の内容だな」
「変遷って……時間で中の構造が変わるってやつですか?」
「そうだ。ダンジョンもタワーもあるが内容に違いがある。ダンジョンは人を殺す為に中の道を変えたりボスモンスターの配置を変えるがタワーは資源となる物が元に戻る」
「このダンジョンがタワーと勘違いしてたのは木が元に戻ってたからですか?」
「そうだ。本来ならダンジョンかタワーかは国の鑑定士に依頼するが、ここは田舎だからな。勝手にタワーとされたんだろう。実際にタワーのような環境だったから仕方ないと言ったら仕方ないが」
「でも、これまでタワーと同じだったならこれまでも同じなんじゃないですか?」
「そうかもしれんし、そうじゃないかもしれない。ダンジョンとタワーの違いの最後はその危険性の違いだ」
「危険性?」
「あぁ。何の準備もしてない一般人がタワーに入り一時間散策し無事に戻る可能性はどのくらいか分かるか?」
「え?タワーはモンスターも出ないし危険もないなら……無事に出てくるんじゃないんですか?」
「その通りだ。なら、ダンジョンならどうだ?」
「……ほぼ死にますね」
一般人がモンスターがいるところに行くのは自殺行為だし、中の道のりも違うのだろう。
「この内容がダンジョンとタワーの違いだ」
「……」
うん。皆が深刻な顔をした訳だよな。危険性の違いをスミスさんは俺に伝えたいのだと思う。今の俺が一般人より強いかと言われれば怪しい所だが、俺がダンジョンに入る場合は装備や武器を充実させて回復薬、逃げる為の物も準備してから入る。
そこまで準備してから入るんだ。危険なのはよくわかる。
「ここがタワーと認識されていたから半径一キロ未満で十分だったんだ。これがダンジョンだと分かれば、国から何らかのアクションがあるだろうな」
「具体的には?」
「まず、今までのような産業は不可能だろうな」
「な!!」
このダンジョンが消える可能性よりもこっちの方が深刻じゃないか。このダンジョンがタワーじゃないのは確定してる事だし、国に言えばこの街が……
「決まった訳じゃないがな。……霧が出てきたな。スナーチャ皆がはぐれないように頼む」
「……分かった。<竜巻><風の幕>」
スナーチャさんが魔法を使うと霧が俺たちの周りに弾かれるように吹っ飛んだ。
「スゲ~」
「風の膜で出来た幕ですね。風を使って霧を弾くとは、流石師匠!!」
「……コツが分かればシャスでもできる」
「はい!!」
おぉ。シャス君の食いつきが面白いな。
シャス君が言うには最初の<竜巻>で俺たちの周辺にあった霧を吹き飛ばし、瞬時に<風の幕>で霧が入って来れないように幕をした。らしい。
俺は全く分からないけど使い方、タイミングがとてもスムーズで無駄がなく効率的だそうだ。
霧はとても深く、スナーチャさんの魔法のおかげで前は見えているが、霧の向うは全く見えない。でも暗くはないのは謎だな。
ここまで霧が深いと真っ暗か薄暗くなりそうだがな。
慎重に進む俺たちだが、霧を無事に抜ける事が出来た。
「ここはどこだ?」
「ダンジョンの中とは思えませんね」
「……<光の明かり>」
「むしろ、ダンジョンぽくなったかな?」
霧を抜けたら洞窟の中にいた。薄暗いが、スナーチャさんの魔法のおかげで明るく照らされている。
「道はまっすぐですね」
「そうだな」
俺は後ろがどうなってるのか気になって見たが、真っ白な霧が見えるだけだった。
洞窟に入っただけなのだろうか。
そのまま洞窟を進んだ。道は分かれることなく一本のまま。
進む事二十分ぐらいして洞窟の周りに苔が生えて、少し湿気が出てきた。
「こんな洞窟に苔が生えてるんですね」
「普通は無理だがダンジョンならなんでもありなんだろう?」
「……終わりが近い」
「分かるんですか?」
「……必要な魔力が少なくなってきた」
「なるほど」
「皆、警戒を緩めるなよ」
「「「はい」」」
俺たちは先に進み、明るい出口を確認した。
出口をでた俺たちは幻想的な空間に息を飲んだ。辺り一面が色とりどりの花が生き活きとして、生い茂る木もある。学校のグラウンドがすっぽり入るような空間に俺たちに話しかける者がいた。
《おぅ。無事ついたかガク》
「モック?」
《そうだぞ》
そこには二足歩行の木が話しかけてきた。身長三十センチぐらいだが、顔もある。……中々のおっさん顔だな。
「なんで二足歩行?」
《この方が便利だろう?ついて来い。ダンジョンコアはこっちだ》
俺たちの道案内の為にこの格好なのか?歩く木とか……よく見るとスッゴイ揺れてるが大丈夫だろうか。
《ここだ》
「ここって……祠?」
俺の目の前には小さな祠が一つ。
《その水晶を返してくれるか?》
「……はい」
《うむ。……よっと》
返してもらった水晶を祠の前に置いた。枝って手なんだね。
《客人だぞ》
モックがその言葉をかけると水晶が光った。俺は水晶をガン見してたから「目が~~~!!」って叫んだけど、皆は大丈夫だったようだ。
目が回復して見た先には祠の前に座る一人の若い男性。和服で髪の色は白。長さが地面に付いている。肌はとても白く、一瞬女性に見間違えるほどだった。顔は整ってはいるが目は少し虚ろになっている。
「ようこそ、お客人」
俺はこの声を聴いたことがあった。モックが自分の特技で聞かせてくれた声だ。
俺の目の前にいるこの男性が、ダンジョンコアなのか。
分かりにくい内容がありましたら連絡お願いします!!




