祈り
少し短いです。
押忍!! ガクです。子供の頃の不思議シリーズですが、真夏の炎天下に晒されたアスファルトのモヤが不思議でした。陽炎と言うらしいですが、意味も理屈も分かっても不思議です。
早朝、サラとルアンを連れてナルミのお墓に来た。
この街にあるお墓は土地の広さ的に個人で一つを所有出来ない。
なので一カ所に多くの方々が眠られるのだそうだ。
もちろん貴族や裕福層の人たちは家で所有しているのだろう。
場所は騎士の宿舎から数十分程度だった。
広さは小さな公園程度か。
持ち物は特にない。
花があれば良かったが、花屋がなかった。
もう少し探せばあるかもしれないが、もし見かけたら買うとしよう。
「ここか……」
お墓は慰霊碑のように大きな石に名前がビッシリと書かれたモノだ。
最後尾にナルミの名前があった。
サラに聞いたが、この世界では土葬が殆どされない。
大半が火葬だ。
その理由は分かる。
アンデット化しないようにするためだ。
遺体は燃やすが基本なのだろ。
ナルミの遺体は既に火葬され、このお墓に入っているのだろうな。
「ナルミさん……」
「ナルミ~」
サラが手を組んで祈りを捧げている。
ルアンも真似て手を組んでいた。
俺も手を合わせる。
彼女の笑顔を想い、目を瞑った。
ナルミが眠る場所に来れて良かった。
少し気持ち的に安らぐ。
しばらくして目を開け、サラたちが立ち上がるまで待った。
ルアンは目からポロポロと涙を流している。
本当に優しい子だ。
サラは仮面をしているから表情は分からなかった。
サラがルアンと一緒に立ち上がったのは十分ほど経ってからだった。
その後、ギルドに向かう。
もちろん噂を探してだ。
だが、結晶の中に入った少女以上の噂はなかった。
複数のダンジョンで幽霊を見ただの、声がしただの日本でも聞くような噂だった。
それ以上の噂は望めそうにないのでギルドを出た。
「あ、ガクさん。商会ギルドに寄りましょう」
「分かった」
馬車を動かすのはサラだ。
もちろんイエス。
そういえば預けたヤツどうなったかな?
冒険者ギルドから商会ギルドに移動。
ここもあまり人はいないな。
「いらっしゃい。……あぁ、アンタらかどうした? まだ検品は終わってねーぞ?」
「そうでしたか。今現在でどのくらいか聞いても良いですか?」
「良いぜ。来な」
以前もいろいろと世話になった商人に裏に通された。
連れて行かれたのは俺が樽を入れた部屋だった。
「とりあえず、一部屋は終わった。少ない方だがな」
部屋を覗くと樽から出された置物がずらりと並べられていた。
熊の置物以外にも小鳥とかウサギもいるんだな。
個人的に欲しいのはドラゴンの置物だ。
あれカッコイイ。
ルアンを背に乗せて鎧と剣を身に着けて撮影をしたいな。
「この部屋のモノだけで軽く金貨百枚は超えるな」
マジかよ。
原価いくら計算だ?
知らないけど。
「これだけで一回清算できますか?」
「う~ん。それはちょっと困るな。手違いがあるといけねぇからな」
「いえいえ。今現在、分かっている範囲で良いのですが?」
「う~ん」
あ、そういう事か。
商人側はなるべく安く仕入れたいから一回で大量に仕入れたい。
サラはそれが分かってるから区切りたいのか。
一回区切る事で何が起こるのかだが、まず値段が固定する。
日本みたいにガリ〇リ君一本六十円って感じで値段が完全に固定って分けじゃなくて、大体このくらいでこの値段ってのが大まかに固定してしまう。
商人側は区切らない方が微調整でき、尚且つ全体的に値段を下げる事ができる。
下げ過ぎれば売る事を拒絶されかねないが、量が量だけに少し下げても売ってしまうだろう。
サラは区切る事でここである程度の目安を付ける事ができ、お金がもらえる。
商人が後の値段を下げ難くなる。
ただ、ここで値段を上げ過ぎると売れない事があるのか。
商人側が渋るのはサラがどうしても売るのなら少し下げた値段で交渉する気なのだろう。
スゴイ攻防だな。
「……分かりました。では、数日後に来ます」
「そうしてくれ。で? ほかに要はないのか?」
サラは俺の方を見た。
一瞬、何で俺の方を見ているのか分からなかったが、思い出した。
「この中で良い家を探して見繕って欲しいんだ」
「ッチ。貸してみろ」
え?
何で俺が舌打ちされるの?
あ!
サラの注文を事を断って俺の注文まで断るとガメツイ商人という印象を受けてしまうから受けなくてはいけない流れに持っていかれた事を不快に思ったんだな。
俺じゃないのに……。
「希望は?」
「キッチンが立派で広い庭とお風呂がある家でお願いします」
商人は返事もしないで物凄い勢いでページを捲る。
「……三件だな。コレらだ」
「ありがとうございます」
サラが受け取った。
マジマジと見ているな。
「この中でダンジョンに近い家はどれですか?」
「どれも近いぞ。遠くても徒歩二十五程度だ」
「なるほど」
お風呂は必須だよね~。グヘヘ。
「では、この家に行ってみます」
「そうした方が良い。実際に見た方が失敗しにくいからな」
「ありがとうございました。では」
「あぁ。五日に来な」
伸びたな。
でも、樽百五十個もあってそのぐらいの時間で済むんだから逆にスゴイか。
こうして紹介ギルドを出た。
「ガクさん、どうしますか? 家を見に行くか、装備を整るかですが」
「そうだな……」
う~ん。
武器は決まってるし、防具も今の防具のランクが上がった程度のモノしか着れないしな。
早めに根を下ろした方がいいかな?
「おうちがいい~」
「そうだね。家にしようか」
「うん!」
「フフフ。分かりました」
とりあえず、商人に選んでもらった家に向かう事にした。




