それは、母さんが
それは、母さんが私を呼んでいる声。
その瞬間、私の中の悲しみがあふれ出した。
「とても怖かった、一人の夜と日々」
「どんなに待っても帰ってこなかった、母さん」
「約束を守った私を抱きしめてくれなかった、母さん」
「すぐに帰ると言ったのに約束を守らなかった、母さん」
どうして?
私は待って待ち疲れて、今やっとゆっくり出来るのに、
どうして引きとめるのか!
どうして逢いに来てくれないのか!
なんで、どうして!!
気付いたら、目の前が真っ暗だった。
さっきまで何も無かったのに、今は私の周りに
どろどろした黒いものがひしめき合っている。
「それ」は一見不気味だと思ったが、近づいてみると
ふわふわしていてとても柔らかそうだ。
それに、「それ」が現れてから母さんの声も聞こえなくなった。
今度こそゆっくりできそうだ。
「それ」に寄り添って目を閉じようとしたが、視界の端を何かがかすめた。
とっさに確かめようと手を伸ばしたが後少し届かない。
それは、まるで私をからかうかのようにヒラリヒラリと
手が届きそうで届かない距離を動き回る。
私が見失うと頭の上に停まって、気付くとまた動き回る。
夢中になって追いかけていたら消えた。
突然消えたのだ。
頭の上を確かめたがそこには何も無い
後ろで何かが叫んだ。




