会談にて1-2 昼飯を食べていたんですが
息が上がり、全身から力が抜ける。耐えきれず俺は地面へ倒れ込んだ。
サタンは助けてくれる様子も無く最初は完全に面白がって観戦していたのだが。
そもそも身体能力は全く変化してはいないのだ。そんな俺が30mの竜と戦って勝てたとか。やはりここは異世界だなぁと、痛感する。
一歩間違えば間違い無く死んでいた。そう思うと今更ながら震えが来た。
「おせえよ! 死んじゃう所だっただろうが!」
さすが異世界、2日目にしてかなりのトラウマ物だ。
「何だよーサクッとやってくれても良かったんだぜ? 別にペットでもないし。」
じゃあ何のためにあんなの飼ってるんだ。ゼェゼェと不規則な息をとりあえず深呼吸して体を落ち着かせる。
「いやぁーやっぱりソウタの身体能力はそこそこあるみたいだな」
「身体能力見るためだけに死にかけただろうが! もっとマシな方法ないのか!」
今後またこんな事がないようしっかりと釘を打っておかなければなるまい。
その後は普通にサタンの呼び出した”普通”の安全な物を切っていった。正直驚いたのはバッサリとまではいかなかったが鉄ぐらいの硬度の物なら切る事ができた事だ。まあ、竜の体真っ二つに出来たくらいだもんね。
それ以外にも他の物に切れ味を纏わせる事も出来るようで試しに鉄の釘にスキルを使って木に向かって投げた所、完全にめり込んだ。
そんなこんなでスキルの使用を終えた所で魔力が使いすぎた為か体に疲れが見え始めたので一時休憩中である。ちょうど昼頃で小腹も空いてきたので食事もかねて3人でご飯を食べている。
「いやぁーリリスの料理は美味しいな」
そう言ってサタンはリリスの転送したサンドイッチを沢山頬張っている。俺も食べているが本当に美味しい。
「確かに美味しいな。何で作ってるんだ?」
そう言われて照れたのか。リリスの頬が少し赤くなっているようだった。
「何って普通の物よ。小麦で作ったパンとキングヒドラのお肉にレタス、ソースに……」
「おい待て! 肉の所! 何て言ったんだよ」
思わ口に含んだサンドイッチを吐きだしかける。この肉さっきのドラゴンの物らしい。 何で?他の2つは普通なのに。ってか食用なのか?
「でも美味しいでしょ?」
「美味しいです」
もうかなり食べてしまったし今更どうこう言っても仕方が無い。さっき食べられかけた相手を食べているのは複雑である。アマゾンとかの原住民の人はこんな感じなのだろうか。
その後もキングヒドラのサンドイッチは美味しく頂きました。
「リリスはさっきから転送とか魔法みたいなの使ってるがそれはスキルなのか?」
食後は特に予定は無かったのでききたかった事を聞いてみた。ちなみにサタンは用事があると言って自分の部屋に戻って行った。
するとリリスはニャッと笑う。
「あれはただの転送魔法よ。 いい機会だし私のスキル見せてあげるわ」
「待て待て!危なく無いだろうな?」
「大丈夫よ。危険なスキルでは無いから。」
そういうと地面から野球ボールサイズの石をもってこちらに投げてきた。
石がこちらに飛んでくる。逃げなければならないのだが……何故か危機感が全くない。 と言うよりよける気にならない。あるのか無いのか、ボーッとする俺を差し置き。そのまま俺の顔に向かって石は飛んできて……
「痛った!」
顔にストライクしました。
「これが私のスキル。対象の物を人の意識から外したり、その対象に対する危機感を麻痺させたり出来るわ。まあ、アンタ達の世界で言う所のマジシャン達が使ったりしてるミスディレクションだったっけ? そんな感じの物よ。」
得意気にリリスはそう語る。えっへん、と胸無い胸を突き出しているが痛い!話の説明があまり頭に入ってこない。危なく無いって言ったじゃん。
その直後、強烈な痛みに悶え苦しむ中、風をきる音が聞こえる。
「何の音? 」
そう言うリリスと共に上を見上げる。見ると大きな船がこちらへ向かって降りてくる所だった。