城にて1-5 同じ部屋だと言われたんですが
「え? 何て?」
「だから、アンタとあたしは同じ部屋よ。ってか今使える部屋ここしかないのよ」
動揺しまくっているソウタとは反対に、リリスは顔色は全く変わらないのに、こちらの鼓動は変に早まる。
「いや……流石に女性と同じ部屋って言うのはなぁ他に何とか空いてる部屋ないのか?この城広いし」
見た所、城はかなり大きく十分に部屋はあるとソウタは思った。そもそも、免疫の無い男子にいきなり女子と同じ部屋というのは厳しい。落ち着けないし、色々と都合が悪い。
「ってかリリスは俺と同じ部屋でいいのか?」
「別に。 そんなの気にしないわよ。それにあたし以外アンタの世話するやついないでしょ」
そろそろ面倒だ。といった様子だ。しかし、男子諸君ならば分かってくれる筈。そう。
女子と同じ部屋だとっ……抜けないっ!
男子諸君なら分かってくれるだろう。そう、これは決して変態行為などでは無い。童貞中学生のいたって普通の、生活の一環である。異世界だろうと、そこは気にするソウタである。
「まーそう言われたらそうなんだけどけどなぁ」
頼むから、なんとかして欲しい。せめて、敷居とか欲しい。見た所、ベットは完全に二つが横並び。ホテルのような感じの配置だ。これでは完全に悟られるし、悟れないっ!
「何度も言わせないでっ! 男のくせにしつこい!」
結構強めにキレられた。ここまで言われてはどうしようもない。理由を説明する訳にもいかないことだし。
「じゃあ、あたしは少し用事があるから、部屋を自由に見て回っておきなさいよ。部屋の中からはでるんじゃないわよ絶対に!」
最後だけ念押しのように強くいった後、リリスは部屋をでて行ってしまった。
ベッドの距離は意外に近い為、この距離で同年齢の女性と寝るなど始めてである。せっかくなのでベッドに寝転がってみた所、意外にフカフカである。
「ああー、良い自宅のゴミみたいな臭いの布団とは違うな」
ふと横を見ると、ベッドの横に電話らしき物か置いてあった。
元々の文化なのだろうかそれとも、こちらに来た人の影響かわからない。受話器らしき物と番号を押すボタンが付いているので、電話で間違いないのだろう。電話の横にメモ用紙の様な物があり、番号が書いてある。
444ーーサタン
三桁でいいのだろうか。自由にしろと言われたので試しに4の数字を3回ほど押す。テュルルルルと普通の呼び出し音が流れ「あ、もしもし? サタンですけど」と声が聞こえてきた。
元いた世界なら完全にこんな応答子供の悪ふざけでしかないだろう。
「あのさ、夜遅くに悪い。リリスと一緒の部屋ってのはどうにかならないのか?」
やはり気まずいので可能なら別々がいい。いや、せめて寝る場所は遠ざけて欲しい。
「一緒の部屋の方が色々と好都合だしな。まあ嫌なら他に空いてる部屋は確か……28代目当主の亡骸が埋葬してある地下神殿が広いからいけるな。それに、地下牢も過ごしにくいが空いてることは空いてるし、後は世界各地の珍しい怪物の剥製のコレクション……」
「いや、すいません。同室でいいです」
そんな気持ち悪い部屋に入れられるぐらいならリリスとの同室の方が遥かにましだ。とソウタは諦めた。
「そうか。しかしいいじゃんーリリスのやつあの服からでは分からないだろうが中々見事な体型だぜ? 胸以外はなかなかのものだ」
「マジかよ?!」
そこはやはりソウタも男子である。つい反応してしまう。いや、反応すべき場所である。
「ってかなんでそんな事知ってるんだよ」
「フッ、ソウタよ透視魔法と言う言葉の意味は分かるか」
「このゲス野郎!!」
全力で叫んだ。なんて事だ。こっちの世界ではそんな裏技が使えると言うのか? これは魔法を早く習得せねばなるまいと心に刻む。色んな意味で。
「今魔法早く覚えたいとか思ってたろ」
「うるせぇよ! 思ってない」
こいつの変なノリに付き合わされたらリリスに殺されかねないと思う。いや、キスが大丈夫なら多少の覗きぐらいならばせっかく異世界に来たんだし許されても……
「やめておけ。にわか仕込みの透視魔法などではそう簡単には見れないぞ。もちろん普通なら透視魔法を防護する結界もはってあるからな」
その一言でさっきまでの希望的目測は打ち消された。まあ、そんな幸運事故がおきるなんてやはりラブコメの漫画か小説ぐらいの物だ。
「待てよ、じゃあサタンはどうやってその結界があるのに透視魔法をつかえたんだよ」
「え?忘れたのか? 俺は序列4位であり、この国の主だ。そんな防護壁意味を成さんっ!」
やっぱゲス野郎じゃねえか!! 何だよ!サタンだの4位だの大層な名前ついてるけど普通にやってること犯罪だよな? ただの覗きだよな? この国主だからってなにやっても許されるのか?
「いやーけどキスであの表情だったんだからまだなんだろう? せっかくあんな可愛い女の子と同じ屋根の下なんだから! 目指せ童貞卒……」
ソウタは受話器を静かに戻した。しかし、最後のあの内容だとあいつ、同い年ぐらいの見た目してるくせに卒業してやがるのか? 夜の方も王様だと言うのかっ! ちきしょう! ってかこっちの世界でも童貞とか通用するんだな。
そう悔しさを味わった後、部屋に水道やトイレまであることや電気が通ってる事を確認した。 キッチンまで付いており包丁やまな板のような物まで置いてある。そして隣のクローゼットを開けた時、それは現れた。
「こ、これは……下着なのか!?」
明らかに女性物であろう物が、そこにあった。色々な種類の色があり、綺麗にしまわれている所を見ると、おそらくリリスの下着である。悪魔と言うだけあって大胆な赤色の下着や黒の露出度が高いそうなやつがあったりするのに清楚な白色のシンプルな物まである。
「白のこんな清楚なやつまであるなんて……」
ギャップ萌えだ。このような清楚な方が好きである
呆然と、それを眺めていると、ドアが解錠される音が聞こえ、ドアからリリスが帰ってきた。
「今帰っ……アンタそこはっ!」
リリスは驚きと怒りで顔を真っ赤にする。恥じらい2.怒り8くらいの割合だろうか。などと冷静に考えてる暇は無い。
「いやっ、待て待て! だって自由に見て回れって言うし、それに偶然見ただけであって……そう! 事故だ事故!」
決して悪い事などしていないはずだ。少なくともあんな魔族の王(ゲス野郎)に比べれば。
「だって自由にしろと言われたし、ここは開けるなとも言われてないだろ?」
そう弁解するが、リリスは顔を真っ赤にして憤怒の表情を浮かべながら無言で距離を詰めてくる。
「いやっ、だからっ……俺は決して清楚な白にギャップ萌えなどしてはいなっ……」
そして、次の瞬間思いっきり平手打ちを食らったのであった。お約束ですね。はい。