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エルフの里  1-4召喚獣ってのはとんでもないんですが


 他の仲間が敵を引きつける間に、ソウタ達は地下道を抜けて、城の庭へ入っていた。


 大理石のような物で作られた白く立派な柱と、それに木の根が巻き付き調和している。とても綺麗な内装の城だった。


 フィリアの案内により、城の階段を掛け上がり、最上階に囚われている姫の元を目指す。


 二階へ上ると同時、白い鎧を纏った兵士数名が剣を構え、向かってきた。突然の敵襲にソウタは戸惑う。


 「フィリア!  どうすればいい?」


 フィリアは振り向く事なく、探検を腰元から抜き、


 「戦いは避けれません!  思いっきり戦って下さい!」


 その声が聞こえると同時に、フィリアの横をエリーナが通り過ぎる。刹那、衝撃音と共に衛兵数名が吹き飛ばされる。


 「ハハッ、こんなザコ構う暇はないナー……っと、」


 衛兵を瞬殺し、こちらをエリーナが向き直ると下の階から数十名の兵士が駆け上ってくる。


 「ふむ。ここは私が止めておくナー。皆んなは先に進むがいいナー」


 「分かりました!  皆さん、急ぎましょう!」


 フィリアは迷う間も無く、三階へと向かう為の通路へ走り出す。


 「ちょっと、あの人数をあの人一人に任せて大丈夫なの?!」


 リリスが異議を唱えるが、それでもフィリアに立ち止まる様子は無い。


 「あんな人数の兵に囲まれれば勝ち目はありません!」


 「でもっ!……そんな……」


 リリスも戸惑うが、仕方無く走り出す。それにつられて皆も動く。


 こんな状況でソウタはただ、関心していた。フィリアの言う事は確かに正しい。しかも、その判断を下すまでがとても早いのだ。


 あれだけの人数を束ねるリーダーシップ。迷いなき正確無比な判断。先ほどまでのフィリアはそこには居なかった。


 一体何が彼女をここまでしたのか。その目に宿る気迫に、ただついて行く事しか出来ない。そんな事を考えながらもただ、走り続ける。


 しばらく走ったが、追手の姿は見えない。通路を抜けた先に、大きく開けた空間があり、その先には巨大な階段がある。


 急いで上ろうと、その空間へ足を踏み入れる。と同時、得体の知れない威圧感が全員を襲った。


 フィリアも足を止め、胸を押さえながらしゃがみ込んでしまう。


 「フィリア!  大丈夫か?」


 「……何か来ます……とてつもなく巨大な力です」


 フィリアがそう言うと、階段の中央部が光に包まれ、輝き始める。


 段々と閃光は強くなり、目を覆う眩しさになる。強烈な閃光が消えた後、そこには1人の少女がいた。


 茶色の腰まである髪は後ろに束ねられ、赤い瞳がこちらを見ていた。白いドレスのような服装を纏う彼女を見た時ソウタは感じた。何かが違うと。


 これまで色々な種族に会ってきたが、彼らは全員人間と大差変わりない。ところが、目の前の少女から発せられる異様な雰囲気が、本能的に異質な何かを感じさせていた。


 数秒の沈黙の後、


 「はて……今は何時じゃ?  何故儂は呼び出された?……ああ、なるほど……あい分かった」


誰かと会話しているような素振りを見せた後。こちらを向き、


 「この者共を殺せば良い訳じゃな」


 その言葉に全員が武器を構える。


 「フィリア……なんだあいつは?」


 「……召喚獣ユグドラシル。代々王家の者しか扱う事の出来ない、この国の最高戦力です。かつての大戦をエルフが生き延びたのは彼女のおかげと言えるでしょう。ユグドラシルが現れるならば……やはり……」


 フィリアはそう言って唇を噛みしめる。


 「私が何とかユグドラシルを出し抜き、姫を救い出します。姫さえ救出すれば、ユグドラシルは止められる。どうか、それまでユグドラシルを食い止めてもらえませんか?」


 「何言ってんだ!  ここから先は一人でどうする?」


 「どの道、姫の部屋までの道は私しか分からない!  まともにユグドラシルと戦っても勝ち目はありません!  これしか無いのです!」


 迷うソウタとは対照に、フィリアはもう覚悟を決めているようだった。そんな中、リリスが口を開く。


 「……私の全開のスキルを使えば、フィリアへの視線、存在感をほぼ消せる。その間なら、突破出来るかも知れない」


 「……お願いします!  さあ、作戦会議は終わりです!  来ますよ!」


 ユグドラシルは裸足の足で、ゆっくりと距離を詰めてくる。


 「……さて、話し合いは終わったかの?  それでは、行く……」


 ユグドラシルが話し終える前に、ルナの剣から轟音と共に、陣風が放たれる。


 「先制させてもらったぞ。いかに召喚獣と言えど……」


 「なんじゃ?  微風が当たりおったが……」


 「なっ……私の風を受けて無傷……だと?」


 無傷でユグドラシルはそこにいた。こちらをぼーっと、見つめ、指先をこちらへ向ける。


 大陸の怒号(アースカタストロフィ)


 ユグドラシルがそう一言呟いただけで、城の地面が生き物のように蠢き始める。


 ソウタとルナがその場を離れようとする。が、足が動かない。


 「敵の動きを封じるのは戦いの基本ぞ?  餓鬼共」


 瞬間、地面がすざまじい衝撃と音を立て弾け飛んだ。


 大地の怒号(アースカタストロフィ)魔力を物体に込め、物体内の分子の運動を強制的に高めて爆発させる攻撃。城の中という事でユグドラシルが手加減しなければ、その攻撃範囲は半径1キロにも達する。


 「一応城の床が崩れん程度には手加減したが……はて?」


 粉塵が舞い、ソウタ達の姿が確認出来ない状態でユグドラシルは首を傾ける。


 「油断し過ぎだ!」


 粉塵に紛れ、ソウタとルナの二人がユグドラシルの左右から斬りかかる。ソウタの剣には魔力が、ルナの剣には高速の風を纏わせた特別製だ。


 間一髪、爆発の直前にソウタは地面を剣で突き刺していた。爆発の準備が整う寸前でソウタのスキルにより、ユグドラシルの魔力が消滅し爆発の直撃を避ける事が出来た。


 ソウタが首元、ルナが足元を狙う完全な不意打ち。剣が当たる寸前で、ユグドラシルと剣の間に土の壁が現れる。


 「カカッ、単純、単純」


 ユグドラシルはガードに使った土ごと蹴り抜き、ソウタの腹に強烈な蹴りを入れる。


 それを見て、すかさず第二撃を与えようとルナが剣を振る。それを振り返りもせずユグドラシルは土の壁で身を守る。そして、ソウタを蹴り抜いた足でそのままルナを蹴り倒した。


 「あーっ、遅いの。攻撃も軽い、今の者とはこんなにも脆いものなのかの?」


 その時、リリスの声が広間へ響いた。


 「もう大丈夫、フィリアは行ったわ!……それにしても、これは完全に予想外ね……召喚獣なんて……」


 二人共、完全に意識から忘れていた。フィリアの存在をリリスに告げられ思い出した。


 認識を阻害するリリスのスキル。本気になればここまでなのか、ソウタが考える間も無くユグドラシルがこちらへ向かってくる。


 周りの地面が浮き上がり、ユグドラシルの周りを飛び回る。


 「ほれ、踊れっ!」


 ユグドラシルがそう言うと地面から削り出された鋭く尖った岩が、二人を襲う。


 リリスとソナタには自分達にリリスのスキルをかけているからか、それともユグドラシルの興味が無いだけなのか、攻撃が飛ぶ事はなかった。


 ルナは仕方無く、片っ端から飛んでくる岩を斬りまくる。と、いきなり視界が逆さまに裏返った。瞬時に後頭部に激痛が走り、ようやく自分が投げられたことに気づいた。


 「足元がお留守じゃぞ、小娘」


 「くそっ……強すぎる」


 ソウタがスキルでユグドラシルの動きを止めようとする。それも効果を発揮する寸前で、ユグドラシルは宙を華麗に回転し、離れてしまう。


 地面に着地すると、構える間も無くソウタへ向けてユグドラシルは地面を高速で蹴り飛ばす。


 ソウタは正面から迫るユグドラシルに剣を向け、力を抜き迎撃を狙う。ユグドラシルが間合いに入るその一瞬を狙い、避けなれないタイミングで剣を振り下ろす。


 刹那、剣を振り下ろした場所にユグドラシルの姿は無く、真横からの拳がソウタの顔を殴り飛ばした。


 勝てない。そう二人は実感した。たった数回、接触しただけでその感覚はリアル過ぎた。今までのどの相手とも違う、圧倒的な実力差。触れる事すら許されないその早さ。そして二人は感じていた。


 ユグドラシルはまだまだ本気では無いと。なのに、触れる事すら出来ない。


 最早、立ち向かう気力も失せた二人をユグドラシルはじっと見る。


 「もう終わりか。手応えのない事じゃな。……殺すか」


 全身に寒気が走る。片言からでも十分に伝わる純粋が、ソウタの体を動けなくした。


 大地の剣舞(グラウンドソーサラー)


 城の大理石が剣の形に切り取られる。その数およそ20本。全てがソウタへ向けられる。


 「串刺しにしてくれようぞ?  人間よ!」


 ソウタに全ての石剣が狙いが定められ、放たれる。それと同時に、ソウタの頭に声が過る。


 (代われよ……久しぶりに楽しめそうだ……)


 しかし、その全ての石剣をソウタは軽々と迎撃した。片手の剣で全てを弾き飛ばし、ユグドラシルへ向き直る。

 

 「……貴様、何者じゃ?  先ほどとはまるで動きが違う……」


 警戒するユグドラシルに対し、ソウタは剣を向け、軽い笑みを浮かべて軽い口調で、こう告げた。


 「気にするな。ただの別人格って奴だ」

 


 


 ユグドラシルって名前かっこいいですよね。さて、フィリアが一人姫に会いに行きましたが、どうなるのか。少しご期待下さい

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