エルフの里1-2 テンプレで悪徳大臣倒して姫を救うらしいのですが
魔法陣の先にあったエルフの国。何本もの木や家、中央には王宮のような建物があった。
いつもならば綺麗な景色が広がっているはずだ。しかし、今目の前に広がっているのは燃え残った家や、エルフの死体。それらの焼けた嫌な臭いが辺りを包み、気持ちの悪い空気が充満している。
「なっ……なんだこれ?」
騒然とする一同にフィリアが足を早めながら、
「今エルフ領土、アルブレムは争いが起こっているのです」
「おい、待てよ。さっきは何者かの襲撃って言ってたじゃないか。そもそもお前は何なんだ? 」
そうフィリアに問うが、本人は振り返らずに壊れた家の間を進んで行く。
「その事についてもお話致します。先ずはこちらへ。私達のアジトへの隠し通路です」
瓦礫の中を掻き分け、現れたのは地面から人1人づつが入れるか位の穴があった。そこへフィリアが先頭に立ち、通路へ入って行く。
「こちらです。暗いのでゆっくりと……」
フィリアはそこまで喋った途端、急に視界から消え、同時にドスンと鈍い音が穴から聞こえた。
「おい! フィリア! どうした⁈」
「……うーん、足を滑らせました」
こいつ、鈍臭い。
初めて会った時から思ったがこいつについて行って大丈夫なのか? 話の真相は見えてこないし。危ない気しかしない。
それでも今はフィリアについて行くしか無い為仕方が無いのだが。
穴の下には通路があるようで相当の深さだ。
「おい、フィリア聞こえるか? 今から降りるからな」
はーい、大丈夫です。と返事が来た所で勢いよくソウタは飛び降りた。が、暗闇の中、地面に降りる寸前で何かに激突した。
不思議と痛みは無い。何かがクッション代わりになったようだったが、流石にここまで来て感づかないソウタでは無かった。
無論、下敷きになっているのはフィリアである。
いや、大丈夫って言ったじゃん!
完全に伸びてしまっている。と言うか自分で確認しておきながら……もういいや突っ込むのも面倒だ。
倒れるフィリアを叩き起こそうとした時にフィリアの胸元の谷間につい、目がいってしまう。仕方ない!凄い膨らんでるんだもん!
ついつい凝視していると、フィリアの首から掛かっている綺麗なネックレスに目がついた。
銀色で彩られ、中心には赤色の宝石が付けられている。何故か派手な装飾では無いが惹きつけられる。決して背景が谷間と言う訳ではない。多分。
するとようやくフィリアが目を覚まし動き始めた。
「むにゅーっ……ここはどこ? 私は誰ですか?」
「やめろっ! あの衝撃で記憶喪失とかテンプレの展開はやめてくれ! ここでそんな事になるとマズイから!」
「ああっ、そうです。思い出しました。私はフィリアです」
「もう治った?!」
「すいません。私はラノベのテンプレ通りには動きませんので」
「何で異世界人がラノベを知ってるんだっ!? 」
「何しろエルフの国は人気なので、異世界人の方々もよく訪れられるのですよ。その時に”四賢人”の一人にお会い致しましてその時に少々」
「まてっ、その四賢人って何だよ」
フィリアは驚いたようで手を口に当てる。あら……ご存知でないのですか? といったご様子だ。
「この世界に来た異世界人の中で最も魔術の発展に貢献した四人。それが”四賢人”です」
なるほど。ノーベル賞受賞者みたいな凄いやつらしい。とソウタは思った。
「それで、そいつはどんな奴だったんだ?」
「はいっ! ふっくらとした安心感のある体型。圧倒的な魔術の知識。知的な眼鏡。自らを自宅警備隊と名乗っておられました」
「それ、ただのオタクじゃねぇか!!」
「と、言うかかなり急ぎたいのですが宜しいですか?」
いやっ、お前のせいだからね?! こんなグダグダした感じになってるの!! と、ソウタは心の中で思ったが、これ以上話すと更に先に進まなそうだったのでつっこまなかった。
残りの三人も穴に降り、坑道の中を進むこと数分。先から明かりが見えてきた。
木製の扉を前にして、フィリアが立ち止まる。
「……合言葉は?」
と扉の奥から女性の声が聞こえた。
「……這い寄れ!ニャ○子さん」
「まてっ! 一応つっこんでこくが、合言葉おかしいよなっ?! 」
「ラノベのタイトルにしないと私が忘れてしまうのです」
「あっ、そうなんだ……」
「つっこんだ割には納得するの早くないですか?」
ソウタ自身、これ以上に時間をかけたくは無かった。そろそろ本題へ入って欲しいのだ。
「ちなみに、私はクー子が好きです」
「百合属性だとっ?!」
性懲りも無い会話の後、木製の扉を開けた中には巨大な空間が広がっていた。空間、というよりよく辺りを見渡すと木の中らしい。
「ここは中に人が住める特殊な木、ロエールの中です。水も食料もあるのでご安心ください」
フィリアがそう説明すると、即座にリリスが反応した。
「たっ……食べ物?! どこ? どこどこどこっ!?」
蛇を食べてないのでリリスは実質、殆ど食事をしてなかったのだ。今まで態度には出してなかったが、この様子だと腹ペコらしい。
あちらに、とフィリアが指を指した時には恐ろしい反応速度で走り出していた。
「さて、そろそろ本題へ入ってくれないか?」
ルナがフィリアへ問う。それにフィリアは真剣な表情で答えた。
「この国の王女、アフルバード王家の長女レイナ。彼女がこの国の最高責任者であり、統括者です。しかし、この国の大臣、ヤルゲイが姫の自由を拘束。この国を裏から操っているのです」
「要するには、その大臣を倒そうって事なのか? けどさっきは何者かの襲撃とか何とか……」
そこなのです! とフィリアは一段と大きな声を出す。
「王女の身を案じた古くからの家臣、部下数名がこの数日で姿を消しました。明らかに大臣は他国と繋がっているのです。大臣反対派の勢力も次々と倒され、他国への出入りは一切禁止されてしまいました」
「大臣の狙いは何なのだ? 実権を王家から手に入れて何をするつもりだ?」
「……獣人族領土への侵攻、略奪です。奴は同盟国へ戦争を仕掛けようとしています」
なっ、と思わずルナは息を飲む。
「そんな事は不可能だっ! 大体、もしエルフ側が敗北すればどうする? 大臣はそれこそ終わりではないのか?」
「失敗したその時には、全てを王女レイナになすりつけるつもりでしょう。だからこの事は他国には知られていない。そして、罪を着せ王女を始末すれば」
「自分が実権を握れる……という事か……くそっ、ふざけている!」
「だから、我々は国に、大臣に反乱を起こしました。しかし、大臣側の戦力は圧倒的……どこから支援を受けているのかは分かりませんが」
「全く……難しい話をしてるわね。簡単じゃない。大臣を倒して、王女を取り戻せば一件落着じゃない」
満腹のご様子で帰ってきたリリスが口を挟む。
「そうです! 私達は今夜、城へ忍び込み、王女を救い出します。そうすれば大臣の強みはなくなり、実権を行使する事は出来なくなる。後はこの事実を獣人族へと伝えれば、戦争は起こらないのです!」
「ふむ、どうするよルナ。これは避けては通れない事の気がするが」
真剣な表情で考え混むルナ。少しの沈黙の後、溜息をつき、
「そうですね。私達が国へ行くのはこのままでは難しそうですし、国への功績を残すと言う意味でも、私達を襲った奴らを逃した事をチャラに出来るかもしれない」
「よし、決まったわね! その話、手伝ってあげるわ!」
最後に何故かリリスが締めた事に、一同は疑問を覚えつつも、おーと返事をした。
更新遅れて申し訳ありません。新年、休み明けテストも終わったのでまた小説を書いて行こうと思います。良ければお付き合いいただければ幸いです。




