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エルフの里1-1  とりあえず少女と出会ったのですが


 その後、結局リリスは蛇を食べなかった。ドラゴンの肉とかは平気で食べるのにどういう事なのか。


 後でソウタが聞いた所、あんた達は牛は食べるのに蛇は食べないでしょうと言われた。


 確かに普段はそんな機会無いが今回ばかりは仕方が無い。


 ちなみに蛇は味付けがなくとも美味しかった。食感や味は鶏肉に近く、案外慣れてしまうとさほど問題にはならなかった。


 その後、かなり歩くと燃えた森がなくなった先に草原が広がっており、奥にはさらに巨大な森が広がっていた。


 他の森や周りの草木とは違う何かが宿っている。魔力が何かまだよくわからないソウタですらそれは感じた。今まで見た木とは違う。何十メートルもの、太さ大きさの様々な木がある。それのどれもが厳格な雰囲気を放っており何万年も生きているような貫禄に満ちている。


 その森には神秘的な何かがあり、それは中心に向かうにつれて強くなっているような気がした。ルナが足を止め、辺りの様子を伺う。


 「この森は妖精族の住む森、一般にはエルフと呼ばれていますが。彼らの住んでいる村があります。移動手段を借りれれば良いのですが」


 「ここの木は特別なのか?  なんか、今まで見ていた木とは全然違うようなんだが……」


 「その通り、ここはエルフの里と呼ばれ、中心にある”神樹”と呼ばれる木から溢れる魔力に加護を受けている森なのです。それにしてもおかしい……」


 ルナが巨大な風を起こし、ソウタとソナタの真横を突風が突き抜けた。


 「なっ……おいルナ!  いきなり何を……」


 カランと、風が去った後、二人の横に音を立てて落ちたのは木の弓矢だった。ルナが気づかなければ二人のうちどちらかはやられていただろう。


 「敵か?  一体どこから……」


 辺りを見回すが敵らしい人影は見当たら無い。音も無く放たれた弓に気づく所などやはりルナは凄い。などと感心している暇は無い。



 周囲を警戒しつつ、リリスと背中を合わせる。


 「ソウタ!  あそこよ!  手前の木の陰に魔力が見える。そこから狙撃されているわ」


 リリスが指を指す方向、巨大な太い枝の上、数十メートル先を向く。すると気づかれたからなのか。弓矢を放った人物は姿を現した。


 緑の髪に長い耳、額には赤い宝石のようなものが見える。森にカムフラージュしていた服装は緑一色だが、対照的な白い肌が光に反射している少女。


 鋭い眼光でこちらを睨みつける彼女はこちらへ向けて弓を引き絞る。


 「おい、お前!  一体何者だ?  新手の敵か?」


 こちらの話など聞く気など持たないようで、彼女は弓を引き絞り、こちらへ向けて矢をを放つ。


 が、それもルナの風により方向を、変えこちらへは当たらない。


 すると彼女は枝から降り、十メートル程度の木から難なく降りると短剣を取り出しこちらへ向かってくる。


 「なっ……ルナっ、どうする?」


 ルナも剣を抜き、


 「あれは間違いなくエルフだが、様子がおかしい。ひとまずは無傷で抵抗出来ないようにして欲しいのだが」


 そう言う間にも敵は襲ってくる。


 仕方ないと思い、ソウタは一歩前に出た。敵が持っているのは短剣だが、何が仕掛けてあるか分からないしルナの風の攻撃ならば無傷でというのは無理そうだ。


 敵が中々素早い所を見ると敵を止める効果を使うのは難しい。蛇の突進のように方向が直線的ならいいのだが、相手の少女はそうはいかない。


 こちらへ向かってくるのも一直線に向かってくるのではなく、跳ねるように距離を詰めてくる。


 なら、直接受け止めるしかないよなっ!


 剣を抜き、彼女の攻撃に備えた所にちょうど彼女は短剣を向け突進してきた。


 気を引き締める。たとえどんな相手でも、どんなに有利な状況でも油断してはならない事はロゼとの戦いから学んだ。彼女の脳力が何か分からない以上油断は出来ない。


 と思ったのもつかの間、その不安は大きく外れた。


 彼女はソウタの2.3メートル手間といった所で地面から出ていた木の根に躓き、盛大に転んだのだ。


 全員の視線が注目する中、ソウタはカムフラージュ用の木の葉などで装飾された服から見えるその綺麗な白い足に釘付けになっていたのだが。


 かなり痛がりながら起き上がり、ソウタに向けて切り掛かる。


 が、その短剣はやけにゆっくりでソウタは目の前だというのに空を切るばかりであった。


 「えいっ!  このっ!  こらっ!」


 運動が出来ない女子のダンスようなぎこちない動き。目を瞑ったままで当たる訳がない。元気な声を上げてソウタに攻撃しようとしているのだが相変わらずその剣は一向に当たらない。


 全員が全員、なんだこいつという目を向ける中、ソウタが剣でその短剣を弾く。短剣は宙に浮き遠くへ落ちる。


 だがそれでも彼女の目に燃える炎は消えない。肉弾戦に持ち込むつもりのようで、彼女はソウタに向けてパンチを放つ。が、これも酷く弱々しい女の子パンチであった。


 それを受け止め、肩を掴むとソウタは綺麗な動きで裏投げを決めた。受身も取れずに地面に頭をぶつけたようで彼女はがっくりと意識を失ったようだった。


 「何だこいつ?  弓矢の狙撃してきたかと思えば近接戦闘酷いぞ」


 ちなみにソウタは子供の頃、近所の道場に通っていた時期があった為に凄く多少の肉弾戦は可能である。


 「どうもエルフのようですが……」


 「それ以外何か分からないのかよ……情報力なさすぎだろ」


 つい軽い口走ってしまったソウタだったが、ルナは案外傷ついたようで、なっ……と言って俯いてしまった。


 「なぁ、リリスは何か分からないのか? 」


 そう言ってリリスに聞いたソウタだったが、当の本人は少し不機嫌な様子で、


 「へぇ……倒れたこのエルフの小娘の足に釘付けだったのは誰よ?」


 小娘って、お前も十分小娘だろうが。


 内心を声に出さずに心にしまいながらその少女へと目を向ける。


 以外と華奢で綺麗な手足だが、その胸元はそこそこの膨らみがあるようだ。


 この女の子……リリスよりよっぽどでかくないか?


 そう考えるが、リリスにそこを突っ込まれたくないので急いで目線をそらす。


 ソナタは無邪気な様子でポケーっとした様子でリリスの腰にくっついている。


 てか、改めてだけど凄いなとソウタは感心する。つい昨日までは殺しあった相手とここまで仲良くなれるとは。ソナタも最初に見たぶりっ子ぶりも、船で見たドSっぷりも全く見せない。


 まるで人が変わったみたいである。何か口調も少し変わった気がするが。


 「ねぇ、ソウタ。とりあえず敵みたいだし縄で縛っておこうよ。そしたら洗いざらい拷問して吐かせれば良いんだよ」


 言ってる間にSっぷりが現れた。腰に抱きつかれてるリリスも若干引き気味である。


 使えてるルナ自身は特に気にする様子も無く、


 「そうだな。  ソウタ、そこらにある木のツタでも使って拘束してくれないか?  また暴れられては厄介だからな」


 幸い、ヤドリギのようなツタがそこらにあった為に幾つか調達した。中々に硬かったが、ここは切れ味が上がるスキルの出番であった。普通には切れなかったが、スキルを使った後だといとも簡単に切ることが出来た。


 用意したツタで少女を縛る為に、少女の手を後ろへ回しその手首へとツタを巻きつける。


 待てよ、とソウタは思った。ここは異世界だ。だが、倫理的に少女を縄で縛るってのはどうなんだ?


  気絶している彼女の顔を見るとまだ幼さが残っているが、かなりの美人である。


 ソウタ本人は別にSっ気がある訳ではないが、別にこういった趣向の物が嫌いと言う訳でもない。


 不思議とその綺麗な手足を縛って行くと胸に何か分からない物が渦巻き始め、自然と息が荒くなって行く。


 それを感知したのかリリスが横へ来る。


 「あんた……まさか興奮してるんじゃないわよね……?」


 その表情は怒りなのか、嫌悪感からくるものなのか、分からないが明らかに不機嫌な事に変わりは無い。


 「そっ……そんな訳無いだろっ!  俺はそんな曲がった感情を抱くはずがないだろうがっ!」


 そんな事を言いながら手を縛り終わり(手に傷がつかないようかなり優し目に)手早く足もツタを結びつける。


 作業を終えるとそこには何とも言えない物が完成していた。


 美少女エルフが意識を無くして縛られている。どこかの企画物かと言う状況に最早、明らかな興奮は隠し切れない。


 目を逸らすがまたチラ見。そんな事を繰り返していると少女が目を覚ました。


 「……んなっ……これはなんなのですかっ⁈  放して下さいっ!」


 縛られた手足を動かす弱々しい少女。ああ……ヤバい可愛い。


 いま思い返せば異世界に来て会った異性はどうだったか。リリスは決して可愛くない訳ではないが、棘がありすぎる。


 ルナは年上の雰囲気がありすぎてそんな風には見れないし、どちらかといえば共に戦った戦友と言った感情の方が強い。ソナタが良いとか言ってしまうとちょっと危ない人だし、ロゼなどに至っては殺されかけた上に体を食い千切られている。


それに比べこの少女はどうだろうか、どこかあどけなさを残す可愛げな動き、まさに理想とする少女そのものでは無いだろうか。


 いや、落ち着け!  もしかするとこの状況(シチュエーション)に興奮してるだけで俺は実はSM好きだったりするのか?  そこに萌えてるだけなのか?  と考え、仮にこれがもしリリスならと想像する……


 気の強いリリスが縄で縛られて動けない様子かぁ……とここまで考え少し方向が危なくなって来たので思考を現実へと戻す。


 相変わらず手足を動かす少女。


 「ねぇ、ソウタ。聞きたい事があるんでしょ?」


 ソナタの問いかけで完全に思考を戻す。よし、大丈夫。


 「早く吐かせようよ。どうする?  もっときつく縛って、吐くまで縛り続ける?  それともそのツタみたいなのを鞭代わりに使って泣くまで叩く?」


 「  いいぞっ!  どちらかと言えば……いやっ、ダメだ!  何を言ってるソナタ。女の子にそんな事したらダメだ」


 思考がまたあちら側の妄想世界に飛びかけたので急いで戻る。


 少女は自分より幼い女の子に言われた一言に動揺しているようで、ひえっと声を漏らした。そりゃそーだ。


 「あのさ、俺たちは別に敵って訳じゃない。別に君に何かしようって訳じゃないんだ。ただ、エルフの人に獣人族の国まで行く手助けをして欲しいだけなんだ」


 えーっと、と言った感じでソウタは続ける。


 「それで、君の名前を教えてくれないか?」


 「……フィリアです」


 こちらを警戒しながら彼女はそう名乗ってくれた。


 「……あなた方が何もしないと約束してくれるなら私の知る事は全てお教えします。だからこの縄を解いてくれませんか?」


 「ああ、分かった」


 そう言って彼女の縄を解いた。特に逃げる様子も無く、


 「助けようにも……我々の里は何者かに襲撃され今、巨大な打撃を受けております。なのでそこまで助力する事は出来ないかと……」


 何者かの襲撃、その言葉にはルナも反応した様子である。ここはロゼ達と会った場所、人喰いの森からそう遠くは無い。


 「詳しくは私達の里でお話ししましょう。こちらです」


 そう言うと彼女は地面へ向かい呪文を唱え始める。数秒の後、地面に魔法陣が描かれた。


 「里までの転送魔法陣です。どうぞ」


 ルナが一通り怪しい様子が無いか確かめるが、問題ない。と言うと皆で魔法陣の中に入る。


 視界が明るくなり、次に視界に映ったのは想像していたエルフの国と言う物とは別物。無残に破壊された木々の残骸と死者達の姿だった。

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