人喰いの森 -エピローグ みんなで起きて帰還を目指し始めたようですが
絶対法則達が城から脱出した後、こちらでもゆっくりと目を開けた人物がいた。
更地になった森の中、深い眠りから最初に目覚めたのはリリスだった。自分が今どこにいるのかを思い出し、飛び起きる。
「んーっ、そうだっ! 休んでる場合じゃな……っていっても流石に限界かぁ」
いきなりの襲撃で夜通しの戦闘、魔力も疲労も限界を超えていた。
「だからといって戦闘が終わった途端に一人残らず寝るのは油断しすぎよね……」
すでに太陽は空高く上っており、リリスの横には残りの3人が川の字で寝静まっている。
「って事はもう昼なの? 大変!! いくら何でも寝すぎ! 起きなさい」
先ほどまでとは打って変わり横のソウタを起こそうとする。
体を揺さぶられるがソウタは一向に起きようとしない。よほど寝覚めが悪いタイプの人間らしい。
「ん……あと五分……」
「何が5分よ……からもう十分寝たでしょうっ!」
最後に寝たリリスがとってきた焼け残りの大きな葉、それを布団代わりにしていたのだ。リリスは葉を握り抵抗するソウタから強引にそれを奪う。
そこへ剥がれた布団代わりの葉を取り返そうと手を伸ばして掴みかかり、
その手は見事にリリスの胸元を掴んだ。正確には掴んだと言うよりは平面的な凹凸に掴むほどの物は無かったが。
そして、それは触られた本人が自覚している。
「……んなにしてるのよっ!!」
リリスはソウタの胸ぐらを掴み持ち上げてその頬へ思いっきり平手打ちを放った。
強烈な音によりルナとソナタの2人も目を覚ます。
「んっ、何事ですか?」
「俺も分からん……急に寝ていたら頰に衝撃が……」
1.2メートル吹っ飛んだソウタが起き上がりルナに事情を告げた。ルナは何より、半分涙目のリリスが目の前にいたことで大体の事情は瞬時に把握出来た。
「このっ……寝起きだからって許される事じゃないわよっ……」
半泣きで怒りまくるリリスだが、ソウタ本人は何が何だが全く把握出来ない状況であった。とりあえず本人なりに弁解しようとする。
「まっ、待て……俺は何かつるっとした物に手が触れただけで……」
火に油を注いでどうする。と、ルナは心の中で思った。案の定、リリスはその一言で俯いてしまう。
ルナ的には激怒して怒るかと思ったのだが、つるっとしたの一言は怒りを通り越し、悲しみへと変換されたらしい。リリスは項垂れて地面に倒れこんでしまった。
「あのっ……リリスさん? 何を怒っておられるのですか?」
相当気にしているらしいリリスは顔を埋めたまま、
「……別に……今後の予定話しましょうよ……さあ……」
大丈夫、大きさなどこれからだ。と、フォローを入れようとしたが、余計傷口を広げるだけで逆効果だろう。やはり、ここはソウタ本人からのフォローが一番である。と言うのがルナの判断だった。
ソウタの耳元へそっと告げ口する。
「恐らく貴方が寝てる間に彼女の胸に触れたから怒っているのですよ」
ぎょっとした表情を浮かべ、ソウタは脳をフル回転させる。
まずいっ! 俺はまったく悪くない(と思うが)このパターンは初日と同じ…… 単純に謝っただけではこの様子では収まりそうにない。ならどうするか……謝りつつもリリスの機嫌を直す、褒め要素も入った一言を発なければならないっ!
この時、ソウタの頭をよぎった2チャンで見た貧乳フォローの一言が頭をよぎった。
「大丈夫だリリス! 貧乳でも需要はある!」
それフォローになってないでしょう!
ルナツッコミとは裏腹にソウタ本人はよし! みたいな表情でリリスを見ている。倒れていたリリスがその一言に反応しゆっくりと起き上がる。
「…………殺ス@16あっ5#……」
「ちょっと……リリスさん? 何でそんな憎しみに満ちた目で変な呪文唱え出してるんですか?」
直後に、リリスにより先ほどの5倍の距離を吹き飛ばされ、ソウタ本人は地面へ突き刺さった。
ーー「さて、今後の予定について話し合いましょう」
「そうですね。単純にこれは獣人族と魔族の問題では無さそうです」
「フゴ……フガ……(あの、そろそろ抜いてもらえませんか?)」
「ねぇ、ルナ。何でソウタは埋まってるの? ねえってば」
「ソナタ様……それは流石に本人が悪いので放っておいて構いません」
そうなんだ、という様子で特に気にする様子も無くソナタはルナの膝にちょこんと座る。
「まずは、ここまできたんだから、あんた達の目的は何なのか、教えてもらっていいかしら?」
「ええ、ここまで来たのですから隠し事は無しです。目的は勿論サタンの身柄の確保。可能ならば裁判にて魔族の領土を奪う。などの利益を得る為の戦いです」
「やっぱりそうなのね。だとしたら、森で戦ったあの女は何? 私はあんな奴は知らないわ」
「……こちらもあんな奴の事は知りません。人喰いの森には獣人族も近寄り難い場所なので」
「だとしたら、やはり私達の思い通りこの事件には黒幕がいるわ。第一あんな魔法陣、その人喰いは魔導師でないなら作れるはずが無いもの」
ルナは船が落とされた時、空一面に描かれた魔法陣を思い出した。あの時はそんな事を考える余裕は無かった。そもそも人喰いは男の筈なのだ。間違いなく裏に誰かいる。
「ならば、奴らの目的はなんですか?」
「お前らそんな事も分からないのかよ、考えてみろ簡単なことじゃねぇか」
横を見るといつの間にかルナの膝から動いたソナタに手伝ってもらって抜け出したソウタが泥だらけで座っていた。
「忘れたのか? 俺とルナは一度死にかけた。そんな窮地を救ったのは誰だと思ってる?」
その一言でルナとリリスの視線がソナタへと向けられる。何て事を忘れていたのか、とルナは自分の不甲斐なさを痛感した。
あの時のソナタの魔力、あれは明らかに常軌を逸していた。あの傷を完治させるとなると最上級の回復魔法が必要。それをソナタは謎の魔力で治療させた。
「つまり、奴らはソナタを狙ったんじゃないのか? あんな凄いことが出来るんならあり得るだろ。本人に自覚はないようだが」
ソナタ本人はキョトンとしてソウタの目を見つめている。
「どうでしょうか……その確率はあり得ますが、やはり情報が足りなさすぎます。ここは一度我が国まで行きませんか?」
「ちょっと! 私達はあくまで敵国同士なのよ? どうするのよ?」
その一言にソナタは一歩前に出る。
「大丈夫だよ。リリスもソウタも酷い事を沢山したのは謝る。でもそんな私を助けてくれた大事な人。何があっても手は出させないんだよ。だから安心して」
流石に王族の血なのか、その一言は先ほどのまでの無邪気な子供では無く、慈愛と安心感に満ちていた。
「……分かった。リリス、行こう」
その一言にリリスも頷き、それに呼応して一同は立ち上がる。
ルナが方角を確認し、一同はそれに続く。
が、その行き道を急にソウタが塞いだ。
「一体、どうしたのよあんた?」
「……腹減った」
「何言ってんのよっ! 食べ物なんてどっかの誰かが森を消し飛ばしたからここら一帯には何も……」
そう。そこにそれは偶然にあった。奇跡的に焼け残ったのか、元々炎に対する耐性があったのか。
リリスはそれを見て青ざめる。
「……絶対嫌そんなの食べれないんだからっ!」
そう、それは最初にこの森で倒した大蛇の丸焼けである。
ーー精神世界の深く、もう一人のそれは考えていた。そもそもおかしい。そう簡単に舵を弄っただけで人喰いの森などという危険地帯にそう都合良くつくものなのか。
それに最後の一言、魔女のような女はリリスによろしくと言っていた。その一言をソウタ本人も忘れている訳では無いだろう。言うタイミングを見計らっているだけだろう。
「この話……どうやら奥が深そうだな」
それは未知への興味からか、戦いへの興味か……もう一人のソウタは不気味に微笑んだ。
ヒャッホーテストが終わった〜
私の成績も終わった〜泣
評価、感想あれば是非お願いします。死ぬ気で頑張れます。




