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人喰いの森1-6  スベテヲクラウモノ


 「へえ。遅れて登場なんて英雄きどりなの?  かっこいい」


 小馬鹿にしたような笑みを浮かべながら少女は話した。


  「なあ、名乗れよ。名前も分からない相手と戦いたくは無い」


 一見警戒の目を浮かべる少女、しばしの沈黙が場の空気を緊張させた。


 「ロゼよ。まあ、どうせ直ぐに殺す相手に名乗っても意味は無いから嫌だったんだけど」


 「ねぇ、ソウタ?  でいいの?」


 ソナタが涙を零しながら俺の名前を呼んできた。その身体からは凄まじい魔力が溢れ出し、強大な威圧感があるのだが本人は意識していないようだった。


 「……お願い……ルナを助けて。  今までの事は謝るからっ! お願い!」


 そう言って頭を下げるソナタ。


 俺はソナタの頭に優しく手を当て、


 「さっきも言っただろ。俺は全部守る為に此処にいるんだ」


 ソナタの魔力に包まれているルナ。その横に落ちている剣を拾う。


 「ルナ、ありがとう。こいつは俺に任せろ」


 「だからぁ、気取ってんじゃ無いわよ!  人間がぁ!」


 突如彼女の指がこちらを指し、そこから音も無く黒い閃光が放たれる。


 が、それは俺の身体に当たる寸前で掌で軌道を変え、弾く。今度は掌から炎をこちらへはなって来た。


 「無駄だ!」


 炎だろうがなんだろうが魔力の込められているものなら切れる!


 炎を片手で切り裂き、ロゼのいた方を確認するがその姿は無い。


 すると突如、身体が異様に重たくなった。いや、重たくなったと言うよりはだるくなった。気分が悪くなり思わず座り込む。


 目の前の景色が歪み、異様な光景が目の前に見える。少女の姿がグニャリと婉曲した姿で何人もいるように見えるのだ。


 これは、幻影?  くそっ、本体は何処にいる?


 そして、次の瞬間それぞれが全て俺に指を向け、そこに魔力が集まって行く。


 「私の魔力を切れるのはそ手刀だけなんでしょう?  なら切れなくしてしまえば良いことじゃない」


 そう言っていくつもの光線が放たれる。


 避けるしかない!  水平にこちらを狙う筈、俺は急いで横に必死で跳ぶ。


 光線は俺の脇腹を掠め、横の地面に被弾した。


 横へ回避行動を取るとさっきまでの症状が嘘のように治った。


 ロゼは余裕の表情を見せている。


 「一体幾つの魔法が使えるんだ?」


 「魔法じゃないわよ。全て”スキル”」


 そう言ってロゼは地面に手を付けると地面が大きく湾曲し、巨大な手のような物を作り出した。


 「スキルは一人一つの筈だろ? 」


 「これが私のスキル『王喰帝王(スベテヲクラウモノ)』の力。相手のスキルを手に入れ、使う事が出来る能力」


 そうロゼが説明する間にも地面から巨大な手が完成し、身体が出来巨大な土で出来た巨人が現れた。


 「あんまり早く殺しちゃあ、試し打ち出来ないから頑張ってね」


 5mはあろうか、土巨人がこちらへ向け、歩きだそうとする。


 しかし、土巨人は一向に動かない。動かせないように止めているのだ。


 「こんなトロい物なら簡単に止めれ……」


 そこまで喋り、異様な気配を感じ、すぐ剣を構え直した。


 突如、巨人が爆発し、その破片が高速で飛散し、眼前に広がる。


 そして、ロゼの笑い声。


 「ここまで細かいならどうよぉぉ!?  全て弾ける?」


 大小、問わず巨大な石巨人の破片が頭上へ降り注ぐ。


  「違うな。弾く弾かないの問題じゃない」


 俺は向かってくる破片の山を前に俺は目の前の空気を剣でなぎ払った。


 と、同時に爆音が鳴り響き、一瞬、白い閃光が辺りを包んだ。そして、次の瞬間破片全てが粉々に消し飛んでいた。


 ロゼもこれには流石に驚いたようで、先ほどまでの余裕の笑みが消え、


 「……嘘よ、魔力の篭ったゴーレムの体を使った落石攻撃を……一撃で?」


 「終わりだ。お前じゃ俺には勝てない」


 「なっ……にを……言ってるの?」


 ロゼは両手で頭を抱え、ふらつきそうになる。先ほどの一撃に余程自信があったのか。


 否、


 ロゼの広角が広がり、突然に満面の笑みを浮かべながら、


 「最高じゃないぃぃい!!  これ、ねぇ、もっと試しても良い?  ねぇ、もっと試しても死なないよわよねぇぇ!」


 狂ってる。この世界に来て始めて感じた異様さ。ソナタにも巨大な悪意と殺意はあった。しかし、この敵は最早、目的や手段は無い。ただ、目の前のおもちゃを全力で壊そうとする。そんな子供のような狂気が表情に満ちていた。


 またも土から巨大な巨人が生み出される。しかも今度は二体、前後を挟まれてしまっている。


 「ねぇ、2体ならどうする?  さっきの攻撃はそんな広範囲に打てるのぉ?  ねぇ?」


 ロゼがそう言うと同時、二体の巨人の腕が轟音を轟かせながら持ち上げられ、俺に向かって振り下ろされる。


 あと、少し……


 巨人との腕の距離、役2m、目前まで迫ってくる。


 「いくわょぉ!  爆……」


 そこまでロゼが喋った所で突如、音が無くなった。


 先ほどまでの爆音も、巨人が腕を振り下ろす音も、ロゼの笑い声も。全てが一瞬にして静まり返り止まった。


 決して時間が止まったなどと言うわけでは無い。風の小さな音すら静まり返りった戦場で静寂が破られる。巨人もそれまでの動きが嘘のように芸術品のごとく静止している。


 「どんな気分だ?  身体の自由が全く効かないってのは?」


 俺の問いにロゼは勿論答えられない。顔の筋肉までもが最後に発した爆の一言のまま静止している。


 「気にしなくていい。直ぐに終わる」


 そう言って俺はルナの剣を構える。


 「……ぜ……か……ら……ど……く……?」


 ようやく声にならない声を絞り出したロゼ。が、既に時遅し。俺はロゼの目の前まで来て剣を構えていた。


 「単純な話だ。これは俺のスキルの効果。お前の動きを止める、いや、ここら一帯の”俺以外の動く物をコントロールした”ってのが正しいかな」


 「……な……」


 「違うんだ。そんな単純じゃ無い。俺のスキルは切れ味を上げるなんて単純じゃ無い。確かに魔力の篭った物なら魔力ごと切断出来る。とても便利な使い方だが、それもたった一部に過ぎない」


 相変わらず、聞こえる音は俺の声のみ。剣を振り上げ、


 「お前は俺の大切な物を傷つけ過ぎたっ!」


 光輝く閃光。


 俺はロゼの身体に全力を込めて剣を振り下ろした。


 が、刃は何事も無かったかの如く滑り落ちる。刹那、消え行く眩い閃光中で見たロゼの表情には不気味な笑みが戻っていた。


 「へぇ……良いわねぇ。”アンタのスキル”」


 「なっ……」


 「今度はこっちの番……」


 まずいっ!  反射的に感じた直感、この攻撃は受けてはいけないと!  背筋に悪寒と冷や汗が走り、避けようと思うと同時にロゼの真っ赤に染まった赤い爪が見えた。


 そして、ロゼの腕は俺の腹部にめり込み、そして、貫いた。


 「ぐうっっっっ!  ああっっっ!!」


 声にならない位の激痛が腹部に遅い、と同時に喉元から何かが大量に口の中にこみ上げてくる。


 こみ上げるそれを耐えきれず吐き出すと、大量の赤が俺の服を染めた。


 視界が徐々に薄れそうになりながら、必死に意識を保つが、耐えきれず、地面に俺の身体は崩れ落ちた。


 続く激痛とこみ上げる吐血の中、ロゼの声が聞こえる。


 「私の『王喰帝王(スベテヲクラウモノ)』の発動条件、それは相手の血肉を身体に取り入れる事。一度条件を満たせばどんな能力だとうと手に入れられる。それが私のスキル」


 髪の毛を掴まれ、強引に引き上げられ、宙吊りにされる。


 「このスキルがあれば”1位”だろうが、何だろうがそのスキルを奪える!  私が最強!!」


 相変わらずの発狂で叫びながら、ロゼは続ける。


 「アンタのスキルは魔力を切れるんでしょう?  ならアンタ自信のスキルも例外じゃない」


 馬鹿な……なら、何故最初から使わなかった?  ロゼは狙っていたってのか?  俺の油断するタイミングをーー


 引きちぎられそうな髪の痛みも腹部の出血と傷で分からない。


 最後の最後でやっちまったってのか?  ここまでか?


 ここでロゼを倒しても出血は止まらない。恐らくルナと同じように臓器まで達しているだろう。


 けれど、こいつを倒さなきゃソナタがっ……


 そんな俺の表情を見て、ソナタが悟ったように


 「ああ、アンタのお仲間も、しっかり殺してあげるから心配しなくて良いわよぉ。直ぐに私のお腹の中でバラバラで再開出切るわぁ」


 笑えない冗談だ……最早、身体を動かす力が入らない。やはり致命傷だったのか。


 ここまで……か?


 「じゃあ、改めていただ……つっ?」


 ロゼの髪を掴んでいた手が急に外れ、地面に身体が落ちる。


 そこで気づいた異変。


 俺の身体全体を白い光が覆っていた。それはルナと同じくソナタから溢れ出している白い魔力だった。


 そして、包まれているうちに凄い速度で身体の傷が治って行く。先ほど貫かれた腹部も魔法のように塞がって行き、元に戻ってしまった。


 「何よこれ……いいっ!  そのスキルが欲しいっ!!」


 ロゼはソナタに目をつけた様で、そのスキルを手に入れようとソナタの方へと向き直る。


 「行かせるかよっ!」


 黒い煙が地面を覆い、ソナタの元へ高速移動する寸前で捕まえる。


 「へぇ、良いわぁ。アンタはこのスキルを全く使いこなせてない!  私なら開けるっ!  この更に上の力をっ!」


 地面が突如揺れ始め、目で確認出来るほどにロゼは身体に魔力を込め続ける。

 

 「これはっ!  今までに無い強力さあぁっ!  まだまだ、もっと解放出来る!  これなら20……いいえっ、10番台並のスキルかもっ……」


 どんどん巨大になって行くロゼの魔力。


 しかし、突然にその魔力の高まりが止まる。


 そして突然、同時に何かがちぎれるような音が響き、ロゼの身体から血が噴き出した。した。目、口、そして、魔法をまともに使える訳でもない、俺にも分かる。


 さっきまでの威圧感、魔力が無くなっていた。


 「なっ……なんで?……うぷっ」


 吐血しかながらにロゼはこちらを鋭い眼光で睨む。


 「このスキルはお前では使いこなせないって事だろ。お前の負けだ、ロゼ」


 今度こそ、油断無く俺は剣を構え魔力を込める。


 「嘘よ、嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よっ!!」


 うわ言を吐きながらもロゼは自分の目の前に3色三枚の盾のような物を出現させる。


 だが、魔力の通ってる物なら切断出来る!


  「おおおおおおぉぉぉっ!」


 一枚目の盾、破れる!


 二枚目の盾、破れる!


 剣を振るう度、ロゼの作った盾は粉々になって消えて行く。


 「こ、こんな所で……」


 三枚目の盾、破れる!


 縦に一閃、剣で盾を真っ二つに切り裂く。目の前のロゼの表情には笑みも無く、また狂ったような表情も無い。只々諦めたと言わんばかりの脱力感極まる表情で


 「私が……また、負ける?」


 「終わりだぁ!!」


 今度こそ、俺の剣はロゼの身体を切り裂いた。


 




 

 

 






 

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