城の中にて1-1 異世界転生したようで嬉しいです。
「な、何だ? さっきまで家に居たよな? ここって一体何処だ?」
西洋風の部屋の壁は綺麗に装飾されていて、壁に掛けられたランタンから明かりがこぼれている。
部屋にはアンティークの暖炉やソファーなどが置いてあり、西洋の高級ホテルのような内装である。
息を吸い込みとりあえず深呼吸する。とりあえず落ち着けーよし。大丈夫。
落ち着いた所で、目の前にいる魔女姿の少女に向き合う。
むこうもそれに気づいた様子でこちらの様子を伺うように椅子に腰掛け、目線をこちらへ合わせてくる。
歳は見た感じ14、5で同い年か、それより若く見える。赤い肩まである綺麗な髪が特徴的で興味有り気に、しかし少し警戒しているようで向こうからの会話する気は無いように見える。
「 まずここは何処なのか、ご説明いただきたいんだが」
女性の目を真っ直ぐに見つめたまま聞いてみる。ダメだ何か変な敬語っぽくなってしまった。
彼女は少し驚いたような表情を見せ、口を開き初めて喋る
「へえ? アンタ意外ね。普通こんな場所に連れて来られた他の奴らは動揺の顔を隠さずに質問責めするのに」
「え? じゃあここは異世界って事でいいのか?」
思わず立ち上がり、彼女に詰め寄り、確認する。彼女は若干引き気味に後ろへ下がった。
「ちよ、落ち着いて! いきなりで悪いと思うけど、ここはアンタの居た世界では無いわ」
思わず笑みが零れ、笑が止まらない。
「フフッ、アハハハハ!! 異世界転生きたあぁぁぁぁぁ!! いやったー! クソババアとの縁も切れた!」
薄暗い部屋に響く笑い声。ちなみにもう女性はドン引きである。
「ちょ、ちょっと! だから落ち着いてってば! 」
「大丈夫だ! 俺は落ち着いている。ただ極限に嬉しいだけだっ!」
死のうとまで思っていたのだ。死ぬより酷い事とかあるのか。今は嬉しさで旨が一般である。此処に呼んでくれた人は誰なんだ? リアルに神だ。
「アンタ、ここに呼ばれたからにはタダ飯とか普通に暮らす為に呼んだんじゃないのよ? 余程元の世界に未練が無いの?」
「そうだ無い。全くない! 少なくともマシな事は確かだ 」
即答した。
その一言に女性はフフッといった様子で笑う。
「マシな世界ねぇー、貴方の思ってるよーな世界では無いと思うけれど」
憐れみのような表情を浮かべて言い放つと、椅子から立ち上がり俺に手を差し出す。
穴の中にいた時のような感覚は無く、よく分からないが生きているらしい。
実際女性の手を取った時には人のような温もりを感じたし自分の感覚もある。
「とりあえず貴方に今自分がどうなっているのか、何をすべきなのか、ここは何処なのか、疑問に答えるのは私ではないの」
薄らい笑いを浮かべ、彼女はそう告げる。
「じゃあ誰が説明してくれるんだ?」
誰か他の物が説明してくれるのだろうか。そんな疑問を浮かべて女性に問う。
「 分かってるわ。今から私たち魔族の王”サタン”が教えてくれる。心の準備が出来ているならついて来て」
そう言い放つ女性。 女性の口から出てきた”サタン”だの”魔族”だの恐ろしい単語が出てきて恐れていない訳ではない。
常人ならこんな理解できない場所に連れて来られてこれからサタンに合うだの言われたら気が気でないだろうと思う。
しかし、恐れと同時にそんな単語の中にはここは完全に自分が逃げたかった”現実”ではない事に実感が持てた
束縛された世界からの開放感とこれからの好奇心で俺の中は一杯になっていた。
「いけるなら早い方がいい。連れて行ってくれ」
少し口元が恐怖に勝る好奇心のせいか、にやけてしまいそうになりながらそう告げた。
「じゃあ、行きましょう」
そう女性が声を上げると同時に地面に魔法陣らしき物が展開され、光る。
「な、何だ?」
「だから落ち着いて。これはただの転送魔法だから」
呆れたような彼女の溜息が聞こえ、次の瞬間、目の前に現れたのは巨大な城。
白い壁で作られた100塀はメートル以上あり、その奥に見える豪華に装飾された門。綺麗に切りそろえられた木々や噴水。
その奥にそびえる真っ白いと同じく真っ白な城はまさに魔法の国にふさわしい。ホグ○ーツのようである。
「凄いだろう、俺の城」
突如後ろから聞こえてきた声振り向いた先にはさっきまでいなかった一人の男性が居た。
身長は俺と同じぐらいだろうか。高貴な貴族のような服を纏っているが外見は普通の人間のように見える。髪は黒くキリッとした目の青年
「 俺の名はサタン! 魔族の王でこの城の主だよろしくな」
青年は真面目な顔でそう答えた。




