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飛空挺にて1-4なんとしてでもこの敵を


 完璧だった筈だ。


 リリスを助ける準備は整った、策もあった。それなのに……


 助けるまであと少しで……


 何がいけなかったのだろうか。


 何がダメだったのか。


 どこで失敗がしたのか。


 リリスが倒れたのは俺のせいなのか。


 俺は一体どうすればいいんだ?


 また俺は居場所を失うのか。現実世界から逃げ続けて、ようやく手に入れたこの場所を、この世界を与えてくれた……リリスを……失った?


 あの二人はたったの数日過ごしただけの存在だ。しかし、ここの生活、ほんの数日ともいえない短い日々だった。けれど、間違い無く俺は楽しかった。そんな奴らが殺されていい理由はない筈だ。


 それで? このまま死ぬのか。只々殺されるのを待てと?


 そんな事は絶対に嫌だっ!リアルな死の感覚が再び体を巡る。死ねない体からの本能信号が俺の脳内へ溢れかえる。


 (ならどうする?)


 そんな自問自答の答えは反射的に浮かんだ。

 「殺すんだ。殺してでも、リリスを守る」


 今までずっと考えてきた。奪われるなら奪えばいい。そうだ。最後まで奪われ続けるなんて理不尽。弱者は全て奪われ、強者が全てを得る。こんな負け犬人生を、逃げ続けて手にした勝利を、こんな所で失う事は絶対に嫌だ!


 迷いは無くなり、呼吸を整える。脳内は冴え渡り、計画の計算を始める。 

 先ずは誰を狙うのか。こちらの情報は知られていない。圧倒的かつ、最大のチャンスは”不意打ち”


 この初撃で誰を狙うのか。甲板に見えるのは側近の女、ソナタ、見張りの男数人。頭数を減らさない事には不意打ちも防がれる可能性があるし、このチャンスを見張りの男数人に対して使うのは勿体無い。


 なので先ず、見張りの男を離し、かつ接近する。そして狙いはソナタ


 これには先ず理由が2つ。


 1つ目、単純な理由、防御力である。少なくとも鎧を着ている側近に対しての攻撃。俺の切れ味を増した手刀でも出来れは鎧を貫通するのは避けたいし、最悪避けられる可能性も有りえる。勿論、魔法と言う例外は常に考えておかなければならない。


 2つ目、可能性は低いがソナタに致命傷を与える事が出来れば人質にすることができるかも知れないと言う可能性。


 この世界でなら回復魔法みたいな物があるかもしれない。そうすればリリスを助ける事が出来るかも知れない。そして、ソナタを狙い、直接的に守れない状況なら、側近の女が庇わなければならないタイミングでの攻撃ならば側近の女には必ずダメージを与える事が出来る。


 自分に対しての攻撃なら対応出来るが、他人を守るとなると話が違う。問題はソナタ自身の強さがどれほどなのかと言う問題もあるが。

 どちらにせよこちらのメリットになることには代わり無い。


 そして、俺は気絶させた男の鎧を着て、エンジン室で発見した非常ベルのような物を押した。


 誤報により見張りの男をお引き出す為に。ここで側近の女が来ればかなり危険だが、おそらく君主の近くからは離れない可能性の方が高い。


 案の定、見張りの男3人をおびき出し後ろからの”衝撃”で倒す。


 看板へ上がると目に映ったのは、血に塗れた甲板にで倒れるリリス。


 余裕の表情、笑みで俺を迎えたのはソナタだった。まだ……まだだ、確実な攻撃距離までもう少し……5m、2m、1m、……まだ、まだだ殺意を出すな。感情は出さない。確実に、殺れる距離まで……あと……


 ソナタは口を開き、

 「邪魔だからこの死体を片付けて」


 殺れる!


 完璧なタイミングでの攻撃……だったのだが、これは側近の女によって防がれてしまった。しかし、成果はあった。側近の女の腕一本、肘より下は地面に落ち、赤い血が溢れている。


 そして、即座に俺は鎧を脱ぐ。防御力は上がるかも知れないが、この甲板で動きづらいのは致命的な為だ。


 (頭を冷やせ。感情的になるな。初撃はとりあえず成功)


 ここからだ。


 側近の女の肘だった部分からは血が止まらず溢れている。止血しなければ間違い無く致命傷。止血すればソナタを狙うチャンスができる。確実な隙が生まれる筈、


 「少年、ミスリル鋼で出来た鎧を手刀で切り裂くとは。それがスキルか? 立派な物だか失敗だな」


 側近の女は落ちた腕を眺めながらに話す。


 ソナタの方を確認するが、今の所問題なさそうだ。一瞬の衝撃に対応できていないのか。甲板に座り込み、焦点が合わないせいか目が虚ろである。


 「不意打ちは見事です。しかし貴方は誤算をしている。一つは」


 そう言うと側近の女は傷口へ無事な右手かざし、青白い光が迸った。


 2秒、と言った所か。女の傷口の出血は止まってしまったようだった。


 「出血によるダメージを狙ったなら残念でしたね。私ぐらいなら回復魔法を使えばこのぐらいの傷は問題ありません」


 単純だったか、そう簡単には行かないか。そりゃ回復魔法があるとは思っていたがここまで早いとは。俺の攻撃でも確実に急所を捉えるか、即死を狙わなければこちらの攻撃はあまり効果が無い。


 「騎士として名乗りましょう。見知らぬ異世界の少年よ。私が名はシルバリト王国騎士長ルナ・アルバート」


 ルナと名乗った女は腰に付けている長剣を抜き、構える。


 「見知らぬ少年よ。この世界へ来たことを悔いなさい」


 そう告げた後、ルナは一気に俺との距離を詰める。そして、頭上から放たれた剣の一線。


 反射的に俺は右手で剣を掴みにかかった。避けようとはしたが、体が追いつかない。


 刹那、剣と剣が触れ合った時の金属音が響きルナの剣は止まる。幸い、俺の腕が切られる事は無く、鋼鉄の剣は素手で受け止める事が出来た。


 (よし。俺の”切れ味”を上昇させるスキルで相手の剣を受け止める事は出来る)


 しかし、ルナの剣そのものを切断するとこは出来ないようだった。普通の鋼鉄では無いらしいな。


 すかさず横からの剣にも左手で受け止める。かなりの速度の剣撃だが、見える限り反応することは可能。これなら……


 何度か剣を受け止めるとルナは一度距離を取った。


 「なるほど。どうやら剣で直接貴方を切るのは難しいようだ」


 とりあえず、一回の防御は成功した。しかし、こちらから攻撃する余裕は全く無い。防戦一方が精一杯だし、これほどの相手には”衝撃”もダメージを与えるのは難しい。


 こちらからの攻撃手段を見つけなければどちらにせよ勝ち目は無い。眠らせた男達がいつ起きないかわからないし、援軍を呼ばれれば負けは必須。それまでに短期での決着をつけなければ。


 「貴方は忘れてはいませんか? 私はまだ”スキル”を使ってはいない」


 こちらの不安要素。そう、相手はまだスキルを使用していない。まだ戦いはここからだ。


 「出来れば使いたくはありませんでしたが……状況が状況。貴方は使うに価する相手のようだ」


 『颶風(ウインド)高原(ハイランド)



 そうルナが告げると同時に甲板に風が吹く。

 風?ルナのスキルは風を起こすスキルなのか?次第に甲板へ吹き付ける風は勢いを増して行く。


 突如、ルナが左手を振り下ろす。と同時、左方向から強力な横風が巻き上がった。


 避けようとするが、風は横から壁のように襲い掛かって為、狭い甲板では避けられない。そして、風の壁は俺を空中へ振り上げた。体が甲板から4m程度浮き上がる。


 やばいっ! これは……


 「空中へ舞い上がった貴方は身動きが取れない」


 ルナが剣を下で構える。


 スキルで防御するか?いや、空中では明らかに両手以外の部分を狙われる。相手もそこまで考えてない筈は無い、なら……


 無防備に落下する俺はルナの剣によって切り裂かれた。腹部を斬られ、激しい痛みと血が溢れる。


 まだマシで済んだ筈だ。本来なら体がまっぷたつにされる所だったのだから。


 「おかしいですね、本来真っ二つになってる筈なんですが。貴方何をしたのですか?」


 よく言ってくれる。腹部の傷は深くは無いが、かなりの血が出ている為、止血の必要がある。先ほど鎧を脱いだのは失敗だったか。


 先ほどまで敵に期待していた傷をこちらが負うとは。勿論回復魔法などは使えない。


 どうやって致命傷の剣を避けたか


 なんてことは無い。ただ剣が当たる瞬間に自分の体に対して”衝撃”を使っただけだ。単純な技だが、原理はその名前の通り衝撃を物体に与える為、俺の体は空中ながらにルナの致命傷を避けれた。


 ルナは一瞬驚きはしたが、特に変化無くこちらは圧倒的不利。俺の方へ左手を向ける。


 左手の方向から風が吹くのはさっきので分かった。避けようとするが……後ろへ動けない。


 それ所では無く、最早左右上下が風の壁で囲まれていた。


 最早、この場にに逃げ場は無くなった。


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