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第三話:宝

前回のあらすじ:

翌日、エドーはジャックから次のある宝を盗むための話を聞かされた。それは、なんとあの‘世界の伝説’に関するヒントの宝はある者が持っていた。その名は、ブルーノ伯爵。伯爵が住む町に向かうため、飛空挺に乗っていくタイグーニル団。その町にはバザーが行われ、作戦に好都合なものだった・・・。


タイグーニル盗賊団は飛空艇に乗って、バサーム町に着いた。それは、盗賊頭であるジャックはその町の支配者当然のブルーノ伯爵が持つお宝、あの‘世界の伝説’に関する手掛かりの宝を盗むためにやってきたのである。バサーム町は、べリアーク町に似てヒューマロ族が多く住んでいる。商人や運送などの仕事を持つ大半な人々は、ほとんどマルバード族が仕切っている。そのため、毎年に何回かバザーが町中で行われ、あちこち町から来た商人達はこの町に集まるという。だが、賑やかな祭りの奥に潜む影で、盗賊達がある作戦を実行中だった。


風がそよそよと葉を揺らし、長く並び立つ木々。昼間なのに、怪しい雰囲気が漂う大きな屋敷。バサーム町では、お祭りのようなバザーが行われ、人々がざわざわと賑やかに集まってくる。一列に並ぶ店には、多くの町の人達や観光客、商人達がいる。大勢な人込みの中に、ジャックとその他の手下達はやっとの事で目の前にあるブルーノの屋敷に着いたが、屋敷前の門にいる何人の警備たちに引き止められた。当のジャックは、何もなかったように偽の身分証明書を警備員に見せて、観光団と名乗った。ジャックの背後についてくる手下達は男女老人という格好した変装しており、ジャックにつられて観光に使うカメラやバックなどを持ち歩いていた。思わず彼らは警戒を張るものの、警備員達をちらちらと何度も様子見していた。それは、盗賊達は心から正体にばれない事を祈るだけである。だが、しばらくして警備員から説明を受けながらも屋敷に観光することに許可された。最後に門に入ったジャックの最後尾についていた手下である男は、突然背後からある一人の警備員が呼びかけた。

「おい、そこの観光客団たち!それともう一つなんだが・・・。」

一瞬ジャックと手下達は心臓が破裂しそうな緊張の表情を浮かべると、一斉に振り返った。

――しまった!これでも、ばれたのか!!?

初めて焦りを感じたジャックは内心でそう呟いた。心に迫るたびに、額から汗が伝わる。だが、その警備員はなぜか自分の顔を指すと、静かにつぶやいた。

「俺もまだ新入りだけど、ぜったいにブルーノ伯爵さまの大切なコレクションを触れないてくださいね。この間、別の観光客団がそのコレクションである壺を触って、注意する説明をしなかったのでカンカンと先輩に怒られた。もちろん今後、また先輩に言われたら、責任に取られちゃうからね。まぁ、それはともかく・・・。気を付けて、楽しんでください!」

そう言い残したその警備員は自分のポジションに戻るために、その場から立ち去った。警備員達からの警戒をやっと逃れた手下達は、ほっと安心せずに、未だに固い表情を浮かべながらジャックの後についていく。もちろん、当のジャックは額に一筋流れる汗を拭くと、大きく呼吸して屋敷に入った。あの緊張感から逃れた安心感になったかのように、今度こそ気を引き締めて屋敷の出入り口に入るジャックと一味であった。


「どうやら危うくばれたらしいわ、親分さんも。」

そう言って振り返ったのは、ミシェルだった。エドー達がいる森の中ではなく、屋敷から見下ろす高台の上にいた。ジャックの作戦の通りに、ミシェルとクンジはその高台から屋敷や町の様子を見ながら待機している。

「親分はともかく、チビ達がうまくやらなきゃ意味なーいし。でも、俺達もここで暇つぶしがよ?」

そうつぶやきながら、望遠鏡で屋敷を見下ろしていたクンジだった。そこで、ミシェルは腕組みして顔をそむけた。だが、固い表情を浮かべながらも、口もとが微笑んでいた。

「でもま!あの子達もなんとかできると、私は思うわ。なぜなら・・・あのチビのことだからね。」

「そりゃ、あのチビならあのコンビにとっては世話が焼けるほどですがよ。でも、珍しいですな。まさかあなたが心配しないというのは。親分以外は・・・・」

「なーに。私はただそう思っていただけ・・・。さて、親分の合図もそろそろ来ると思うわ。じょら!仕事をサボると、親分に言いつけるわよ。」

「はいはい、了解がよ!ミシェル譲さん。(――やっぱ、こいつだけは逆らえねェな。おまけにここで本性を現したら、さすがの俺も敵わないからだがよ)」

そう言いながら、内心で冗談を繰り返すクンジだった。突然ミシェルは立ち上がると、腰に手に当て、屋敷を見渡した。そこで、クンジは尋ねた。

「どうしたんですか、ミシェル譲さん?」

「何かおかしいと思わないの?そのお宝が、敵の屋敷にあるのだから、重要な仕事なのは分かっているけど・・・・。こんな作戦がまさか私達全員で盗みに行くのも、雲をつかむような宝を取りに行くのも、あんまりにも話はうますぎるわ。それにあの親分、いったい何を考えているかしら?」

「マジがよ・・・。でも、俺はいつでも親分を信じるがよ。たとえ相手の罠だと知っても、そこら辺の宝をいただけばいいじゃねェのか?盗賊らしく、とんずらすればいいがよ。」

「まぁ、いいわ。とにかく私達もまだ仕事が残っているのよ、早く行くわよ!」

「ういーっすがよ!!」

ミシェルは背を向けると、クンジと共にその場から立ち去った。


一方、チビと呼ばれるエドー達は屋敷の裏から忍び込んでいた。屋敷の表なら、ジャック達のように警備員に引き止められるが、屋敷の裏なら、警備員が一人、そして二人しかいないかった。だが、もうすぐ目の前の屋敷の裏で、森から抜けた三人達はすぐに茂みの中で隠れていた。だが、エドーは我慢できずに茂みを出ようとしたところ、ベルークに引き止められた。

「やっぱそう来ると思ったぜ。でも、なんていちいち、ここで待ったなきゃいけねェんだ?面倒だし・・・・・」

「そう早まるな、チビ!まず、あそこでうろついている警備員達をどうするかを考える必要はある。たとえ、ここで殴り倒しても、また別の人に見つかったら余計騒ぎが起こって、警備がさらに固くなる。また親分にどうされるのか・・・・。」

ベルークは厳しい顔でエドーをにらむと、エドーの背後にいたホンジは口を開いた。

「それで?これからどうすればいいんだ、ベルークよ。いつまでも、おれらがここにいても親分に申し訳ないぜ。」

「・・・しょがない。ホンジ、チビ!こいつらはお前らに任せる。俺はもう一度図面を確認しないとな・・・。だが、なるべく静かにな。」

ベルークはポケットから丸めた長い紙を取り出すと、ゆっくりと広げた。それは、屋敷内の図面であった。昨夜ジャックから頼まれた極秘仕事で、ベルークとホンジはやっとの事でこの屋敷内の仕組みである図面をどこかに盗み出し、今回の作戦を立てた重要な図面である。ホンジとエドーは顔を見合わせると、互いに頷いた。突然ベルークの目の前から風のように走り出した。ホンジとエドーと左右に分かれて、音もなく茂みの中で待機していた。そこで、ベルークから少し離れたホンジはポケットからなにやら小さな丸いボールを取り出し、すぐに二人の警備員の近くまで投げた。とんとん、とボールが弾む音を聞こえた二人の警備員が慌ててその音の頼りに駆け出した。すると、茂みの近くにあったのは単なる小さなボールだった。一人の警備員はそのボールをまじまじと見ると、隣にいるもう一人の警備員の男に話しかけた。

「おい!なんだこりゃ?そのボール・・・いったいどこから降ってきたんだ?」

「だぶん、あそこの森から出てきたじゃないのか?おそらく不審者がいるかもしれない。行ってみるか?」

「あっ、でも待って!こういう時というのは、やっぱ誰かが仕掛けてきて、その隙に背後から何者かが忍び寄る、とか・・・。まるで罠みたいに・・・」

「そんな、まさか・・・な」

とその警備員は笑った。その時、突然背後から人の声がした。

「だよな?気付くのも遅いねェ、おじさん達も。」

その不敵に笑う声が背中から聞こえた刹那、二人の警備員は後ろに振り返る同時に、背後から飛び襲いかかった何者かに、同時に蹴り倒された。それは、エドーの見事な二段蹴りを後頭部に決められたのである。顔面を地面に強打した二人の警備員たちは、悶絶したまま二度と起き上がらなかった。エドーは振り返ると、さっきから茂みに隠れて、図面を読んでいたベルークとあのボールを拾うホンジが姿を現した。

「さすがのチビだぞ!見事な蹴りでしたな、えーい?また‘騙し蹴り作戦’。・・・いつでも上出来だ。」

そう言ったホンジはエドーの頭に手を置くと、二人は笑った。ベルークは相手を念入りに、二人の警備員達を手近な木の幹に縄で縛り上げると、いつまでも有頂天に続いているエドーとホンジに向き直った。

「さーてと・・・・。ここで、もたもたする暇はないな。(図面を取り出し、二人の前で広げると)もう一度、この図面で侵入作戦を説明する。ホンジ、説明を。」

「はいはいっと、相棒。チビ!分かっているだろうが、お前の素早い足で屋敷(屋敷を指しながら)の最上階である三階まで登れ!おれらはあとで合図をしたら、すぐにお前はいつものようにとんずらするぞ。もし、お前がその宝を盗んだ時点でな。おれらはその図面通りに、屋敷内にいる親分達と連絡して、すぐにとんずらするぞ。もし、そこで親分やおれらの正体がばれたらな。とにかく!お前はあの図面の通りの道に進み、あの部屋で宝を盗んだら、ここでおれらが待っているからなぁ。急げよ、チビ!」

「おうよ、任せてとけって。あとは、頼むぜ。」

そう言ったホンジはポケットから鉤爪に付いていた長細い縄を取り出した。それをエドーに渡すと、互いに頷いた。そして、二人がエドーのそばから離れるとエドーはその縄を弧のように思い切り振り回し始める。突如縄が屋敷の壁に向かって勢いよく投げ飛ばすと、屋敷の頂上にある鉄の柵に引っかかった。安全を確かめるために、縄を引っ張り出したりすると、エドーは二人に向き直った。

「じゃ、あとでな。」

そう言い残したエドーは、縄をつかみながら壁に向かって足をゆっくりと踏み出した。その瞬間、エドーの身体は垂直に立つ壁の表面を、まるで地面でも歩くようにすたすたと縄をつかんで登って行った。エドーの様子を見守っていた二人は、いまや無事に屋敷の三階の窓に着いたエドーを見て安心すると、その場から急いで立ち去ったのである。


屋敷内の電燈は明るかった。廊下には、端に一列と並ぶ花瓶や絵、さまざまな装飾品がある。辺りの人の気配がなく、静かな雰囲気が漂う。あんまりにも静けさだったため、慎重に廊下の奥に進もうとする小柄の人影が歩いている。エドーだった。やっとの事で窓から忍びこんだエドーは廊下の真ん中だと気づき、ベルークに言われた通りにある場所を捜していた。彼らが求める宝は、この屋敷の三階にある伯爵の書庫の部屋に隠しているという。エドーはそれを知ったのは、盗賊団の情報源であるベルークによる報告だった。窓から入り込んだエドーは、いつもの調子と違って、肌までもビリビリと緊張感が沸いてきたようだ。

「確か、あそこだったっけな?ずいぶんと怪しいもんだぜ、この屋敷も。(――とよりも、うまく行きすぎだっての)」

そう低く独り言を言うと、エドーは壁の左角を曲がった瞬間、急に立ち止まった。急いで背を壁に寄りかかり、横目でゆっくりとその角の物陰から何かを見つけた。そこには、たった一つしかない部屋の扉が奥にひそむ。エドーの脳裏からベルークが言っていた事、その部屋は間違いなく書庫であったと改めて気づいた。だが、その扉の左右には、警備員が見張っているのであった。

――やっぱ、宝は邪魔者が付きものか・・・。出入り口はどう見てもここしかないし、あの奥に窓ですらねェな。ベルークの言うとおりに、あんま、ここでもたもたする暇はねェーみたいだな。

エドーは警備員を見たとたん、かなりと厳しい状況だと内心でつぶやいた。なぜならここでいくら殴り倒ししても、宝を捜すのにも時間がかかる。その間に、援護が来たら、もはやあとは時間の問題だけになるのであった。その時だった。エドーが来た廊下から誰かの足音が近づいてくるのを聞こえた。誰かとは判断できなかったが、おそらく警備員だろう。エドーはもう一度確かめるために目を静かに閉じ、耳をさらに澄ますと、辺りを集中した。普段のエドーがそんなに冷静的な判断を持つ持ち主ではないが、気配を感じることは誰よりも敏感だった。コトコト、とその足音が近づく度に、エドーは少しずつ焦りを感じはじめ、心臓の振動がドクンドクンと徐々に速くなってくることが聞こえてくる。エドーは目を開けると、チッと舌打ちをした。


「ずいぶんと早いな、もう交代の時間か?」

向こう側の廊下から来た一人の警備員の姿を現すと、扉の前で見張り中の左側にいる警備員が言った。

「あ、はい!そろそろ時間なので・・・・。」

その警備員が扉の目の前にいた見張りの二人の警備員に慌ててそう告げると、もう一人の右側にいる警備員が頷いた。

「分かった。あとは、よろしくな。本当にこの見張り仕事もいいかげんに疲れたし。それじゃ、あとでな。」

そう言い残すと、大きく伸びをしながらその場から立ち去った。左側の警備員が頷くと、その警備員に向き直った。

「それじゃ、今度お前の番だ。」

「えっ、はい?」

「うん?なんだ、まさかお前もまだ新入りなのか?・・・しょうがないや。さっきのあいつも二カ月前の新入りだったからな。それにしても、最近この屋敷も、どんどんと警備員を募集とは・・・。だぶん、最近の世の中も危なくなったでことだな。でも、先輩であるおれに感謝しな。なぜならお前が新入りだから、なおさらだ。まず、お前は書物の整理や確認をしてほしい。本当はおれの担当だけど、新入りであるお前にまかせる。おれはここで見張るから。整理ぐらい、できるだろう?」

「あ、はい!もちろんです、先輩!ぼくに任せてください!」

その新入りの警備員は頭を下げると、扉をあげた。中に入った警備員は、振り返ると先輩である警備員は「それじゃ、あとはよろしく!」と言って扉を閉めた。扉を閉めたせいか、突然辺りは薄暗かった。だが、目の前が大きな書庫があったことに気づく。部屋全体に並ぶ書庫、壁に据え付けられた棚にはぎっしりと本や巻物などが並んでいた。新入りの警備員は念のために電気をつけようと思ったが、そのスイッチをつけようとしなかった。警備員のぼうしを外すと、銀色の髪の毛が逆立つ。その警備員の正体は、なんとエドーだった。いつのまにか警備員に変装したのか、あの時廊下での出来事だった。

それは、警備員だと分かっていたエドーは、幸いにも一人だったため、密かに殴り倒すことができた。そこで、エドーは見張りの警備員の事を考えた挙げ句、殴り倒されて気絶したその警備員の制服を奪いながらも、うまく本物の警備員のように芝居したのである。危うくばれそうもなく、警備員達は単純だったため、やっとの事でこの書庫に入ったのであった。

「本当、こんな芝居ぐらいで騙されるとはな・・・。取りあえず、あいつらに一つぐらい感謝しないとな。さてと、今度こそお仕事の時間だ。」

さっきの危機を逃れて安心したエドーは、周りに並び立つ棚には目もくれずにベルークに図面で教えてもらったとおりに奥に進んだ。

「ベルークはここからだと知らないというけど、ま!自分で探すしかないか・・・。いったいどこかな?うん?」

エドーはあちこちと部屋中で探し回るうちに、ある棚の上に他の本とはわけて置かれていた一角の本を見つけ出した。

「なんてこの本だけ出ているんだ?」

エドーはその本を取った瞬間、突如本棚が動いた。徐々にゴトゴトという響く音が部屋中で伝わり、本棚自身が扉のように回転した。「わぁ!」と叫んだエドーはそこから少し離れると、その本棚は開いたのである。それは、隠し扉でもあった。それに気づいたエドーは、驚きの表情を浮かべながら、まじまじと見るばかりだった。

「マジか・・・よ!まさか、隠し扉とは・・・。宝の話、親分の言うとおりありそうだな。その奥に・・・。うん!?」

エドーは扉の奥へと入ろうとしたその時だった。奥から誰かの走る足音が聞こえ、エドーに向かって駆け出してくる。扉の奥は真っ暗で、肉眼では見えなかったエドーは確かめようとした。突然人影が身を乗り出してエドーに向かって走り出したの気づいた。目を見開く瞬間もなく、エドーとぶつかった。

「わぁ!!なんだ・・・。って、えーっ!!!」

エドーは勢いよく吹き飛ばされたすぐにエドーはほこりを払いながらも立ち上がると、顔を上げた。思わずそのぶつかった相手の姿を見て驚いたのである。そこには、息を切らせながら、力もなく姿勢を崩した少女だった。身体全体に白いマントに覆いかぶせて、頭上にフードを被っており、その少女の顔を伺えれなかった。だが、その少女は少し顔を上げると、ツヤツヤとしたきれいな茶色の長い髪の毛を伸ばし、右耳から肩までの細長い付け毛がついてあるのを見えた。ノースリープで胸のマークは針金のような紐で縛り、両腕にベルト付きのリストカバーをしていた。少女は立ち上がると、マントが少しつれ落ちた。ソフトな長いパレオのようなスカートを着ていたのははっきりと見えたのである。ようやく事態に戻ったエドーは眉をひそめると、その少女をにらみつけた。

「って、おい!?なんだなんだ?いきなりぶつかるとは・・・・・。(――まさかこの屋敷の人間か?そうだと知ったら・・・)」

「・・・・!?また追っ手か・・・」

エドーの警備員の姿を見て、ここの者だと勘違いされたらしい。その少女は嫌そうな表情を浮かべて背を向けようとして、慌ててその場から逃げ出そうとした。だが、次の瞬間。エドーはその少女の腕首をつかむと、強く引っ張った。突然に腕につかまれた少女は、青白い顔でエドーをにらみ返した。

「な、なにするの!!は、離して!」

思い切り悲鳴を上げようとした少女は、突然エドーの手に口を塞いだ。だが、その少女はひどく苦しげな顔をしてかぶりを振ったり、エドーの手から振り払おうと必死だった。混乱に落ちたその少女に対して、エドーは歯をむき出しながらシッと息を吐いた。

「シッ!静かにしろっての!大声を出したら、俺まで捕まちゃうから。ほら、頼むから!俺も、今大変なんだぞ。あいつらに見つかると、宝盗みところか・・・」

エドーが慌ててそう言うと、少女は一瞬、「えっ?」と疑うような表情に変わった。やがてエドーに対する警戒を解けたように抵抗をやめると、エドーは手をその少女の口からそっと離れた。だが、腕はまだつかまったままである。その少女は厳しい表情を浮かべると、エドーをにらんだ。

「ここは、いったいどこなの?どうして私が・・・・」

「はぁ?俺も訳分からん!お前こそ、ここの人間じゃねェのか?それについてだが、お前?誰なんだ?宝って本当に・・・]

エドーが言い終わらないうちに、突然さっき少女が出てきた隠し扉から無数の足音が近づくのを聞こえた。どうやら隠し扉から何者かが急いでこちらに走ってくる模様だった。その足音を聞いた少女はエドーの腕を振り払おうとしていた。まるで、誰かに追われていたように・・・。そこで、エドーは一瞬にその少女の腕を離した。なぜなら、ここで言い争っても意味がないから、とそう判断したのである。その少女は一瞬にエドーの顔を見て戸惑ったが、やがてエドーから顔をそむけると、無言のまま走り出した。扉を乱暴にあげると、外に立っていた先輩の警備員が、呆然と振り返った。唖然とその瞬間を見守っていたエドーと外にいた警備員は、少女が書庫から飛び出して廊下へと走り続けるのを見ていた。だが、突然隠し扉の奥から何者かの姿がこちらに近づいてくるのを見えてくる。

――ったく!なんて次から次へとまた面倒くせェ事に巻き込むんだ!?それに、どうすればいいんだっての、これから・・・・。

その瞬間、もはや焦ってしまったエドーは内心で迷っていたのである。ここでやつらに捕まられるか、それとも・・・・。



人物紹介〜タイグーニル団のメンバー達:

ジャック・ハウロール(61歳、男)=盗賊団の頭で、エドーの育て親的な存在である義理と人情を守る義賊。自称は義賊として宝を盗むが、その部下たちはほとんどならず者や泥棒が多く集まる。そのため、常に部下とは厳しく、頑固な性格。だが、その裏腹に、部下達を暖かく眼差しや優しさに満ちていている。

ベルーク・クレイト(29歳、男)=常に沈着冷静で頼りになるリーダー格を持つ性格。ジャックの右腕として情報収集や作戦立てを担当するポーカーフェイスで、エドーの兄貴分として慕われる。時に辛辣な言葉を口調し、長年の相棒で行動派のホンジとは対照的に寡黙の友である。

ホンジ・オルディ(28歳、男)=エドーよりも前向きで明るい性格。ジャックの左腕として、仕事の準備や仲間集合などをかけ、場を盛り上げる賑やかな役を自称するが、ベルークから注意されるほど。エドーにとっても兄貴分で、エドーと気が合う。常にベルークとは行動を共にすることが多く、二人三脚のような仲。


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