第二話:盗賊団
前回のあらすじ:
主人公のエドーは盗賊として、昨夜この町の家主で悪党なゴルーミの屋敷で宝を盗んだことで、翌日に一時的の有名な噂に流れた。エドーが所属している盗賊・タイグニール団のアジトである酒場で、親分のジャックがその事で手柄を立て、エドーを一人前の盗賊(義賊らしいが)として認めたらしい。そこで、エドーが前々からジャックとの約束が今日果たしたため、次の宝盗みの件で仲間を入れてほしいという願望した。同じ盗賊仲間であるベルークとホンジも頭を下げたまでも、親分にもお願いする事に。そして、頑固だったジャックはそれを認める事に・・・・。
翌日の朝、酒場は静まり返っていた。あれだけ昨日に、わいわいと騒いていたならず者達はここにいない。バーテンはカウンターを布巾で拭くと、あちこちの小さなテーブルは輪のように置いていた。小さなテーブルに囲まれた中心には、広々とした床。そこには、数十人かの盗賊達は集まっていた。エドーは相変わらずマントを着て、フートを被っていた。表情からうかがえないが、腕組みをして周りの人達の様子を見ていた。エドーが見渡す限りでは、カウンターの所で立っているベルークの姿が見えた。床の上であぐらをかいて座るホンジもいれば、テーブルの上に座って欠伸をするクンジもいる。クンジはホンジの幼なじみで、はげ頭が特徴である明るい人。彼らの年が近いこともあり、エドーの感覚をよく理解してくれる兄貴分のような身近な存在である。だが、よく子供扱いされるが親しい友人でもある。気が付くと、煙草を吸って壁の隅で、寂しさを漂いながら一人で立つ女性がいた。どうやらこの盗賊団では紅一点であるらしく、近づく者はいないという。その他の人達は、雑用のような手下達だが、エドーとは長年の顔見知りである。彼らは、親分が来るのを待っていた。エドーは待つのに疲れて、思わず欠伸して寝ようとした。その時、突然外から出入り口を乱暴に開くと、周りの人達はその出入り口に一斉に注目した。そう、彼らの盗賊団の頭であるジャックが現れたのである。
「よーし、お前ら!!今日の仕事の件を説明するぜ!今日は今までよりも、もっと過酷で大変な仕事だ。志をしてよく聞け、じゃが聞いて驚きなよ。」
ジャックは真ん中に立つと、辺りを見渡した。周りの人達は、自分の親分を視線を注ぐ。だが、エドーだけは欠伸をしながら、呑気な口調で口を開いた。
「親分!またどうせあの屋敷に忍び込むでしょう?大した・・・」
「こら、エドー!よく、人の話を最後まで聞け!」
「はいはいっと、親分。」
ジャックはエドーのぶっきらんぼな態度を見て、思わず怒鳴り返そうとした。だが、近くにいたホンジはジャックの背中を突付くと、小さな声でささやいた。
「親分!チビをほっといて、話を次へ・・・」
「ああ、そうじゃった。いいか、お前ら!次の仕事は、ある宝を盗むこと。じゃが、それが実在するかは、不明じゃがな・・・。どういうよりもなんだが、まずお前らは‘世界の伝説’の話を知っているよな?」
「ああ、俺も聞いた事があるような気が・・・。」
「そういえば・・・。あの伝説の話だろうがよ。世界創造からの争うをある力で治めたやつでしょうが」
ホンジがなにげに言うと、クンジは心当たりがあるかのように答えた。それを聞いたあちこち周りの者達からざわざわと騒き始めた。そこで、エドーは手を上げて、質問の確認するためにジャックに尋ねた。
「‘世界の伝説’って、昔三つの世界に分かれていた三つの種族が互いに争いをして、その時に神様がいたんたっけな?神様は、‘時のなんとか’を創って、時と共に世界を一つになって、争うを終わらせたというおどき話だろう?」
「おどき話までではないが、ま!そうじゃな。‘時の魔術師’と呼ばれた時の力を持ち、時代が流れるごとに、世界はこうして一つなった。じゃが、その伝説の話は、実在するかはどうかは・・・。とにかく、わしはその事を興味を持ってな、それを調べるうちに、わしのある古い友がある事を見つけた。その伝説の中に、何かお宝のようなものがあるかもしれないと言っていた。その‘時の魔術師’は時の力を持っていたから、何か遺産のような宝があるかもしれないと確信したのじゃ。だが、残念ながらこれからわしらが盗むのは、その宝に関する物のヒントじゃ。なぜなら、いくらわしらでもそれに関する情報が少すぎる。」
「でも、それは伝説だろ?ジジ・・・じゃなく親分!」
「だからわしはそれが実在するかは、不明だと言った!じゃが、伝説の宝などがこの世界に眠っていることが確かなんじゃ。わしの考えではな、たとえそれが伝説だと知っても、あり得ないと言われても、それを捜す価値があるじゃろう?それが盗賊というもんじゃが」
「なるーほど。でも、ちょっとまった、親分!!だって、それは伝説の宝に関するヒントなら、どうやって見つけれ・・・」
「じゃから、話は最後まで聞け!わしの情報によると、ここから山と森を抜けてすぐに‘バサーム(町)’にある金持ちな貴族、ま・・・あの悪党なゴルーミの友人らしいが、その‘ブルーノ・ベン=ハック’という伯爵が持っているらしい。その男の屋敷に保管していて、自分の美術品や貴宝などをコレクションとして集めていると聞いていた。だが、やつのコレクションは世界中でいろんな所で、勝手に盗んだだげなのじゃ。その中に、その‘時の魔術師’の遺産に関するヒントの宝があるのじゃ。やつらはそれがそんなにすごい宝だと知らんが、かなりと値段が高くつくと思われた貴宝でな、もちろんやつらの警備は厳しい。じゃが、そんな事でわしらはくだばる盗賊団・・・じゃなく義賊として、あんな宝を手に入れるためなら、手段を選ばぬ悪党から盗み出しに行くのじゃ。あの伯爵もかなりと冷酷な男でな、なにせよあのゴルーミの仲間。あいつらに捕まったら、おしまいじゃ。質問は?」
周りから手が挙がる事がなかった。だが、突然壁の隅で立っている女性が、煙草を吸いながらもちらと手を上げた。それに気づいたジャックは、その者に向かってあごをしゃくった。
「なんじゃ、ミシェルのお譲さん?」
「ちょっといいかしら、親分さん?その町に行く前に、まずどういうふうにその屋敷に忍ぶつもりなのですかな?こんな大勢だと、大変な荷物になりますけどね。」
質問をしたのは、ミシェルと呼ばれた若い女性だった。その格好は明るい色で、ひらひらとした薄い袖のついた上着と長いスカートは、他の盗賊とは好対照だったが、それはこの盗賊の中での紅一点の存在であることを示している。エドーが今まで知るかぎりでは、ミシェルは、見た目では息を呑むような美しさだが、意外と男性顔負けの気の強さを持っていて、表情から冷酷な性格に見られがちのため、周りの男達もミシェルだけは逆らえないという。
「うむ。その質問は、その町へ行きながら説明する。以上だ!だから、お前らも覚悟はできているな!?」
「(エドーは大きく伸びすると)はーいっと、親分。」
「よし、行くぞ!お前ら、早く準備だ!」
「おおう!!」
周りから一斉に声を上げた。その同時に、人々はざわざわと解散すると、それぞれその町に向かうための準備を始めた。彼らは、ジャックからいろいろと話を聞くうちに、外に出て行く。当のエドーは「ふーん」と人の話を聞いていないのか、つまらそうに鼻を鳴らすと、突然背後から誰かが話しかけた。
「エドー・アルフォード!!こんなところで、サボるではないぞ!さっさと準備にせんか!っとだぶん親分はそうやって怒鳴るかもな。お前も、こんな危険な件をやるから、少しぐらい気合を入れないのか?と思うがな。」
エドーは振り返ると、べルークだった。いつのまにか親分や他の仲間達は準備が済んだのか、とっく外に出たらしい。酒場にいるのは、エドーとベルーク、カウンターでガラスコップを拭いているバーテンだけだった。エドーが浮かない顔をすると、ベルークは心配げにエドーに話しかけた。
「何かあったのか?」
「うん?いや、いや、違うっての。俺は、あんな伝説の宝が身近にあるなんて、思ってもみなかったしよ。なんか、うそ臭ェ話だしな。俺もバカじゃねェから、思っていたけど。いくらなんでも親分が急にそれを見つけたのは、そもそも怪しくねェか?」
「なかなかと賢いな、今日のチビは。確か・・・そうだな。‘そんな事に言われても、親分はそう言ったから、そうじゃないのか?それに、その宝を手に入れたら、おれらも有名人になるかもな!!’・・・・と昨日からホンジが親分の言葉を半分信じて、半分冗談な事を言っていたしな。俺もチビのように、親分に‘そんなうまくいく話はあるか?’とか、‘ゴルーミの一味だから、そのブルーノからの罠かもしれない’と何度も止めてみたが、結局はだめだったな。だが、その確かではない証拠がないなら、実際に確かめにいくしかない・・・っとそう言ってたからな、いつもの親分は」
「おい、チビ!早く、行かないと・・・あいつらに置いてかれるぞ。それに、ベルークもね。」
バーテンが静かに言うと、ベルークは承知したかのように低く頷いた。そこで、いつまでもその場で座るエドーを、ベルークは意地でもエドーの腕を引っ張り出すと、エドーは小さな悲鳴を上げた。
「い、いてて・・!分かったよ、行くって、行くよ!!でも、俺は隣町とか、行くのも久しぶりだな。」
呑気なことを言うエドーとエドーの腕を引っ張り出すベルークは外に出ると、バーテンは「気をつけてな!」と大声で言ったのを聞こえた。
酒場の裏口から出たエドーは、ベルークといっしょにある場所に向かっていた。建物と建物の間にある薄暗い狭い道で二人で並んで歩くと、エドーはベルークに尋ねた。
「それでよ、ベルーク。俺達は、あの‘フェーザライダー’に乗るのか?」
‘フェーザライダー’とは、この世界では一人また、二人乗りのバイクのような乗り物だ。車輪ではなく、60cmも宙に浮いて後ろに付いてある小さな風車を回りながらジェットのように走り、約100mp/sを持つ高速なスピートを持つ浮遊するバイク。その原料はガソリンのようなものではなく、大量な物理的なエネルギーを持つ石、‘オーラ・ストーン’でまたは、‘光魔石’という。その石はこの世界の生活に必要な原料の源であり、豊かな文明発達したのもその石のおかげである。その石の数が多いほどかなりと馬力を出すが、使えば使うほど、その石の形は削り取り出し、徐々にエネルギーがなくなるということになる。また、この世界ではその石で電気、火、ガスなどを起こさせる役割もある便利なエネルギーでもあった。
「いや、それも予備としての乗り物を使うが、こんな多人数で一人ずつバイクを乗ってたら、変えて怪しまれる。だから、行く時はいっきにその町まで運ぶ、飛空艇に乗っていく。もちろん、観光客という身分でその町に行く。身分証明書など、もうすでに作ってあるから、そこに着いてから、また親分の説明があるからな。それに、あんまりここで話すと、誰かにばれるとやっかいだからな。」
「・・・ふーん。」
ベルークは徐々に低い声でつぶやくと、エドーは頷いた。しばらくして、二人はその細い道に出ると、突然目の前は町から少し離れた広がる草原の土地だった。そこには、いくつかの架空的な飛空艇が泊まってあり、その近くに管理の倉庫と思われる大きな建物がある。‘飛空艇’とは‘フェーザライダー’と違って、船体にエンジンの中に飛ぶ必要なエネルギーである光魔石を燃焼してその熱で生成されたエネルギー、船の後ろに付いてある羽風車をその動力でまわして空飛ぶ船である。他の飛空艇と違って、ジェットエンジン付きでさらなる高速航行可能。だが、それらのジェットエンジン(普通のエンジンとは別)は蒸気機関で作られ、かなりと光魔石を費やるため、出発以外しか使わない。エドー達が乗る船は長年、ジャックが愛用している盗賊団・タイグーニル号と呼ばれる飛空艇でもある。
二人はこれから乗る巨大な飛空船の泊まっている場所に向かうと、そこには何人かの盗賊達が準備していた。彼らが着ている服は盗賊のようなならず者ではなく、一般な町にいる普通の格好だった。エドーは一瞬知らない人達だと思えた。その時、飛空船に乗っていたジャックがひょこりと顔を出し、下にいる連中を見下ろした。ふっと気が付くと、エドーの姿が見えたのである。
「こーら!エドー!お前も、少しぐらい手伝んか?いくらチビでも、お前も仲間として数えているんだからな。そこ、ベルークも!さっさと他のやつと手伝え!」
ジャックは、歯をむき出してエドーとベルークの方向をにらみつけると、大声で怒鳴っていた。その声を聞こえたエドーは、思わずタジタジとなって、慌てて飛空船へと駆け出した。それを見たベルークは思わず苦笑いを浮かべながらも、他の仲間達の手伝いに入る。
風が静かに吹き、草むらがそよそよと揺れる。突然草むらの揺れが少しずつ激しくなり、強い風に吹き飛ばさせる。そこには、飛空艇の底から溢れ出す白い煙。ジェットエンジンによる動力で、いくつかの巨大な円筒形の金属製の筒から煙を放射する。その煙が地面を叩くように発射し、その同時に飛空艇の後ろに付いていた風車が大きく回り始め、少しずつ飛空艇が宙に浮いていく。飛空艇内から人々の掛け声や合図が聞こえ、じたばたと床に急いで走る足音が聞こえる。そして、船の奥の部屋からエンジンのような発動する音が徐々に伝わり、部屋全体が熱くなる。その部屋にエンジンの担当をする者達は汗が頬に伝わっても、さし状のシャベルを手に取り、近くに置いてあった石炭と思われる光魔石を必死にすくったり、そのジェットエンジンの近くにあるボイラーの中に入れているようだ。そのボイラーから発生する蒸気は、煙に変わって放射し続ける。飛空艇は徐々に上空し、10、80、500、1000メートルまでも昇る。1200メートルに昇った時点で、今度は風車が大きく回ると少しずつ前へに進んでいき、あちこちに散らばる雲が通り過ぎていく。盗賊達は、やっとの事で落ち着くと、飛空艇を運転する以外の残りの仲間達が自由の時間になった。飛空艇の中には、狭いがいくつかの部屋がある。例えば地下の内部にいくと、キッチン、いくつかの寝室や貨物室。ほとんどの人達はその各自の部屋で、トランプや賭け事などと楽しんでいるようだ。そこで、一番広い部屋は上甲坂であるキャビン(舵の操縦室も含め)と会議室でもあり、広間である。
「よーし!お前ら、これから作戦を説明するのじゃ。早く広間で集まれ!」
しばらくして、飛空艇が安定になったことを確認したジャックは、キャビンの窓から顔を出すと、大声で皆を呼びかけた。一瞬その声を聞いた上甲坂にいるほとんどの人達は、すぐに広間へ駆け出した。なぜなら、親分の命令だけは逆らえないのである。気が付くと、エドーだけは樽のところに寄りかかり、欠伸しながら呆然と空に流れる雲を眺めていた。まるで、ジャックの言葉を聞いていないか、大きく伸びをした。
「いいよな、雲ってのは・・・。自由で、こうして体を伸ばすと、気持ちいいねェ・・・。」
「こーら!!何をしている、エドー!お前も、早く集合せんか!いつまでものんびりと過ごすな!!」
「はいはいっと、親分。」
ジャックはいつまでものんびりと過ごしているエドーに向かってあらんかぎりの声を張り上げた。その怒鳴り声を聞いたエドーはぶっきらんぼそうに返事すると、大きく伸びをしながらゆっくりと立ち上がった。
日が昇るごろ、飛空艇はまだまだ空の上に飛行中である。広間に集まったのは、10人ほどの盗賊達。主なジャック、エドー、ベルーク、ホウジ、ミシェルと他の雑用的な盗賊のほとんどが顔をそろえていた。ジャックは長いテーブルの奥に座ると、皆も同じくその周りに座っていた。
「よーし、お前ら!これからやる作戦を説明する!まず、知っているの通りに、わしらは普段の格好をしてある変装するわけだ。もちろん、この飛空艇に乗ってやってきた観光客ということでな、そのほうが早くで、すぐに町に入りやすい。」
「でも、親分。どうして、そんな必要があるんだ?」
エドーの問いに、ジャックは話を続けた。
「それはな、最近あの町でもかなりと盗賊達に対して警戒があるらしい。おそらく、ゴルーミのやつが自分の宝を盗賊に盗まれ、その警戒をそのブルーノ伯爵に伝えたんだろうな。エドーのおかげでな。」
「ギクッ!やっぱ俺のせいかい、親分・・・。」
「当然の事じゃが、ここで言い争うでも始まらん。それはそうとして、わしらは、その町に着いた時点で、取り調べがある・・・町に入る所でな。そこで、観光客という身分を持つわしらは、ブルーノの屋敷の中で観光するのじゃ。偽の身分証明書など、もうすでに作ってあるからな、すぐに入れる。それで、ちょうどこの時期はわしらにとってありがたいのじゃ。それは、バサーム町内で行われるお祭りがある。ま、単なる大きなバザーに過ぎんが。」
「どうしてそれが、好都合がいいんだ?」
またエドーの質問だった。ジャックはがっくりとその質問にあきれたように肩を落とすと、ホウジに水を向けた。
「いいかい、チビ!お前も盗賊としての常識を知っているが、もう一度おれらが説明する。(隣にいたベルークに向かってあごをしゃくると、ベルークは頷いた)お祭りってのはな、人がざわざわと集まる。・・・でことは、万が一おれらは屋敷で宝盗みに成功しても失敗しても、その大勢の人達の中に巻き込めば、あいつらだって見つけにくい。だから、逃げやすいというのだぞ。」
「俺達は、たとえ屋敷内で正体があいつらにばれたとしても、屋敷にさえ出れば、こちらが有利となる。皆それぞれバラバラとなって、少しずつ飛空艇に戻る。やつらの行動を確認しながら、こっそりと行く。万が一の場合は、フェーザライダーに乗ってとんずらしかないのである。いいな、チビ?」
「お、おうよ。分かったぜ、二人とも。」
エドーは腕組みをして一人で納得すると、ミシェルは手を少し上げて、親分に質問した。
「つまり、親分さん?この人数で分かれて、一つのクループは観光客としてあいつらの目を盗む間に、もう一つのクループはその間に少しずつそのお宝を盗みにいく。それと、残った最後のクループは、その町で待機して、帰りも待ちながら屋敷の辺りの様子を見たり、観光客として邪魔なやつを見張るとして。そして、私達以外の人達は待機ということでいいかしら?」
「ああ、その通りじゃ。まずは、盗みに行く班じゃが、ベルーク、ホンジ、チビじゃ。」
「よっしゃ!やっと俺の出番だな、親分。」
「エドー!話は最後まで聞けと何度も言わせるのじゃ!?・・・・それと、観光客は無論、わしとお前ら(目の前にいる手下達の五人を指した)だ。わしらは、その屋敷内で情報集めじゃからな。それと、万が一のために、ミシェルとクンジは屋敷の外で待機してもらう。外から様子見をして、見張り役という事でな。それで、いいじゃな?」
周りは納得すると、それぞれ「はい、親分!」と頷いた。それを見たジャックは低く頷くと、いつのまにか手に持っている地図を取り出した。地図を広げると、一斉にその地図に注目した。ジャックは地図の上にミニフィギアの飛空艇をバサームの町の図形から少し離れた森の地形の所に置いた。しばらくして、周りの者達がその地図を観察する中、ジャックはあれこれと地図の上にいろいろと町内の違った場所を分かれている棒の形をしたミニフィギアの人形が置かれた。おそらく、ジャックは彼ら達がどう動くのかを例えて、説明しながら置いたのであろう。作業を終えたジャックは顔を上げた。
「よーし・・・。これからお前らがやるべき事を、しっかりと耳の奥まで聞けよ!」
「でもよ、俺だけが、わざわざ普通の格好しないといけないんだ。お前らだって、大した・・・。」
エドーはそうつぶやくと、マントを抜いた。そこには、フード付きのハーフコートで、膝の下あたりまであるハーフズボン。忍びのように軽やかなサンダルを履き、腰巻きにひらひらとしたマントをつける格好だった。エドーは斜めをしたベルトを肩の上にかけると、背後に武器らしい短い棒を装備した。そこで、黒い皮製のグローブをしっかりと両手にはめこむと、今度は腕まくりした袖を肘あたりまでまくりあげた。あの作戦会議から数時間後、飛空艇が町に着いたのは昼間だった。数十分前に、屋敷の前に着いたエドー、ベルークとホンジは屋敷に忍び寄るため、屋敷の近くにある森の中で身を潜んで、ジャックからの合図を待っていた。その待機の時間に、彼らは盗賊の格好ではまずいため、身仕度をしていた。だが、それはエドーだけが、まだ準備をしていないのである。
「そう文句を言うな、チビ。おれらだって、普通の格好したほうが、身動きやすいだろうに・・・。な、相棒?」
「いや、そういう意味じゃないと思うがな。」
ホンジがそう言うと、ベルークはかぶりを振った。だが彼らは、いつも通りの格好だった。エドーから言わせると、二人は盗賊に見える格好だと言うが、どう見ても普通の格好である。
「つまりだ。チビだけが、いつまでもそのマントを着ると、盗賊という事にばれてしまう・・・正体もな。あのゴルーミの事件後、あいつらはマントを来た盗賊を捜していると今日の朝に聞いた。どちらかというと、どうみても怪しいよ、マントを着たら・・・。」
「つまり、マントを着たら、正体がばれてもおかしくない・・・・という事か。」
エドーは腕組みをして大きく頷いた。そこで、ホンジは思い出したようにエドーを尋ねた。
「そういえば、前々から聞きたかったが・・・。チビはどうして、そのマントを着たり、フードを被ったりするのが好きなんだ?いつも、仕事以外は・・・。」
それを聞いたエドーはぎくと表情が変わるが、その驚きの表情を隠すかのように強く口調した。
「盗賊というのなら、格好や顔を見せないでしょう、普通はよ。それに、何を着ようと、関係ないだろう?盗賊なら・・。」
「ま、理由はともかくだ。エドー、それとホンジもだ。そろそろ合図も来るし、お仕事の時間だな。エドー、ホンジも準備はいいか?」
ベルークは振り返ると、二人は一斉に頷いた。
エドー・アルフォード(18歳、男)=幼い頃から両親を亡くし、孤児であったが、6歳のときにジャックに拾われる。そのため、6歳以前の記憶が覚えていなく、素性は不明。盗賊団・タイグニールのメンバーの中では素早い行動の持ち主で、小柄で一番年少のため周りから‘チビ’と呼ばれる。楽天的で自由奔放な明るさを持ち、人の話を聞かずにぶっきらんぼうな態度を取る事が多い。子供なじみがあるが、時に想像がつかないほどの頭の切れさもある。常にマントを着るのは、盗賊としての誇りを持つ証であると本人は発言するが、本当は寒がりのためでもある。