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冠崎家
通話が切れた後。
冠崎家。
静まり返るリビングに
重い空気が流れていた。
真奈は静かにスマホを置く。
その瞳だけが、
冷えている。
真奈
「……杏奈。」
椅子座っていた杏奈が、
ゆっくり顔を上げた。
杏奈
「はい。」
真奈
「座標はここだ。」
真奈が指先で空間をなぞる。
淡い紫の霊糸が空中へ広がり、
座標式が浮かび上がった。
真奈
「結界を張って、
胡桃を連れ戻して来い。」
真奈
「胡桃が杏奈に触れた瞬間、
こっちへ戻す。」
杏奈
「了解。」
その瞬間。
後ろで胡坐をかいていた陸斗が、
舌打ちした。
陸斗
「はぁ!?
なんで杏奈姉なんだよ!」
隣の隼人も立ち上がる。
隼人
「俺らが行って
ぶち壊して来りゃいいじゃねぇか!」
空気が揺れる。
二人の霊圧だけで、
障子が震えた。
だが真奈は、
溜息をつくだけだった。
真奈
「……馬鹿か脳筋。」
真奈
「だから行かせられんのんだ。」
真奈
「無駄な争いは不要。」
静かな声。
だが逆らえない。
陸斗と隼人が不満そうに黙る。
真奈は杏奈を見る。
真奈
「杏奈。
行くぞ。」
杏奈は微笑んだ。
その笑みは、
優しい。
なのに、
何処か底知れなく不気味だった。
杏奈
「いつでも。」
真奈が、
静かに指を鳴らす。
──パチン。
瞬間。
杏奈の姿が消えた。




