07話 ジェット気流
…………だがこれ以上どうするというのだ。
もう皇国製のエンジンも、ガソリンも、高空戦には必須の排気タービン,(ターボチャージャー)も、敵の重爆撃機を落とすに遠く及ばないではないか。
敵の新型爆撃機【PB-29】は、今までの防弾装備、防漏タンク、どころじゃない。
完全密封の与圧室まで与えられて快適に本土上空に飛んできていた。
皇国の航空兵が酸素マスクで顔を締め、高空の寒さに震えて、防寒着で着膨れになって戦って、今度は電熱線入りの温かい飛行服を開発しようとかやってるときに。
敵爆撃機の搭乗員は、暖房の効いた与圧室の中、極寒のはるか高空、海抜一万メートルを半袖シャツ一枚姿で本土爆撃にやって来ていたのだ。
この差をどうしろと! いったいぼくらにどうしろというのだ!
そんなすべての苦悩を吹き飛ばしてくれたのが【麁正】だった。
コイツはレシプロエンジンじゃない。ガソリンは使わない。もうガソリンのオクタン価の低さに煩わされることは無くなった。
空気さえ必要としないから、排気タービンが無かろうと空気の薄い高高度で遅れをとることも無くなった。
燃料は
濃度80%の過酸化水素の酸化剤
57%のメタノール
37%の水化ヒドラジン
13%の水の混合液。
枯渇する石油資源そのものの心配をしなくても飛べるのだ。
武装は30ミリ機関砲四門。
圧倒的上昇力で敵の頭を抑え、敵の2倍の速度で飛行し、決して逃さない。
従来のプロペラ機が敵爆撃機の侵入高度、約1万メートルに達するのに10数分も要するのに対し麁正はたった3分だ。
上昇が間に合わず指を加えて見ているしかないなんてことはもう絶対に起こらない……。
────ぼくたちが危険極まりない麁正を、それでも選んだ理由というのは。
つまりそういうことなのだ。
例え諸刃の剣であろうとも。
我が身を切り裂き、鮮血を流し、命を削りながらでも。
それでも迫りくる敵を斬りつけられるその刃を、ぼくらは何より欲したのだ。
先に降伏した欧州の同盟国では、圧倒的威力のロケット迎撃機は連合国の爆撃機クルーに恐れられ、爆撃任務を拒否する者が現れるほど効果があったが。行動半径が狭いという弱点を知られてからは無力化された。
ロケット迎撃機の発進基地を、遠く迂回した爆撃コースに変えられてしまったのだ。
いくら必殺の秘密兵器も、相手に届かなければどうしようもない。
それが幕切れだったそうだ……。
だがここ皇国本土ではその手は使えないぞ。
やつらは遠くサイパン島からはるばるやってくる。
ただでさえ航続距離に余裕がない上に、我が皇国上空には西向きの強烈なジェット気流が吹いている。油断すればあっという間に流され機位を見失う。
この条件では悠長な迂回路など存在しない。
必然的にできたのが、霊峰富岳を目印にやってきて目標の帝都へと舵を切るというコースだ。
だがそれは麁正を擁する、伊豆箱根航空隊基地の真上を飛ぶことを意味した。
<<『東部軍管区情報、10時30分、敵戦爆連合100機、小笠原方面より侵入』>>
神剣【麁正】を手にした
ぼくらスサノヲ部隊の頭上を通り過ぎようなんていい度胸じゃないか。
目にもの見せてくれる!!
画像は3DCGで制作中の 菱星航空機 キ201【麁正】モデルです。
ボーンもモーフも入ってるので動くヨ。ヽ(・д・)ノ




