気まぐれ企画 思いのほか沢山の知人が、異世界転移していた件
無自覚旦那と、可愛い妻夫婦、他の二組と合流です。
先日、エルフの村が魔王夫婦に襲撃されたらしい。
「近いな?」
「そだね。というか、まだ行ってないのに、可笑しいね?」
クリスの呟きに、メルは別な疑問を感じながらも答えた。
こちらきてから数日、二人は衣食住を確保しつつも、地球に戻る手を探していた。
その手掛かりとして、時々現れる、異空間への裂け目の気配を感じるところに向かうことにした。
ゴブリンが棲家にする里を皮切りに、翼竜が生息する山奥、地底に住まい人を襲うミミズが生息する砂漠など、妙に危ない場所にその気配が点在しており、例の魔王夫婦とやらが襲撃する前に、自分たちが寄っていた。
もしや、これは私たちのことか?
と、メルは疑っていたのだが、どうやら違うらしい。
「……どうする? もしかしたらまだ、その魔王とやらは、その村にいるかもしれない」
「それらしい気配は? あるの?」
「それが、ないのだ」
だったら何も問題ないが、万が一滅びてしまっているなら、行っても意味がない気もする。
「一応、覗くだけしてみる?」
という事で、ふたりはそっと、村を覗くことにした。
木々で覆われていたはずの森は、見るも無残なことになっており、村の様子も遠くから一望できた。
「ん?」
遠目で人の有無を確認していたメルは、村跡らしき開けた場所に並ぶ、人波を見つけた。
この辺りでは見ない、炊き出し現場の様だ。
「……」
その先頭の方に、大小の男女が鍋の前に立ち、笑顔で配膳しているのを見て、あれ、と思った。
「? あの二人は……もしや?」
「夫婦じゃないね」
クリスの呟きを拾って答えたメルは、周囲を見回した。
あの二人がいるという事は、二人の伴侶もいる。
そんな確信と共に探すと、案の定、視界の片方ずつに一人、男と女がいた。
どうやら、枯た樹木の根を掘り出し、新しく木の苗を植えているようだ。
メルは、その内の女の方に歩み寄った。
長身の清楚な美女に見えるその女は、何本かの植樹を終えて、背筋を伸ばしたところだった。
「ああっ。ようやく十本か。これが成長するまで、家も作れないし。長期間滞在になりそうだなあ」
伸びながら嘆く女に、メルは声をかけた。
「成長させるまでいる気なの? ボランティアで?」
「え? あれ? メルっ?」
思わず女が上げた声で、配膳をしていた長身の男が顔を上げた。
そして、目を丸くする。
その隣で、小柄な女も顔を上げ、声を上げた。
「ひい御祖父さんにひい御祖母さん? 嘘。二人も祖父さんに連れてこられたのっ?」
列の住民たちに一言告げ、二人はこちらに近づいてきた。
すると、向こう側にいたもう一人の長身男も、急いでやってくる。
「お久しぶりですね。雅たちの披露宴以来です」
「そうだね。ミヤとはよく会ってるけど。元気にしてた?」
「ええ、まあ」
曖昧に頷いた男、狭霧は複雑な顔になった。
荒治療で元気にはなったが、それだけだったからだ。
それを察したメルは、顔馴染みたちに説明を求めた。
「……ちょっと、加減を間違えちゃって」
誤魔化すように笑いながら、小柄な女朱鷺が説明した。
「暴走する大樹を数本枯らすつもりが、村全部と森の木全部枯らしちゃって……」
「あの容姿で泣かれたら、ちょっと罪悪感が……」
長身の優男が、困ったように説明し、後ろの住民たちを見たのを見て、夫婦はなるほどと頷いた。
エルフという奴は、長寿の割に容姿は幼い。
子供には優しい四人が、罪悪感で一杯になるのは仕方がなかった。
「? 元に戻すことは、出来なかったのか?」
「できませんよ。成長の促進剤は作成可能ですけど」
朱鷺の答えに、クリスは硬い表情のまま首を傾げた。
「そうか。なら、これはお前たちへの、結婚祝いとして、受け取ってもらおうか」
?
四人が、目を瞬いた。
雅たちは、子供が十代後半に突入するほど、結婚生活は長くなっているし、朱鷺たちに至っては婚姻関係にはないのに、何を言っているのかと思った事だろう。
それでいいんだよと、メルは笑顔でその戸惑いを受けた。
単に、言い訳が欲しいだけなのだ、うちの旦那は。
そんな女房の横で、クリスは無造作に土を一度、足で踏みしめた。
その瞬間、森は蘇ったのだった。
そしてその瞬間、勇者夫婦が誕生した。
何かと流行をさらうお二人でした。




