第二章 0.プロローグ
【ウィルン視点】
「…ン兄ちゃん…」
「大丈夫だよ。兄ちゃんに任せろ…」
妹のルナの手を引き僕達は果てなき外の世界を進む…僕達の住んでたシェルターはワーム達の襲撃によって壊されてしまった。父ちゃんも母ちゃんもワームに食べられてしまった…一瞬だった。怖くて妹を抱きしめて隠れていたら、ワームがいなくなり僕達は助かった…けど…
(これからどうしよう…)
住んでたシェルターが壊れ、外に放り出された僕達は当てもなく外の世界を彷徨っていた。他のシェルターへの受け入れはしてもらえなかった…僕達の枠を富裕層のやつらが金で奪い取りやがったんだ…悔しい。
僕達の防災バッグにはまだ食べ物と簡単なキャンプセット、お薬が入ってるけどもう一日分もない。今日を過ぎたら食べ物も飲み物もなくなってしまう。
「ン兄ちゃん…お腹すいた…」
「兄ちゃんの分のパンをあげるよ」
「ありがと…」
僕は7歳、妹は3歳だ。僕の方が大人だから食べ物をわけてあげないと…僕もお腹が空いたよ…
ブロロロロ…
遠くから車の音が聞こえる。こっちの方に来てるみたいだ。『外の人達は人を騙す人達だらけだから近寄っちゃいけないよ?』父ちゃんの言葉が思い出される。隠れるべきか…でも…
(このまま2人で歩いてるだけじゃただ死ぬだけ…)
何もできずに死ぬくらいなら少しでも生きれそうな…外の大人に頼ってみ…
「わあ!」
「ひっ!」
悩んでいたら僕たちの目の前に突然顔が出てきた。目が蛇のようになっている。見た目が人間だけど人間じゃない…生物兵器ってやつなのか…
僕も妹も死ぬ…武器もない…いや、きっと武器があっても抵抗すらできなかっただろう…
僕は漏らした。そして祈る…車に乗った人間がこっちに来てるはず…どうか僕たちが食べられる前に目の前の兵器を倒して………
「サインー!敵じゃなくて子供だったよー!」
「そっか…あまりに小さい反応だったから敵が伏せて待ち伏せしてるかと思ったが、そういうことか」
車がこちらに来て人間の男が出てきた。黒いパワーアーマーを着ていて、背中には強そうな銃を背負っている…めちゃくちゃ…
「カッコいい…」
思わず口から言葉が出てきてしまった。
「ほう!カッコいいか!お前見る目があるな!」
「サインはいつだってカッコいいよー」
なんか褒められた…そしてどうやらこの兵器と人間は仲間のようだ。
「で、どうしたんだよ。この辺は何もねぇぞ?どうして子供二人で歩いてるんだ?捨てられたのか?」
「僕たちは…」
僕は今の状態を男の人に説明した。シェルターが無くなったこと。他のシェルターに受け入れてもらえなかったこと。どうにもならずに歩いていたこと。説明してるうちに涙が出てきた。妹は大人が怖いのか僕の背に隠れている。
「あー、そっか。この間の被害者か。シェルター育ちの子供に外を放浪させるなんて死ねって言ってるようなもんだぞ…」
「どうするの?サイン」
「うーん………助けてほしいか?」
男が僕に聞いてきた。しかしその目には『僕達の境遇に同情している』と言った感情が感じとれない。本当にただ助けてほしいかほしくないか聞いてると言った感じだ。
「ン兄ちゃん…」
妹もなんとなくわかるのだろう。この大人達は自分らの生死にあまり興味を示していないことを…でも僕たちの答えは決まっている。
「助けて…ほしいです…」
もう僕達はこの人達に縋るしかないのだ。食べ物も理不尽に抗う力もない僕達は…
「…まあいいか。助けてやるよ。たまには人助けでもして得を積むか。最近運が悪かったしな」
「サインは運悪くないと思うよ!」
「そうか?」
とりあえず助けて貰えるようだ……安心したら意識が………………
【サイン視点】
「ン兄ちゃん!」
前線から帰ってる最中に見つけた兄妹の男の子の方が意識を失って倒れた。だいぶ疲れてたろうしな。しょうがないか。
「大丈夫だ。少し寝ればまた起きるだろうよ」
「ン兄ちゃん…」
妹が必死に兄を揺すってるけど、そっとしといた方がいいんじゃないかな…なんにせよ…
「2人とも…俺の車に乗る前にシャワーな?」
ミツガレから貰ったお古の携帯シャワーを車から取り出す。アミューがしょっちゅう返り血まみれになるので、それを流す用に貰ったのだ。
今日はもうすでに3回程アミューの体を流してるのでそんなに水は残ってないが…子供の体を拭くくらいなら十分だろう。
「アミュー、手伝ってくれ」
「はーい」
俺は少年の方を、アミューは女の子の方を担当する……一応ね?そういう配慮はしないと。姉御がこれを見てて、今度の通話でロリコンだとか言われたらたまったもんじゃねぇし…
男の子の方は気絶していたので簡単に体の汚れを流せた。アミューの方も女の子がガチガチに固まってたので簡単に洗えたそうだ。そしてバッグに入ってた包帯を取り出し兄妹をグルグル巻きにする。子供服なんてないのでこれが服代わりだ…重症患者みたいだなぁ。
「…おー…ミイラしゃん…」
女の子の方が自分の姿を見てクルクル回っている。ちょっと可愛い。
さて…
「じゃあ俺たちの隠れ家に向かうか。子供なら足の上に乗せりゃいいしな」




