58.報酬 そして…
【サイン視点】
「ただいま〜」
いつもの姿になったアミューが戻ってきた。
俺もそれに応える。
「アミューお疲れ。今回も助かったわ。飲み物だ。いっぱい食べたし、喉渇いたろ?」
「…うん!」
アミューは俺から受け取った飲み物をチビチビと飲み始めた。まだあるし思いっきり飲んでもいいのに。
「こうやって見るとさっきまで暴れてたとは思えん可愛さだな」
「サインが俺の娘だって大騒ぎするのもわかるわ」
「娘はやらんぞ?」
今回の功労者に仲間達は興味津々だ。おっ、音声付きメッセージが届いた。姉御からだ。
「姉御からメッセージが来たぞ!再生するからみんな静かにしろ!」
俺の呼びかけを聞き仲間達の雑談が一斉に止まる。みんなお楽しみの報酬のお時間だからだ。
「おっす、お疲れ。よくやってくれたぞみんな。戦いの様子は私も見ていた。今回はサインのとこのアミューが破格の活躍をしていたが、ちゃんと他の奴らの頑張りも私が評価してある。それぞれの頑張りに適した報酬を用意してあるから楽しみにしていてくれ。あと弾薬費や特殊弾薬はきちんと使った分だけ補填してやるから安心しろ。ちゃんと報酬と別にな?じゃあ今から参加者全員にメッセージを送信する。そこで報酬と受け取り方法を確認してくれ。じゃあな」
プツン!っと音を立ててメッセージの再生が止まる。そして全員の情報端末にメッセージが届いたのか、みんな自分の情報端末を取り出していた。
「「……うおっしゃあーーー!!」」
全員が両手を上げて喜んでいる…いや、数人ダメそうなやつがいるな?
「…なんでだ…」
「ござ…」
治療を終えたゴザルとふざけてついていったトラッパーの2人がどう見てもがっかりしてる。一応アミューの次に頑張った2人だと思うんだが…
「どうしたんだよお前ら…報酬悪かったんか?」
「…(スッ)」
ゴザルの報酬を見せてもらうと…
『ゴザル、今回の戦いでお前はあの程度の一撃でほとんど戦闘できる体力が無くなってたな?というわけで、お前の報酬は【武者との戦闘訓練】だ!マンツーマンでしっかり教えられてこい。死んだらロウソクくらいは立ててやる』
「…武者?」
知らんやつだ。俺達の群れの仲間じゃないやつか?
「姉御の…ライバル?友人的な人物?でござる…拙者死ぬかも」
「とんでもなくスパルタな報酬なのはわかったわ。まあ頑張れ?でトラッパーはどうしたんだよ。家もらえなかったか?」
「…家には家なんだが…」
トラッパーの報酬も見せてもらった。
『トラッパー、相変わらず罠の配置がキモいな?なんであそこに罠を仕掛ければ巨大ワームだけが引っかかるのか、見てた私もわからなかったぞ。というわけでお前の報酬はご希望の家だ。私の昔住んでた罠まみれの家をくれてやる。1週間以内に自力で全部罠を解除できたらな。できなかったらお前と家を合体させてやる。勘を頼りに頑張ってくれ』
「なんで?」
「俺の報酬…報酬なのか?これは…ただ試練を追加されただけなのでは?あと罰が意味不明すぎて怖い。なんだよ家と合体って…どうなっちまうんだ俺…」
ふぅ。なんだか2人を見ていたら俺は報酬を見るのが怖くなってきたぞ。俺はほとんど何もできてないからな今回の戦い…いや?そもそも俺は戦闘避ける系ウォーカーだし?
アミューと出会ってからバチバチ戦ってるけど俺はそういう人間じゃないんだ…脳内言い訳タイムはこれで終わりにしよう。南無三!
『サイン、相変わらずお前はへっぽこだったが、今回の戦いでアミューのブリーダーとしては優秀だったことが証明されたわけだ。でも戦いがへっぽこだったのでやはり報酬はしょぼくなる。【キングサイズの格安ベット】だ。仲良く使えよ?』
…へっぽこって2回も書かれてる辺り余程残念だったのだろう。あと報酬のキングサイズの格安ベットを仲良く使えって何?意味深すぎる!
「…まあ、二人よりマシか」
何かやらされる二人よりかは貰えるだけありがたいと思っておくことにした…あれ?まだ下にスクロールできるな?
『以下はアミューにだ。サインは読むんじゃないぞ。そろそろアミューにも情報端末持たせてやれよ?』
…先読みメッセージはドキッとするからやめてほしい。
「アミュー。姉御からメッセージだってよ」
「何々?」
俺はアミューに端末を渡した。
アミューがメッセージを読んでる。
「はい、アミューさん用の情報端末です。どうぞ」
「鍵屋…気が利きすぎじゃないか?」
俺たちのやり取りを見て察したのか鍵屋が情報端末を俺に渡してくれた。
「アミューさんはサインさんとずっと一緒に行動してますが、もしも別々で行動するときに必要かと。僕も連絡先ほしいですし」
「俺だって欲しいぞ!」
「私も先輩の連絡先ほしいわ」
「おーい!アミューちゃんの連絡先欲しいやつ集まれってよ!」
「いや待てって…アミューまだ姉御からのメッセージ読んでるから…」
俺はいったんみんなを止める。そして俺はこっそりアミューの情報端末に俺の連絡先をスピーディーに登録した。
「………うん…うん!わかった!」
アミューが突然立ち上がり、俺の情報端末を渡し、自分の情報端末を受け取った。姉御からのメッセージはきちんと削除されていた。消すように姉御から指示があったのだろう。
「みんな~!私もみんなの連絡先欲しい!交換して〜!」
「「「おーーーー!!」」」
アミューはもう俺たちの群れの人気者になっちまったようだ…娘が育つのは早いな…
俺とアミュー、2人で車に乗って帰路に着く。隠れ家に帰って早く寝たい。寝てないもん。帰ってそのままもう一戦、太陽がもう完全に上がっちまってるよ…
「あー、疲れたなぁ」
「私も疲れたよ。でも楽しみ!姉御がね!サインの隠れ家に食べ物をたくさん送ってくれたって!」
「アミューの報酬って食べ物だったんだな…」
あれだけ頑張って食べ物ってどうなんだろう。姉御の報酬にしてはしょぼくね……あれ?送ってくれた?もう届いてんの?
「そ、そりゃあ良かったなぁ?」
「うん…サイン、私強くなる!もっと強くなるよ!」
「そうか…」
アミューが謎にやる気を漲らせている。姉御に何か言われたのだろうか…今よりも強くなってどうするつもりかね?
おっ、隠れ家が見えてき…チュドォ゙ーン!!
「ふひょい!」
「危ないね」
なんか車に向かって飛んできたが?
アミューがガンマンマスターのピストルを腕から生成し撃ち落としたようだ
「アールド様の敵だ!かかれかかれ!」
「絶対にぶっ殺してやる!」
「なんで榴弾が爆発したのに車が無事なんだ!」
アールドって誰だぁ…俺の隠れ家の罠で死んだ誰かか?まあなんでもいいか…
「アミュー!やっちまえ!」
「うん!」
アミューは車から飛び出し、俺たちに襲いかかった敵をなぶり殺す。敵の断末魔を聞きながら…
(次はどこに探索に行くかなぁ…)
俺は今後のことを考える。
アミューとの今後を。
アミューがいることで俺もいけなかった、過酷な前線にも行くことができるだろう。面白い武器も拾えるかもしれない。アミューが美味しいと思える新たな食材もあるかもしれない。なんにせよ楽しみだ。
「ま…俺も強くならないといけないか?」
「ん?どうしたのサイン」
血まみれのアミューが走行中の車に飛び乗ってきた。銃声はもう聞こえない。
「いや、次はどこに行こうかなって」
「私が決めていい?」
「いいぞ…俺も活躍できそうな場所で頼むわ。最近良いとこがなさすぎるわ…」
「サインは良いとこたくさんあると思うけどなぁ…」
そんなことないよ…今の戦いだって俺は怖くてアミューに全部任せちゃったし…
「サインは私が守るからね!」
「そうだな…頼むわ」
…男としてどうなんだと、思うとこはあるけど…もう俺はこんな役割でいいや。




