1.始まり
暗い洞窟、その一部屋の中に一つの卵があった。卵がひび割れ中から新たな生物兵器が誕生する。
人間の身体に爬虫類の尻尾が付き、身体のあちこちに鱗が付いた少女だ。
少女は本能のままに自らが産まれた殻を食べる。
この殻には生物兵器としていち早く戦えるようになるために成長するための栄養素と、様々な知識を食した生物に付与できるようになっている。
少女の身体はみるみるうちに成長していき、大人の女性の姿となった。
そして自らの種を【ダイナロイド】ということを知り、戦うための技を覚えていく…
・咆哮
・硬質化
・筋肉肥大化
・超再生
・吸収変化
・カメレオンスキン…
カメレオン?ってなんだろう。
そう思った彼女はカメレオンスキンを発動させてみる。すると身体が透明になっていき周囲の景色に溶け込んでいった。
面白い…そんなことを思っていると洞窟の奥から足音が聞こえてきた。
見ると一人の人間がいた。
全身重装備、色んな機能がありそうなのを付けている。
そして人間は透明になっている私に気づいていないようだ。人間は私の前を通り過ぎて洞窟の奥に向かって歩いていく。
アレは私の敵か?
こっそり後ろから近づいていく。
しかし曲がり角のところに来たところで人間が私の方に向かって手を動かし始めた。
私の存在には最初から気づいてたってこと?でも攻撃してこなかったってことは私の敵ではない?
なんだろう…殻から得た情報でこれが【ハンドサイン】ってやつだとわかるが、何を意味してるかわからない…
クルクル動く手を見ていたら奥から突然何かが飛んできた。
壁にめり込みバチバチと火花を散らすのは原型がわからないくらいぐちゃぐちゃになった機械兵器だった。
それを追いかけて大量の犬型生物兵器【ガンハウンド】が現れ機械兵器を捕食し始めた。
人間はこれを察して巻き込まれないように…
少し興味が湧いた私は、捕食に夢中になっているガンハウンド達の横をこっそり通り過ぎていく人間についていくことにした。
この人間は局所局所でハンドサインを私に向かってしている。意味が分からないのが多いが止まれと進めだけは理解できたのでついていくのに問題なかった。
人間は極力戦いを避けているようだった。人間の情報はもちろんあるのでその理由もわかる。人間はとにかく弱い。少し臓器が欠けたくらいで簡単に死んでしまう。
時には石を投げ生物兵器達の注意を別に引き、機械兵器のセンサーも丁寧に回避していく。
センサーは透明の私も引っかかるので人間に迷惑がかからないように同じ動きで避けた。
そして地上に着いた。地上は…戦場だった。
色んな形をした機械兵器の部隊が数多の生物兵器達に向かってレーザー銃や銃を乱射、忍者のような見た目をした機械兵器が腰に刺した刀のような武器で生物兵器を切り裂く。生物兵器達が被弾も無視して身体を再生しながら突撃していき、背中から生えた銃で機械を撃ち、齧りつき、踏みつけていく。
お互い種類も様々で山のように巨大なやつもいれば、ネズミのように小さなのもいる。
遠くでは巨大な大砲を背中に付けた亀をそれまた巨大ロボがひっくり返して大剣で亀を真っ二つに…余波の風圧も遠く離れたここまで届く…その巨大ロボは今度は地中から出たワーム型生物兵器に上半身を捕食され機能を停止して倒れた。
洞窟の出口でそんな戦場の景色を眺めていたら人間がいなくなっていた。
見渡してもいない…見失ってしまった…と落ち込み下を見ると、私の足元で人間が背負いヒモ付きのカゴ?ようなモノを組み立てていた。
そして人間はその戦い激しい戦場の方に向かってある…くことはなく洞窟出口の周囲に散らばった武器とかを集め始めた。
今度は何をしているんだろう…
カゴの前で眺めていると、どんどんカゴにその集めた武器や機械兵器の破片を入れ始めていく…
まさか…私に餌を運んでいる!?
嬉しくなった私はその人間が集めてくれたをモノを食べていくことにした。
人間が吟味して選んだであろう餌は非常に美味しかった。
そして私の身体に溶け込み吸収され、私の身体にストックされていく。ストックされた武器は私の身体から好きなように出せるし戻すことも可能だ。生物兵器達が機械を捕食するのはこのように【吸収変化】を用い、機械兵器達の使う武器を自らのモノにするためでもあるのだ。
私も身体にストックしていく。
・強化レーザーライフル【残エネルギー:54】
・強化散弾銃【残弾:2】
・対衝撃装甲【破損】
・高精度索敵機器【壊れかけ】
・ニンジャマスター御用達煙玉
食べ終わってしまった…そしてまた両手いっぱいに部品を持った人間がまたカゴに餌を…入れる前に何か少し考え事をしていたっぽいがまた入れる。
私はまたそれを食べていく。
・ガンマンマスターのピストル【残弾:7】
・高出力エネルギーブレードの破片
・リペアキット
・対装甲生物用AP弾入りのマガジン【残弾:10】
・ニンジャマスター御用達マキビシ袋中身入り
もうお腹いっぱいだ…
人間が、今度は驚いた顔をしている。
そしてまたカゴに餌を入れてくれるがもう食べられないや。
人間はそのカゴを素早く背負い洞窟に戻る。
帰るのだろうか、もちろん私もついていく
帰りは早かった。行きは丁寧に移動していたが人間はそれどころではないと言った感じで全力で移動している。
道中で4匹のガンハウンドに襲われていたが、人間は元から腰に刺してたガンマンマスターのピストルで素早く倒していく。弾が切れたからかその場にピストルを捨ててまた走る。
私も食べたからわかるが、ガンマンマスターのピストルは装填が弾丸と装填機構が特殊で使い切りなのだ。これは機械兵器【ガンマンマスター】が体内で製造した特殊な弾をそのまま銃本体に補充して撃つものなので再利用ができない。
代わりに威力も高く、弾が少し敵を追尾するので狙いが多少雑でも勝手に修正して当たってくれる。
…私が食べたのってこの人間が自分で使うようのモノだったのだろうか…いやいや、私の前にワザワザ餌を持ってきたのだ。私が食べていいやつのはず。
走ること数時間、また地上に出た。
今度は銃声も生物兵器達の咆哮も聞こえない。安全地帯ってやつなのだろう。遠くから別の、軽装備の人間が3人ほど歩いてきた。ここは人間達の住むところなのか?
「おい!動くな!お前が背負ってるモノを寄越せ!」
「動くなよ!動いたらこの銃でおじゃんだぜ?」
ああ…なるほど…
「…スカベンジズ共が、こんなこと盗賊じみたことをして良いと思ってるのか?」
「良いんだよ、ゴミ拾いウォーカー共を襲ったらいけませんなんてルールはないからな!」
コイツらは私の餌を…
「さあ、そのカゴを置いてどっかに行け!」
奪う敵だ
私は透明のまま腕をさっき食べた強化散弾銃に変化させ狙い撃つ。2人の上半身が一瞬で消える。残った1人は状況が理解できずに放心していた。
「へ?」
その残った1人にも撃つ。こちらは1人に絞って撃ったので足以外を残してこの世から消滅した。ついてきた人間に倣って私も使いきった銃を捨てる。不便なところだ。弾を体内で作れないので私も武器は使い切り…
そしてカメレオンスキンを解除して私に餌を用意してくれた人間の前に姿を見せた。
「…ダイナロイドか…」
「気づいてたんでしょ?私がついてきるの。だから私が攻撃しても驚かなかった。」
「…もちろんだ…」




