12.ミドリノシェルター跡地 お宝
【ミツガレ視点】
「あっちの方よ、ここから2時間くらい歩いた先ね」
「…俺たちが地上に出た地下鉄の出口の方角じゃねぇか」
「逆方向でしたね」
「じゃあまた私が先に進むよ〜。着いてきてねみんな」
「おー!」
…どうしてあのダイナロイドがこんなに大人しくて、人間と仲良くしてるのだろうか。
道中は快適だった。主なマンティス種は戦闘のダイナロイドがダイナロイドらしい暴力で破壊し、中衛では鍵屋がギリギリでマンティス種の攻撃避けショットガンで倒してく。ギリギリで避けてるはずなのに全然当たる気がしないのは鍵屋の技量の高さから故なのでしょうね。
サインは…
「あなたは何かしようとは思わないの?ただ見てるだけじゃない」
「俺は武器選びを間違えたんだよ…」
サインは自分の持ってるガードル製ライフルを軽くカンカン叩きながら言った。確かにあれじゃあマンティス種の装甲は抜けないか。できても羽を撃ち抜く程度ね。
「そう…」
彼らが通ってきた道は色んなマンティス種が残骸になって転がっていた。鎌があるべきところにがハンマーみたいになってるやつや、鎌が4本生えているやつ、両手がハサミになってるやつもいたが全部同じように体の何処かがミンチにされていた。
(…まあ前線に行くようなやつらにこの程度じゃあ役不足よね)
もちろん私もこの程度の敵にはやられる気はしないわよ。
「ついでですし、駅内の僕たちの拠点で少し休憩もしていきましょう」
「そうだな、俺も疲れたし」
「ええー?私はまだ元気だよ?」
「私もお邪魔していいのかしら?」
「もちろんいいですよ、もう、仲間ですからね」
彼らが入ってきた場所はシェルターのど真ん中の駅の出口からだったのね…
どこかに地下鉄の線路に入れる穴でもあったのかしら?
1時間くらい先に進んでいくと地下鉄が見えてきた。蓋代わりにしていたであろう瓦礫をどけ中に入る。
そして駅構内の動いている機械兵器の横を抜け…トイレに…トイレ?
「ふぅ、着きましたね」
「ああ、昼飯食べるか」
「サインの持ってきた食べ物美味しくない」
「俺だって美味しいとは思わんぞ栄養食だからな一般的な…」
トイレを簡易拠点にしてるのね…
まあ安全?ではあると思うけど別の場所でも良かったと思う。でも無駄に快適にリフォームしてるのはプラスね。
私はバッグから自分用にする予定だったお宝を取り出す。
「じゃあこれを食べてみたらどう?このシェルターのお宝、汚染されてない果物の缶詰よ?」
「おお!拾ってたのかやるなミツガレ!」
「ミツガレさんよく見つけましたね。僕が見つけたのは全部ドッグをフード…」
「ありがとー!あっ!ミツガレが私の初めての後輩!私はいい後輩を持った!」
「ちなみに私たちが向かってる先にはもっとあるわよ?みんなでたくさん集めましょうね」
「やっふー♪早速食べる!(バリッ!グシャ!)うまー!」
か、缶ごと食べてる…こういうところは生物兵器なのねちゃんと…
「こらこらアミュー、缶ごと食べるのはお行儀が悪いぞ?俺が開けてやるから中身だけを食え」
「はーい」
…なんとなくわかってきたわ。サインがこのダイナロイドを手懐けたのでしょうね。そしてこのメンバーの彼女への扱いを見るに生物兵器としてではなくて一人の人間として扱うのが正解と…つまり私は彼女を…
「先輩、私も開けてあげるわよ。私の手持ちの缶詰だけじゃお腹いっぱいにはならないでしょうけど、種類は色々あるからみんなで味見して美味しかったのを多めに取りに行けばいいと思うわ」
「そうする!後輩頭いい!」
よし、私の判断は間違ってなかった。
自分の分と先輩の分の缶詰を開けて雑談が始まる。
「あっ、そうだ。僕は汚染されてない植物やその種を探しにきたんですが、そっちには心当たりありませんか?」
「あったわよ?というか今向かってる先が果物を育てる施設と缶詰に加工する施設が隣接してる場所なの」
「へぇー、新鮮な果物まで…掘り返すようで悪いんですが、それらを回収できるだけ回収して帰ったら大成功だったはずなのになんで僕たちを襲ったんですか?」
「欲をかいちゃったのよ。やっぱり欲張るのは良くないわね〜」
「引き際が大事なのはそうだな」
「でも結果私たちの群れになった!それは良いこと」
「そうね…はぁ、私もついにソロを卒業か…」
「いやぁ、どうなんですかねぇー。僕たちもたまたま一緒になっただけで、みんな基本はソロなんですよ」
「えっ?あなた達はえっと…群れじゃないの?群れだから一緒に行動してるんじゃ…」
「俺たちの群れはみんな我が強いからな。あんまり誰かと予定合わせて探索はしないな」
「あと下手すると一緒に行動してるだけでシェルター出禁や賞金首になる人もいますからなぇ」
「…とんでもないとこに入ったのね私」
一緒に行動してるだけで賞金首って何を仕出かしたのよそいつは!
「まあ姉御が厳選して選んだメンバーだからみんな実力はあるんだぞ」
「最低限の条件が一人で前線に行って帰ってこれるやつですからねぇ。そりゃあ濃いメンバーにもなるってもんですよ」
「私はまだ鍵屋にしか会ったことないから他の人間達も見てみたい」
「…ホントに濃ゆそうなメンバーが多そうね」
前線に一人で行って帰ってこれる。それはウォーカーとして最上級の実力を持っているということ。
しかしそういう実力者たちはほとんどが頭がおかしい人ばかり。
まだこの群れにどんな人がいるかは把握できてないけど少し楽しみになってきたわ。




