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徴兵の影

 非常階段を駆け下りた先、校庭はすでに瓦礫と炎に覆われていた。

 逃げ惑う生徒たちの声があちこちで響き、空には軍用機らしき影が旋回している。

 だが悠真の目を釘付けにしたのは――整然と広がる鉄の群れだった。


 どこから現れたのか分からない。

 だが、数十体ものロボットが校庭を取り囲み、逃げ道を塞いでいる。


「くそ……詰んだか?」


 呼吸を整えようとしたその時、轟音が空気を裂いた。

 上空から黒い影が降下し、地面に着弾する。

 爆発的な衝撃と共に煙が広がり、ロボットの数体が一瞬で吹き飛んだ。


「――こちら陸防隊! 全員退避しろ!」


 煙の中から現れたのは、迷彩服に身を包んだ兵士たち。

 整った動作で銃を構え、次々とロボットを撃ち抜いていく。


 その光景に、生徒たちは歓声を上げた。

 だが悠真は、どこか引っかかるものを感じていた。


(……なんで軍が、こんなに早く? まるで……待ってたみたいだ)


 疑問を抱く間もなく、兵士の一人が悠真の腕を強く掴んだ。


「おい、君だな」

「は?」


「君、さっきあの状況で生き残っただろう。……妙な動きをしていた」

「な、なんだよそれ。俺はただの――」


 言い訳しようとした瞬間、兵士の目が鋭く光った。


「命令だ。君は“徴兵候補”だ。ついてきてもらう」


「……はぁ!?」


 唐突に告げられた言葉に、悠真は呆気にとられる。

 だが、抵抗する暇もなく背後で再び爆発が起き、生徒たちは悲鳴を上げて逃げ出した。


 悠真だけが、兵士たちに囲まれる。

 気づけば腕には識別用のバンドが巻かれ、軍用車両へ押し込まれていた。


 車が動き出す。

 窓の外に、赤い目のロボット――アークがじっと立ち尽くし、見送っているのが見えた。


「……冗談だろ」


 学校という日常は、完全に壊れた。

 そして悠真は知らぬ間に、“戦場へ駆り出される兵士”として選ばれていた。

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