拒絶の門【2】
軍の基地へ続く道路。
焦げたアスファルトの上を、悠真とアークがゆっくり歩いていた。
アークの身体はひび割れ、内部の機構がむき出しになっている。
それでも彼は、一歩も止まらなかった。
「……痛くないのか?」
悠真が問うと、アークは静かに答えた。
「痛みという信号は、ある。でも――“お前と並んでいる”感覚の方が、強い」
悠真は言葉を失った。
目の前の存在が、どれほど人に近いのかを改めて思い知る。
基地の門が見えた瞬間、監視塔のライトが二人を照らした。
「停止しろ! 機械の進入は禁止だ!」
銃口が再びこちらに向けられる。
悠真は両手を挙げて叫んだ。
「撃つな! アークは敵じゃない! 俺が証明する!」
だが、兵士たちは動かない。
ただ無機質に、警告を繰り返す。
アークは一歩前に出た。
「悠真、俺がここにいることで……お前が疑われる」
「構わねぇよ!」
悠真は振り返り、怒鳴るように叫ぶ。
「お前を置いていく方が――よっぽど0点だ!」
アークの青い瞳が、わずかに震えた。
その光の奥に、確かな“感情”が生まれていた。
門の前で、二人は立ち尽くした。
銃口が火を噴くか、受け入れられるか――どちらに転ぶかは分からない。
ただ悠真は、諦めなかった。
「俺たちの点数は……まだ途中だろ」
夜風が吹き、焦げた空気を撫でていく。
その風の中で、門の向こうにいる人々の心が、少しだけ揺らいだ。




