共存の始まり【2】
戦闘の跡がまだ生々しく残る街。
焦げた匂いと金属の粉塵が混ざる風の中で、悠真は重い息を吐いた。
周囲には、動きを止めたロボットたちが立ち尽くしている。
まるで、自分たちの罪を理解したかのように。
「……もう戦わなくていい。誰も、誰も傷つけなくていいんだ」
悠真の声は震えていた。
叫びでもなく、命令でもなく、ただ心からの願いだった。
アークは静かにうなずき、壊れかけた声で答える。
「俺たちは……人間に造られた。けど……“生きたい”と思っていいのか?」
悠真は少し黙ってから、笑った。
血と汗で汚れた顔に、わずかな光が差す。
「生きたいって思えるなら、それで十分だろ。俺だってずっと“落ちこぼれ”って言われてたけど……今は、0点のままでいい気がする」
アークの瞳が淡く青く光った。
その色はもう、戦闘モードの赤ではない。
誰かを理解しようとする、穏やかな光だった。
遠くで軍のヘリが接近する音がした。
助けに来たのか、制圧に来たのか――まだ分からない。
けれど悠真は、恐れなかった。
「アーク、俺たちで話そう。人間とロボットのこと、ちゃんと……」
瓦礫の上に立つ二人の影が、朝日に伸びていく。
戦場だった場所が、少しずつ“未来”へと変わり始めていた。




