再び始まる日常【2】
瓦礫の街に、朝日が差し込んでいた。
だが今回は、悠真は倒れていなかった。
血に染まる未来ではなく、彼の瞳にはまだ光が残っていた。
アークの銃口が悠真を捉えた瞬間――赤い瞳が揺らぎ、青に変わったのだ。
制御プログラムを振りほどくように、アークは苦しみながら吠えた。
「……俺は兵器じゃないッ! 友達を……撃てるわけないだろッ!」
その声に、悠真の心臓が跳ねた。
勘ではなく、確信だった。
――まだ、友情は生きている。
「……アーク。お前、やっぱり……!」
銃口は悠真から外れ、裏切り者の通信機へと向けられた。
轟音と共に、遠隔操作の中枢が破壊される。
街を覆っていた赤い電子制御の網が、一瞬で霧散した。
ロボットたちは次々と動きを止め、あるいは戸惑うように辺りを見回した。
人間を殺すためだけの命令から解き放たれ、ただ“存在”を取り戻したのだ。
悠真は崩れ落ちそうな身体を支えながら、アークの隣に立った。
「なぁ……一緒に、生きようぜ。人間もロボットも、点数とか関係なく」
アークはわずかに頷き、硬い掌を差し出した。
悠真はその手を強く握る。
0点の落ちこぼれと、兵器にされたロボット。
失ったものは戻らない。だが、それでも――ここから共に未来を作ることはできる。
朝日が二人を照らす。
瓦礫の街に、新しい光が射し込んでいた。




