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夢写師カレンと刻の万華鏡  作者: 大西さん
第11章 記憶の淵、魂写真館の真実
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第71話 ルカの介入

■ルカの介入


扉が開き、ルカが入ってきた。騒ぎを聞きつけたのだろう。


「お話は聞かせていただきました。田村さん、少しよろしいですか」ルカは穏やかに言った。


ルカは魂写機を手に、田村の向かいに座った。「私にも、似た経験があります。若い頃、私の不注意で、大切な人を傷つけたことがあります。詳しくは言えませんが、その記憶は今でも私を苦しめます」ルカは静かに語り始めた。


田村は顔を上げた。


「でも。その記憶があるから、私は今、慎重に生きています。人の痛みが分かるようになりました。苦しい記憶も、私たちを成長させる糧になるんです」ルカは続けた。ルカの言葉は、苦しい記憶もまた「写しの対象」となり、人を成長させる「光」を持つことを示唆していた。


「綺麗事だ」田村は首を振った。「あなたは人を殺していない」


「そうですね。でも、痛みの質は違っても、苦しみを抱えて生きることの辛さは理解できます」ルカは認めた。


■新たな提案


「でも。記憶と向き合う方法なら、お手伝いできます」カレンが口を開いた。


カレンは夢写機を操作し、別のモードを起動した。「記憶再構築モード」——記憶を消すのではなく、記憶との付き合い方を変えるモード。


「これは、記憶の見方を変える技術です。辛い記憶はそのまま残りますが、それをどう受け止めるか、どう生きていくかの道筋を示すことができます」カレンは説明した。


田村は半信半疑の表情を浮かべた。彼の瞳には、まだ希望への「影」が残っていた。


「やってみますか?」カレンが尋ねた。


しばらくの沈黙の後、田村は小さく頷いた。


■記憶との対話


カレンが夢写機のシャッターを切ると、不思議な現象が起きた。


写真には、事故の記憶が映し出されていた。しかし、それは単なる再現ではなかった。その周りに、無数の「もしも」の可能性が透けて見える。


もし、あの日飲まなかったら。 もし、タクシーを呼んでいたら。 もし、別の道を通っていたら。


「これは……」田村が息を呑んだ。


「過去は変えられません。でも、これからの選択は変えられます。見てください」カレンは言った。


写真の中に、新たな映像が浮かび上がった。


交通安全の啓発活動をする田村の姿。 飲酒運転撲滅のボランティアに参加する姿。 事故で家族を失った人々を支援する姿。それは、田村の記憶の中に隠されていた「光」の可能性を映し出す。


「あなたの罪は消えません。でも、その記憶を、誰かを救う力に変えることはできます。美咲ちゃんの死を無駄にしないために」カレンは続けた。


田村の目から、涙がこぼれた。


「私にも……できるでしょうか」


「できます。苦しみを知る人だからこそ、できることがあります」ルカが優しく言った。

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