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夢写師カレンと刻の万華鏡  作者: 大西さん
第11章 記憶の淵、魂写真館の真実
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第60話 祭りの準備

光と影の交錯、真実は心の奥に。

映し出されし己の姿、受け入れた時、新たな絆が生まれる。

記憶の祭りは、魂の和解を告げる調べ。


■祭りの準備


影写りの祭りまで、あと三日。魂写真館は、いつになく慌ただしい雰囲気に包まれていた。今年は魂写真館が祭りの中心会場となるため、準備に追われていた。


「カレン、この提灯はどこに飾る?」ユウキが大きな提灯を抱えて尋ねた。


「玄関の両脇に。それから、夢写機の展示スペースも確保しないと」カレンは設計図を見ながら指示した。二人の間には、以前にも増して自然な連携が生まれていた。


「おい、そっちを持て」蓮が健司に声をかけた。


二人は協力して、大きな幕を張っていた。父と息子の共同作業は、32年ぶりだった。


「昔を思い出すな」健司が懐かしそうに言った。「俺が子供の頃、親父と一緒に祭りの準備をした」彼の瞳には、過去の記憶という「写しの対象」が温かく輝いていた。


「そうだったか。あの頃は、まだ魂写機も原始的だった」蓮も手を止めた。


■過去の記録


準備の合間、カレンは過去の影写りの祭りの記録を調べていた。


「すごい。100年前から続いてるんだ」カレンは古い写真を見つめた。


写真には、明治時代の祭りの様子が写っていた。人々の服装は違っても、楽しそうな表情は今と変わらない。それは、時代を超えて「写し残された」人々の喜びだった。


「これ見て。50年前の優勝者」ルカが別の写真を持ってきた。


そこには、若い頃の健司の父——蓮が写っていた。自作の「光追い装置」で影を追いかける姿が、実にいきいきとしている。


「親父も参加してたのか」健司が覗き込んだ。


「ああ。結局、影は撮れなかったがな」蓮は照れくさそうに頷いた。蓮の声には、当時の悔しさと、それでも挑戦し続けた父の姿への敬意が混じっていた。


しかし、記録を読み進めるうちに、カレンは奇妙なことに気づいた。


「これ……33年前の記録だけ、一部が欠けてる」カレンは眉をひそめた。


確かに、ちょうどチヨが時の狭間に落ちた年の祭りの記録が、不自然に削除されていた。まるで、誰かが意図的に「写し損ねた」かのように。これは、記憶の境界が曖昧になりつつある兆候でもあった。


■町の活気


祭りが近づくにつれ、町全体が活気づいていった。


商店街では、特別セールが始まっていた。「影写り記念、影のように安い!」という看板があちこちに掲げられている。


「今年こそ、影を撮ってやる」若者たちが意気込んでいた。


「でも、本当に影なんて撮れるの?」


「伝説では、50年に一度は成功者が出るらしいよ」


カレンとユウキは、買い出しのために商店街を歩いていた。


「すごい熱気だね」ユウキが言った。


「うん。でも、影って本当に撮れるのかな」カレンは頷いた。彼女の瞳には、科学的な好奇心と、かすかな疑念の「影」が交錯する。


二人は自然に手を繋いで歩いていた。いつの間にか、それが当たり前になっていた。


■柊介の仮説


その頃、魂写真館の書斎では、柊介が興味深い仮説を立てていた。


「影とは何か。単なる光の遮断ではない。むしろ、記憶粒子の別の形態ではないか」柊介は黒板に数式を書いていた。


柊介の理論によれば、影には人の無意識の記憶が宿るという。意識的な記憶が光なら、無意識の記憶は影。両方で一つの完全な記憶となる。


「つまり。影を撮影できれば、その人の隠された記憶も見えるかもしれない」柊介は眼鏡を光らせた。彼の瞳には、新たな科学的真実の「光」が輝いていた。影を「写しの対象」として捉える、画期的な発想だった。

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