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夢写師カレンと刻の万華鏡  作者: 大西さん
第11章 記憶の淵、魂写真館の真実
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第57話 チヨの安定

■チヨの安定


作業を続ける中、チヨの状態が急変した。「あ……私、私だ」チヨが目を開けた 。


混乱していたチヨの記憶が、最初に安定を取り戻した。32年の空白も含めて、すべてが正しく整理された。


しかし、その過程で、チヨは恐ろしいものを見ていた。「みんなの記憶の中に、私がいた。32年間、みんなが私のことを忘れなかった」チヨは涙を流した 。


町民の記憶の中に、チヨの不在がぽっかりと穴を開けていた。その穴を、人々は様々な形で埋めようとしていた。ある者は写真を見続け、ある者は思い出話を繰り返し、ある者は夢の中で会い続けていた。チヨは、自身の「写し損ねた」時間が、人々の心の中で「継承」され、繋がれていたことを知ったのだ。


「チヨ!」健司が抱きしめた。「よかった」


「ごめんなさい。みんなに、寂しい思いをさせて」チヨは涙を流した。


■最後の危機


作業が佳境に入った時、最大の危機が訪れた。


システムが突然、激しく振動し始めた。膨大な記憶の処理に、装置が耐えられなくなってきた。「まずい!このままじゃ、装置が爆発する!」柊介が叫んだ 。


爆発すれば、地下の記憶がすべて解放される。それは、町全体を記憶の津波で押し流すことになる。


「あと少しなのに!」カレンは必死に作業を続けた。


しかし、夢写機から煙が上がり始めた。初代の魂写機も、ひび割れが生じている。(ダメなの?ここまで来て……)カレンは絶望しかけた。せっかくユウキと結ばれたのに、未来を約束したのに、このまま終わってしまうの?彼女の瞳に、深い絶望の「影」が広がる。


その時、思いがけない助けが現れた。


■町民たちの協力


地下への階段から、大勢の足音が聞こえてきた。


現れたのは、町民たちだった。混乱しているはずの人々が、なぜかしっかりとした足取りで集まってきた。


「聞こえた。カレンさんの声が、心に直接聞こえた」一人の老人が言った 。


「私は、去年母の記憶を取り戻してもらった者です。今度は私がお返しする番。自分の記憶くらい、自分で整理します」若い女性が前に出た 。


「俺も手伝う。影写りの祭りで、他人の記憶を見て気づいたんだ。みんな同じように苦しんで、同じように幸せを求めてる。だから、助け合わなきゃ」中年の男性が続いた 。


それは、カレンの無意識の呼びかけに、町民たちが応えたのだった。記憶管理官としての絆が、危機の時に発動したのだ。


人々は、自然に大きな輪を作った。数百人規模の人間の輪が、地下空間を埋め尽くした。


「みんなで、少しずつ。一人じゃ無理でも、みんなでなら」老人が言った 。


全員が手を繋ぎ、記憶整理に参加した。すると、作業効率が飛躍的に向上した。それぞれが自分の記憶を認識し、正しい場所に収めていく。それは、町民一人ひとりが、自身の「記憶」を「写しの対象」として「再構築」しているようだった。


「すごい。町全体が、一つの家族みたいだ」ユウキが感嘆した 。


「そうよ。これが、本当の記憶管理」カレンは涙を流しながら微笑んだ 。彼女の瞳には、真の「夢写師」としての「光」が輝いていた。


町民たちも、作業の中で様々なことに気づいていった。「これ、俺の記憶だ。でも、隣にいるのは……山田さん?そうか、あの時一緒にいたんだ」若い男性が驚いた。「私も覚えてる。あの夏祭り、楽しかったね」山田と呼ばれた女性が頷いた。


共有された記憶が、人々の絆を深めていく。他人だと思っていた人が、実は同じ思い出を共有する仲間だったことに気づく。

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