表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢写師カレンと刻の万華鏡  作者: 大西さん
第11章 記憶の淵、魂写真館の真実
54/77

第54話 魂写真館への集中とチヨの異変

さらに驚くべきことに、混乱した記憶の流れは、すべて魂写真館に向かって収束していた。まるで、巨大な渦の中心に館があるかのように 。


「なぜ、ここに?」健司が疑問を口にした。


カレンが夢写機で館内をスキャンすると、信じられない光景が映し出された。


館の壁、床、天井、すべてに無数の記憶が蓄積されていた。それは、歴代の夢写師たちが撮影してきた、すべての写真の記憶だった。壁紙の下、床板の隙間、天井裏まで、あらゆる場所に記憶粒子が染み込んでいる 。


まるで館全体が、生きた記憶の塊のようだった。壁が微かに脈動し、床からは見えない何かが立ち上っている。


「魂写真館自体が……巨大な記憶貯蔵装置だった」カレンは息を呑んだ 。それは、魂写真館が単なる建物ではなく、町の「写しの対象」であり、「記憶の継承」の象徴であることを明確に示した。


しかも、その記憶は写真だけではなかった。この館で過ごしたすべての人々の、日常の記憶も蓄積されていた。笑い声、涙、怒り、喜び——すべての感情が、物質化して館に宿っていた。


「私……誰?」突然、チヨが混乱した様子で呟いた。その瞳には、複数の人格が入れ替わり立ち替わり現れていた 。


ある瞬間は5歳の少女、次の瞬間は80歳の老婆、そして見知らぬ人々の人格までもが、チヨの中で渦巻いている。チヨの存在が、複数の「写し損ねた」記憶によって侵食され、自我が危うくなっていた。


「チヨ!」健司が肩を掴んだ。「俺だ、健司だ!」


「健司……さん?」チヨの瞳に一瞬、正気が戻った。「私の中に、たくさんの人が……」


チヨは頭を抱えた。「苦しい……私が私じゃなくなる……」


健司は必死にチヨを抱きしめた。「大丈夫、俺がついてる。君はチヨだ。俺の愛する、チヨだ」彼の言葉と抱擁は、チヨの「影」を払拭し、彼女の存在を安定させる「光」だった 。


でも、チヨの瞳は次々と別人のものに変わっていく。


■地下への扉と初代の記録


「待って」ルカが突然正気を取り戻した。「思い出した。この館の地下に、初代が作った部屋がある」ルカは壁の一部に手を当てた。すると、隠し扉が開いた。そこには、誰も知らなかった地下への階段が続いていた 。


「私も、さっき誰かの記憶を見た。初代夢写師の記憶。地下に、すべての答えがあると」ルカは説明した 。それは、ルカが自身の「語られなかった記憶」にアクセスした瞬間だった。


階段は深く、螺旋状に地下へと続いていた。壁には古い写真が並んでいるが、それらはすべて動いていた。過去の記憶が、生きているかのように再生されている。


「気をつけて」ユウキが護符を構えた。「何があるか分からない」


一行は、慎重に階段を降りていった。カレンとユウキは手を繋いだまま。この危機的状況でも、お互いの存在が心の支えになっていた。彼らの絆は、地下に広がる記憶の「影」に対抗する「光」だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ