第44話 夢写機
■夢写機
魂写真館に戻ると、蓮が待っていた。「これが夢写機だ」蓮は装置を見せた。
それは、魂写機の本体に、SIDのセンサーと回路が組み込まれた、ハイブリッドな装置だった。古い歯車と最新の電子部品が、違和感なく融合している。「すごい。父さん、天才」カレンは感嘆した。
「褒めても何も出ないぞ。それより、使い方を教える」蓮は照れくさそうに笑った。
操作方法は複雑だったが、カレンはすぐに理解した。基本は魂写機と同じだが、デジタル制御により、より精密な調整が可能になっている。
■チヨとの対話
その夜、健司は手鏡を通してチヨと話していた。「明日、君を救い出す。32年待った。もう少しだけ、待っていて」健司は優しく語りかけた。
『健司さん。こんなに迷惑をかけて』チヨの声は申し訳なさそうだった。
「迷惑なんかじゃない。君がいない32年間の方が、よっぽど辛かった」健司は首を振った。
『でも、私はもう若くない。時間は止まっていたけど、心は年を取った。昔の私じゃない』チヨの声が震えた。
「それでいい。俺も年を取った。一緒に年を取れなかったのは残念だけど、これから一緒に年を取ればいい」健司は微笑んだ。
鏡の中で、チヨが泣いているのが分かった。健司の言葉は、チヨの「写し損ねた」時間を、愛によって「写し直す」ことを可能にしていた。
■ユウキとカレンの夜
一方、カレンとユウキは屋上で星を見ていた。「明日で、すべてが終わる。なんだか、信じられない」カレンは呟いた。
「うん。でも、終わりじゃなくて始まりだよ」ユウキは頷いた。
「始まり?」「チヨさんを救った後の、新しい日常。俺たちの、これから」ユウキは優しく言った。
カレンは頬を赤らめた。月影遊園地での告白以来、二人の関係は確実に変わっていた。仲間から、恋人へ。
「ねえ。もし、私が32年も封印されたら、待っててくれる?」カレンは小さく言った。
「そんなことさせない。絶対に、守る」ユウキは即答した。彼の瞳は、揺るぎない決意の「光」を宿していた。
「でも、もしも」
「もしもなんてない。でも、どうしても答えが欲しいなら、待つよ。100年でも」ユウキはカレンの手を握った。
その真っ直ぐな言葉に、カレンは言葉を失った。そして、ユウキの肩に頭を預けた。彼女の心の「影」は、ユウキの言葉によって完全に消え去った。
■家族の団欒
夜遅く、橋爪家のリビングには全員が集まっていた。明日の作戦の最終確認。しかし、雰囲気は思ったより和やかだった。
「チヨが帰ってきたら、盛大にお祝いしないと」ルカが微笑んだ。
「結婚式かな」蓮が冗談めかして言った。「32年越しの」
「まず、ゆっくり休ませてあげないと。きっと、疲れているだろうから」健司が優しく言った。
会話は続いた。チヨが帰ってきた後の生活、町の復興、そして未来の話。希望に満ちた会話だったが、誰もが心の奥で不安を抱えていた。本当に、上手くいくのだろうか。




