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夢写師カレンと刻の万華鏡  作者: 大西さん
第8章 鏡の湖の記憶
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第44話 夢写機

■夢写機


魂写真館に戻ると、蓮が待っていた。「これが夢写機だ」蓮は装置を見せた。


それは、魂写機の本体に、SIDのセンサーと回路が組み込まれた、ハイブリッドな装置だった。古い歯車と最新の電子部品が、違和感なく融合している。「すごい。父さん、天才」カレンは感嘆した。


「褒めても何も出ないぞ。それより、使い方を教える」蓮は照れくさそうに笑った。


操作方法は複雑だったが、カレンはすぐに理解した。基本は魂写機と同じだが、デジタル制御により、より精密な調整が可能になっている。


■チヨとの対話


その夜、健司は手鏡を通してチヨと話していた。「明日、君を救い出す。32年待った。もう少しだけ、待っていて」健司は優しく語りかけた。


『健司さん。こんなに迷惑をかけて』チヨの声は申し訳なさそうだった。


「迷惑なんかじゃない。君がいない32年間の方が、よっぽど辛かった」健司は首を振った。


『でも、私はもう若くない。時間は止まっていたけど、心は年を取った。昔の私じゃない』チヨの声が震えた。


「それでいい。俺も年を取った。一緒に年を取れなかったのは残念だけど、これから一緒に年を取ればいい」健司は微笑んだ。


鏡の中で、チヨが泣いているのが分かった。健司の言葉は、チヨの「写し損ねた」時間を、愛によって「写し直す」ことを可能にしていた。


■ユウキとカレンの夜


一方、カレンとユウキは屋上で星を見ていた。「明日で、すべてが終わる。なんだか、信じられない」カレンは呟いた。


「うん。でも、終わりじゃなくて始まりだよ」ユウキは頷いた。


「始まり?」「チヨさんを救った後の、新しい日常。俺たちの、これから」ユウキは優しく言った。


カレンは頬を赤らめた。月影遊園地での告白以来、二人の関係は確実に変わっていた。仲間から、恋人へ。


「ねえ。もし、私が32年も封印されたら、待っててくれる?」カレンは小さく言った。


「そんなことさせない。絶対に、守る」ユウキは即答した。彼の瞳は、揺るぎない決意の「光」を宿していた。


「でも、もしも」


「もしもなんてない。でも、どうしても答えが欲しいなら、待つよ。100年でも」ユウキはカレンの手を握った。


その真っ直ぐな言葉に、カレンは言葉を失った。そして、ユウキの肩に頭を預けた。彼女の心の「影」は、ユウキの言葉によって完全に消え去った。


■家族の団欒


夜遅く、橋爪家のリビングには全員が集まっていた。明日の作戦の最終確認。しかし、雰囲気は思ったより和やかだった。


「チヨが帰ってきたら、盛大にお祝いしないと」ルカが微笑んだ。


「結婚式かな」蓮が冗談めかして言った。「32年越しの」


「まず、ゆっくり休ませてあげないと。きっと、疲れているだろうから」健司が優しく言った。


会話は続いた。チヨが帰ってきた後の生活、町の復興、そして未来の話。希望に満ちた会話だったが、誰もが心の奥で不安を抱えていた。本当に、上手くいくのだろうか。

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