第33話 家族の時間
■家族の時間
「たまには、みんなでご飯でも」ルカが提案した。
30分後、橋爪家の食卓には、家族全員が集まっていた。蓮の手料理が並び、穏やかな時間が流れる。「そういえば。健司さん、最近写真館を再開したらしい」蓮が口を開いた。
「32年ぶりに?」カレンが驚いた。
「ああ。チヨが帰ってきた時、最高の写真を撮りたいからって」蓮は頷いた。その一途な想いに、全員が心を打たれた。
「素敵ね。愛の力」ルカが微笑んだ。
「非科学的だけど。確かに、すごい」カレンも認めざるを得なかった。カレンの瞳の「影」が、愛の力という「光」によって完全に打ち消されていく。彼女の成長のグラデーションが、ここで明確な一歩を踏み出す。
■最後の温泉
食後、蓮が提案した。「近くに、まだ営業してる温泉がある。疲れを取りに行かないか?」
1時間後、四人は小さな温泉宿にいた。「生き返る〜」カレンは温泉に浸かりながら呟いた。
隣の男湯から、ユウキと蓮の会話が聞こえてくる。「カレンは、小さい頃から負けず嫌いでね。でも、根は優しい子なんだ」蓮の声。「知ってます。だから、好きになったんです」ユウキの声。
カレンは顔まで湯に浸かった。恥ずかしさで、顔が真っ赤になっている。彼女の頬に浮かぶ熱は、物理的な湯気ではなく、ユウキへの「写しの対象」としての感情の揺らぎだった。
「若いっていいわね」ルカが微笑んだ。
「母さん!」カレンが抗議した。
しかし、この穏やかな時間も、嵐の前の静けさに過ぎなかった。明日は、更なる試練が待っている。しかし、今は、家族の温もりに包まれていたかった。
朽葉温泉での発見、健司の想い、そして新たな手がかり。すべてが、最後の戦いへと繋がっていく。
チヨを救い出すまで、あと3日。
時間は、確実に過ぎていく。




