第25話 蔵の秘密
■蔵の秘密
ユウキの両親は不在だった。この混乱で、町役場に呼び出されているらしい。
「蔵は裏庭に」ユウキは案内した。古い蔵は、重厚な扉で閉ざされていた。しかし、ユウキが近づくと、護符が激しく反応した。
「開け」ユウキがそう念じると、扉の鍵が自然に外れた。まるで、護符が鍵の役割を果たしたかのように。
蔵の中は、薄暗く埃っぽかった。しかし、奥に進むと、異様な光景が広がっていた。壁一面に、護符と同じ紋様が描かれている。そして中央には、古い祭壇があった。
「先祖の位牌の裏」ユウキは祖父の言葉を思い出した。彼の心に、祖父の「語られなかった記憶」が鮮やかに蘇る。
位牌を慎重に動かすと、隠し扉が現れた。その中には——「これが、本物の護符」仮の護符より一回り大きく、より複雑な紋様が刻まれていた。そして、中心には小さな宝石がはめ込まれている。
ユウキが手を伸ばすと、護符は自ら彼の手に収まった。
■真の継承
瞬間、ユウキの意識に膨大な情報が流れ込んできた。歴代の守り人たちの記憶。千年にわたる霧谷家の歴史。そして、護符の真の使い方。
「うああああ!」ユウキは頭を抱えて膝をついた。あまりの情報量に、脳が処理しきれない。彼の瞳から、恐怖と、それでも理解しようとする強い意志の「光」が溢れる。
「ユウキ!」カレンが支えた。
「大丈夫。分かった。全部、分かった」ユウキは苦しそうに、でも力強く答えた。
ユウキの瞳に、新たな光が宿っていた。それは、覚醒した守り人の瞳だった。彼の「拒絶」は消え去り、「継承」の光に満たされていた。
「行こう。チヨさんを、救いに」ユウキは立ち上がった。
■決戦への準備
魂写真館に戻ると、状況はさらに悪化していた。「記憶喪失者が1000人を超えた。もう、普通の対処じゃ無理だ」蓮が報告した。
「時計塔の封印も、限界です。今夜にも、完全崩壊するかも」ルカが付け加えた。
カレンは家族を見回した。そして、ユウキを見た。彼女の瞳は、もう迷いの「影」を宿していなかった。「みんなで行こう。護符と魂写機、そしてSID。すべての力を合わせれば、きっとできる」カレンは決意を込めて言った。
「危険すぎる」蓮が心配した。
「でも、他に方法はない。私は夢写師。ユウキは守り人。これは、私たちの使命」カレンは父を見つめた。その決意の強さに、蓮は何も言えなかった。
■ユウキの告白
準備を整える中、ユウキはカレンを屋上に呼んだ。「カレン、聞いてほしいことがある」夕焼けが町を赤く染める中、ユウキは真剣な表情で語り始めた。彼の声は、緊張と、それでも伝えたいという切実な想いで震えていた。
「護符を継承して、分かったことがある。守り人は、大切なものを守るために存在する。そして俺にとって、一番大切なのは」ユウキは護符を見つめた。「カレン、君だ」
その言葉に、カレンの心臓が跳ねた。彼女の頬に、夕焼けの赤とは違う熱が灯る。「俺、ずっと言えなかった。でも、もし今夜何かあったら、後悔すると思って」ユウキは続けた。
「ユウキ」カレンは涙を堪えた。「何もないよ。みんなで、無事に帰ってくる」
「うん。約束する。君を守って、一緒に帰ってくる」ユウキは微笑んだ。
二人は手を取り合った。夕日に照らされた影が、一つに重なった。互いの手の温もりが、すべての不安を溶かすようだった。




