第23話 霧見神社への道
■霧見神社への道
老神主の案内で、三人は霧見神社へ向かった。神社は町の東側、小高い丘の上にあった。長い石段を上っていくと、霧が薄れ、澄んだ空気に包まれた。「ここは結界で守られている。時間の異常も、ここまでは及ばない」老神主が説明した。
確かに、カレンのSIDも正常な数値を示していた。まるで、神社だけが時間の流れから切り離されているかのようだった。
鳥居をくぐると、古い社殿が姿を現した。屋根は苔むしているが、構造はしっかりしている。創建は平安時代まで遡るという。
■神社の歴史
「霧見神社は、時間を司る神を祀っている。そして、霧谷家と橋本家は、代々この神に仕える一族だった」老神主は社殿の前で立ち止まった。
「橋本家も?」カレンが驚いた。チヨと同じ家系であることが、彼女の使命をより深く刻み込む。
「そう。巫女の家系と守り人の家系。二つの力が揃って初めて、時間の均衡を保てる。しかし、時代と共に、その使命は忘れられていった」老神主は続けた。
社殿の中に入ると、祭壇の奥に古い絵が飾られていた。平安時代の作とされる絵には、狐の姿をした神と、それに仕える巫女と武士が描かれている。「これが、始まりの姿。千年前、時間の裂け目からこの世界を守った者たち」老神主は絵を指差した。
■護符の覚醒
老神主は、懐から古い護符を取り出した。それは手のひらに収まるほどの大きさで、複雑な紋様が刻まれている。「これは、清殿から預かっていた物。本来の護符が見つかるまでの、仮の護符。しかし、これでも多少の力は宿っている」老神主は厳かに言った。
ユウキが護符を受け取ると、異変が起きた。護符が微かに光り始めたのだ。それは、ユウキの脈拍に合わせて明滅している。「やはり。血が覚えている。あなたは、正真正銘の継承者だ」老神主は満足そうに頷いた。ユウキの瞳に、新たな使命の「光」が灯る。
「でも、どうやって使うのか」ユウキは困惑した。
「それは、あなた自身が見つけること。護符は、持ち主の心に応える。必要な時、必要な力を発揮する」老神主は神秘的に微笑んだ。
■修行の開始
「しかし。力を制御できなければ、破滅を招く。少しでも、基礎を学んでおくべきだ」老神主の表情が真剣になった。
神社の裏手にある修行場に案内された。そこは、小さな滝と、円形に配置された石がある、神聖な場所だった。「まず、護符との同調から。護符を胸に当て、呼吸を整える」老神主は指導を始めた。
ユウキは言われた通りにした。最初は何も起きなかったが、徐々に護符の温度が上がってきた。「感じる。何か、流れてくる」ユウキは目を閉じた。
カレンがSIDでスキャンすると、ユウキの周囲に微弱なエネルギーフィールドが形成されていた。それは、時計塔で観測したものと似ているが、より安定している。「すごい。時空の歪みを制御してる」カレンは分析した。
■失敗と成功
しかし、修行は簡単ではなかった。「護符の力を、前に向けて放出してみなさい」老神主が指示した。
ユウキは集中して、護符にエネルギーを込めた。しかし——「うわっ!」制御を失った力が暴走し、ユウキは後ろに吹き飛ばされた。地面に叩きつけられ、痛みに顔を歪める。「大丈夫?」「平気。でも、難しいな」カレンが駆け寄ったが、ユウキは苦笑した。
何度も挑戦したが、成功率は低かった。力が弱すぎたり、強すぎたり、あるいは全く発動しなかったり。ユウキの瞳に、自身の不甲斐なさに対する「影」が宿る。
「焦るな。清殿も、最初は苦労した。大切なのは、護符と心を通わせること」老神主は諭した。
3時間後、ようやく小さな成功があった。ユウキが護符を掲げると、淡い光のバリアが形成された。それは、彼を中心に半径2メートルほどの球体となった。「できた!」ユウキは喜んだ。彼の顔に、安堵の「光」が戻る。
「これで、時間の異常から身を守れる。まだ初歩だが、大きな一歩だ」老神主は頷いた。




