第95話 狙い撃ち
「ぐおおおおお!!」
「くっ!」
体長5メートルは超える魔物の、巨大な拳が頭上から叩きつけられる。
俺はそれをギリギリ躱しつつ、その腕に短剣を振るう。
戦っている魔物の名は阿修羅コング。
腕が六本と、顏の側面に顔が二つ付いているゴリラだ。
阿修羅っぽい見た目のゴリラだ。
「ぐおおおおおお!」
連続で、頭上から六つの拳が降り注ぐ。
それをスキルも駆使しながら躱しつつ、俺はひたすら反撃を入れていく。
Sランクモンスターの生命力はAランクの数倍だ。
武器が強くなったとはいえ、それ以上に相手がタフになっているため、必然的に長期戦を強いられてしまう。
もうちょい勇気の火力が高ければな……
ヘイトを集めるスポットライトを使用しているので、コングは俺だけを目の敵の様に攻撃してくる――決して胸を揉んだからという訳では無い。
なので勇気はフリーで攻撃し放題なのだが、残念ながら火力はそこまで高くない。
割合ダメージだけでも十分貢献してくれてはいるのだが、もう一声欲しい所だ。
……まあ、レベル70スキルに期待だな。
あ、因みに、【ハート・スティール】は単体相手では意味が無かったりする。
下僕化した魔物は意図的に攻撃した場合、一瞬で正気に戻ってしまうからだ。
たまたま流れ弾に当たったとかならセーフではあるが。
という訳で、単独活動しているコング退治はハート・スティール無しでやっている。
「ふぅ……」
「お疲れ様です」
阿修羅コングを討伐。
ドロップは高額の魔石だ。
「何とか間に合ったな」
「ギリギリでしたね」
なにが間に合ったのか?
簡単な事である。
別の魔物のグループが、こっちに近付いて来ていたのだ。
俺はダンジョンマップを表示しっぱなしだから、それが分かる。
「「「おおおおおお!!」」」
近付いて来ていた魔物が此方を発見し、雄叫びを上げる。
数は三匹。
サイズは阿修羅コングと同じぐらいの巨人達だ。
一つ眼のモノアイ。
二つ眼のデュアルアイ。
そして三つ眼のサードアイ。
この三体からなる魔物のグループで、単独の強さは阿修羅コングに劣るが、数が多い分、コング以上の強敵となっている。
なので――
「神出鬼没!」
――サッサとおさらばさせて貰う。
え?
戦わないのか?
うん、戦わない。
だってあいつら、ビーストキラーの効果(ダメージ1,5倍)乗らないし。
あと、阿修羅コングから手に入れたレア枠のタリスマン――バナナリング(動物系相手に攻撃力と防御力が2%アップ)も乗らないからな。
ハート・スティールで一匹従えて、時間が来たら別のをって感じで回していっても、確実に阿修羅コングの数倍は時間がかかってしまうからな――6分×3の計18分程度じゃ、一匹も倒せない。
そのくせ経験値もドロップも大差ないので、俺はコングさん一筋だ。
幸いこのダンジョンで単独行動してるのはコングさんだけなので、見つけるのも簡単だしな。
なのでハート・スティールは今のところ、コングさんとの戦いを邪魔された時用の保険としか使ってない。
「ラッキースケベ!」
転移後、俺はSPとMPをアイテムで整え、次の獲物へと取り掛かる。
もちろん初手は、安心と信頼のラッキースケベからだ。
「俺のために死んでくれ!」
超絶美味いゴリラ狩りのお陰で、狩りを初めて3日で既にレベルは2つ上がっている。
これならレベル93もすぐだ。
大幅に火力が上がるっていう勇気のレベル70スキル。
それに【幸運】のレベル7まであと一歩。
阿修羅コング先輩よろしくお願いします!
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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