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第93話 ビビってはいない

「おや?」


「ありゃ、もう一人増えたねぇ」


俺に続いて勇気(変身済み)が転移して来た。

天魔輪廻は呑気な感じだが、竜崎守が険しい顔つきで俺達と彼女との間に体を割り込ませる。


「輪廻、下がっていろ」


明らかに此方を警戒している感じだ。

まあ不審者がいきなり目の前に現れた訳だからな。

伯父としてまだ子供の姪を守ろうとするのは、まあ当たり前と言えば当たり前の話である。


圧がスゲェな……


竜崎守。

ネット上じゃ、人類最強の男と呼ばれている程のシーカーだ。

そんな人物に敵意を込めた視線を向けられると、緊張せずにはいられない。


「失礼、驚かせてしまいましたね。申し訳ない」


取りあえず謝っておく。


別にビビったからじゃないぞ。

魔物の侵入してこないホールとはいえ、ダンジョン内で他のシーカーをびっくりさせるとか、攻撃されたと思われても仕方ないレベルだからな。

つまり、完全に此方の落ち度だ。


だからもう一度言う。

ビビったんじゃないぞ。


「伯父さん警戒しすぎ。大丈夫だって」


竜崎とは対照的に、天魔は此方を特に警戒していない様だった。

若さゆえか。

もしくは、天才としての絶対の自信からか。


「今急に現れたのって、転移ですよね?」


「ええ。そうなります」


紳士っぽい口調で答える。

なんとなく、怪盗イコール紳士っぽい口調ってイメージがあるから。


こういう時はなり切った方がボロが出にくい物だから。

と、俺は勝手に思って演じている訳だ。


「て事は……ヒーロークラスかユニークスキルって事ですよね?普通のスキルやレアクラスじゃ、転移なんて出来ないし」


天魔が探る様に聞いて来る。


不審者だから興味が湧いたって感じかな?

この子の事を良く知っている訳では無いけど、俺の中のイメージではそういう感じの子って位置づけだ。


ほら、よく言うだろ。

天才は変わり者が多いって。


「輪廻、よさないか。初対面の人間を詮索するなんて失礼だろ」


竜崎が天魔を叱りつけた。

因みに、失礼な真似をするなって言葉は、別に俺達に対する警戒が解けたからの物ではない。

単に姪っ子の非礼を怒ってるだけである。


警戒しっぱなしなのは、動きから何となく察せられるし……


「まあまあ、袖すり合うは多少の縁って言うじゃん。という訳で……私は天魔輪廻。16歳。こう見えてヒーロークラスなんだよ。その名も暗黒姫(ダークプリンセス)!で、こっちが伯父さんの竜崎守。同じくヒーロークラスね。 究極素体アルティメットプレーンだよ。そして最後に……」


自己紹介を始めた天魔が振り返り、少し後ろにいた女性を見る。


「彼女は神崎エデンさん。彼女もヒーロークラスね」


うん、三人とも知ってる。

初対面っぽく振舞わなければならないから、黙って聞いてたけど。


まあ、竜崎守のクラスは知らなかったけど……


天魔輪廻のクラスは、以前鑑定して知ってたからな。


「私は……怪盗Gと申します」


相手に名乗られてそれを無視する訳にも行かないので、一応名乗り返しておいた。

あんまりこの名前を名乗りたくないんだけど、まあ仕方ない。

ネットで有名になってるので――しかも名乗る姿を映像付きで――今更別の名前を名乗る訳にも行かないし。


「おー、怪盗さんかぁ。名は体を表すなんて言うけど、正にその通りだねぇ」


天魔が感心したようにそういう。

この反応、ひょっとして彼女は怪盗ダブルGの事を知らないのだろうか?


……まあ、ネットをあまり見てないなら知らなくても別におかしくはないか。


ちょっともにょる。

相手が知っている前提で振舞っているけど、全然そんな事はなかった。

こういうのって、滅茶苦茶恥ずかしいんだよな。


「後ろのおにーさんの事も聞いてもいいかな?」


「……え、ああ……私は、というか私も怪盗Gです。二人合わせてダブルGとご記憶ください」


『おい。ダブルGとか勝手に名乗んな』


勇気が余計なことを言うので、テレパシーで苦情を言っておく。

折角相手はこっちの事を知らないってのに、不名誉な名前をこっちから名乗るんじゃねぇよ。


『どうせネットで調べられたら直ぐバレるんですから、こういうのはドーンと胸を張って名乗ればいいんですよ』


まあ、確かに調べられたら直ぐにバレるのは確かだ。

だからって、不名誉な呼称を自分から名乗る気は更々ねーよ。


「おお!ダブルG!なんかカッコいいねぇ」


天魔がダブルGと聞いて燥ぐ。

その二つのGの意味を知ったら、絶対違う反応だったろう事は想像に難くない。


「で?やっぱ二人はヒーロークラスなのかな?」


天魔が再び俺達のクラスを聞いて来る。


結構子狡いな、この子。

相手にクラスを先に明かされてしまうと、流れ的にこっちもクラスを明かさなければならない空気になってしまう。

もしここで隠せば、後ろ暗いですって言ってるに等しい。


まあとは言え、確認する術はないのだ。

なら、適当にごまかしておけば……


「私達のクラスは怪盗ですよ。お嬢さん」


誤魔化そうとしたら、勇気が馬鹿正直にクラスを答えてしまった。


いやなに勝手に答えてんだよ。

こいつは。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
急がば急げの件があるから袖すり合うは多少の縁も判断に迷う 文脈的には誤字のような
多少の縁は誤字なのかわざとなのか迷うな
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