第91話 レベル90
「よし、レベル90到達。これだけ早く到達できたのも、ボス討伐のお陰だな」
ボスは通常の魔物より遥かに経験値が多い。
Bランクボスもかなりの物だったが、Aランクボスはそれが劇的に跳ね上がる。
まさに桁違いレベルで。
まあそれに見合った強さだった訳だが。
どれも倒すのに数時間かかったし。
とにかく、ボス狩りが思ったより熟せたお陰で、俺は予定より遥かに早くレベル90に到達する事が出来たのだ。
「おめでとうございます。これでSランクの仲間入りですね」
「ああ」
レベル90台なら、仮にノーマルクラスのシーフでも十分一流と言えるレベルだ。
ましてや今の俺は強スキル持ちのレアクラス。
一流を越えた超一流と名乗っても差し障りないだろう。
Aランクボスすらソロで狩れてる訳だしな。
もうなんなら超一流の更に上……うーん、超一流の上ってどう形容すればいいんだ?
スター?
いや、それはちょっと違う気がするな。
スターを名乗るには実力も必要だけど、それ以上に人気も必要になる訳だし。
俺のダブルGとしての評価は、どう考えてもスターは似つかわしくないからな。
じゃあ超超一流?
超を二つ並べるのは、なんか安っぽいというかなんというか。
まあこの際名称や定義はどうでもいいか。
とにかく、俺はシーカーの中でも凄く上澄みって事だ。
「さて、レベル90で覚えたスキルは……」
【怪盗化】がレベル6になり、新しくスキルが一つ増えていた。
レアクラスはレベル90でスキル習得の頭打ちなので、これが実質最後のクラススキルになる。
【怪盗化】のレベル6は残念ながら補正が上がるだけだった。
まあ、元々はレベル5までのスキルだからな。
6以降効果が増える【幸運】が特殊なだけなんだろうな。
きっと。
まあでも、敏捷、器用、魔力が5づつ増えるだけでも大きい。
レベルにして15レベル分の補正が付くのだから、それだけでも十分すぎる強化だ。
で、新しく覚えたスキルは【ハート・スティール】。
『奴はとんでもない物を盗んで行きました。貴方の心です』
「なんだこのフレーバーテキストは?」
スキル効果を見ると、フレーバーテキストしか表示されない。
鑑定で確認してみる。
「なになに……魔物の心を盗み。3分間下僕に出来る、か。それと――」
なんで鑑定しないと効果が分からないんだよ。
フレーバーテキストとかいらないから、こっちを普通に確認させろよな。
鑑定無かったらどうする気だよ、まったく。
いやまあ、使ったら一発で分かるけどもさ……
「人間に掛けた場合の効果は、10秒間こっちに攻撃できなくなる、か」
人間にも使えるみたいだが、効果は魔物に比べるとかなり微妙な物となっている。
効果時間もかなり短いし。
まあ人間相手に使うなんて機会はないだろうから――ああいや、グーベルバトルがあるか。
1対1の戦いで10秒間相手の攻撃を封じれるなら、そう悪くない気もするな。
もちろん、操れるに比べたらしょぼいけど。
「このスキル、同時に複数かけられないのが残念だな」
なので、複数を同時使役する様な真似は出来ない。
もし出来ていたら、狩りは相当楽になっていた事だろう。
そう考えると残念だ。
まあ一匹コントロールできるだけでも全然違ってくるだろうけど……
「あと、連続でかけるのも無理か」
一度掛けた相手にはしばらく免疫がつく様で、連続でかける事は出来ない様だ。
「連続で掛けれるようなら、対人戦だと相当だったのにな」
もしそうだったなら、スキルを躱せない奴はそれだけで完封出来たはず。
因みに、スキルは相手に触れて発動させるタイプなので、素早く動き回る様な相手には掛けること自体が難しかったりする。
まあラッキースケベを使えば実質必中な訳だが……グーベルバトルで使う気は更々ない。
怪盗である事がばれたとはいえ、相手の胸を揉む姿を映像に残したくはないからな。
「これ、ボスにはやっぱ効かないんだよな?」
勇気に聞いてみる。
ボスに関する言及はないが、まあ普通に考えたらそうだろう。
「ボスには流石に効きませんよ」
「まあそうだよな」
「ただ……ボスの取り巻きなんかには効きますんで、ボス戦でもある程度有効に使えるかと」
「ボスの取り巻きには効くのか。そりゃデカいな」
Aランクとかになって来ると、大抵のボスが取り巻きを召喚してくる。
なので壁なり追加火力なりとして扱えるのは便利だ。
「ええ。《《6分間》》もあれば、十分貢献してくれるでしょう」
スキルの効果は3分間だ。
だが、勇気は6分間使役できると口にした。
何故か?
Aランクボス討伐時に手に入れた、レア枠のスキルブックからあるスキルを習得しているからだ。
―—スキル【効果時間延長】。
これは自身の扱う強化や、相手に掛ける状態異常などの効果時間を倍加するスキルとなっている。
これの効果で、俺のあつかう【ハート・スティール】の効果は2倍になる訳だ。
だから効果時間は、実質倍の6分。
人間相手の方も、倍で20秒って感じだ。
「装備も更新して、しかもこのスキルがあれば、Sランクダンジョンに移っても大丈夫そうだな」
「ええ。無理さえしなければ、問題なく狩りが成立するはずです」
という訳で、本日をもってAランクダンジョンは卒業である。
いざ、Sランクダンジョンデビュー!
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