第88話 短い夢
―—宝箱からでた球を鑑定する。
「限界突破の宝玉?」
聞いた事のないアイテムだ。
まあ、隠し通路の宝箱に入っているのは基本そんなのばっかだが。
「効果は……えっ、マジか?」
限界突破の宝玉の効果は、使用した者のステータスとレベルの上限を+5するという物だった。
レベルの上限は99で。
ステータスの上限も100だ。
これを使えば、その上限が上がるって事だよな?
そんな事本当にあるのか?
こういう時は――
「これって、レベルが104まで上げられる様になるって事だよな?」
―—勇気に尋ねるのが一番だ。
こいつなら絶対答えを知ってるだろうからな。
まあ秘密にされることも多いが、きっとこのぐらいなら答えてくれるはず。
「ええ、そうですね。レベルの上限が99から104に上がります。ステータスの上限も100から105ですね」
あっている様だ。
「ただ、スキルのレベルなんかは上限アップしませんよ。勘違いしませんように」
鑑定で出た『レベルの上限を+5する』って説明だと、確かにスキルの“レベル”も上がるって勘違いしかねないか。
まあ俺はそんな厚かましい勘違いはしてないけど。
「そんな勘違いはしてないさ。しかし……レベル104か。これはひょっとしたらひょっとするかもな」
ステータス5ポイント。
それにレベルアップによるSPとMPの増加。
更に、微々たるものだがレベルアップ時に入る全能力強化。
全部ひっくるめても、劇的な強化とはならないだろう。
じゃあ何がひょっとするのかだが、それは……グーベルバトルである。
レベル5つ上がったから無双できるようになる!
訳ではもちろんない。
さっきも言ったが、スキルが増える訳でもないレベル5つぐらいじゃ、そこまで劇的に強さは変わらないからな。
じゃあ何が違うのか?
それはレベルだ。
正確には、レベルによる入手ポイントである。
グーベルバトルにおける入手ポイントは、レベルに依存する。
80なら、勝利時の基本ポイントは80。
99なら99。
このように、レベルが高ければ高い程上に上がりやすいシステムになっている。
そして世界で俺だけレベルが104だったとしよう。
この場合、俺だけ他のシーカーより5ポイント多くポイントを手に入れられるって訳だ。
そうなればランキングで上位どころか、ゲームのシステム上、トップを取ることも夢ではない。
ランキング1位……何て素晴らしい響きなんだ。
「マスター。妄想に浸ってるところ申し訳ありませんが……グーベルバトルはレベル99までしかカウントしてくれないので『レベル104で俺だけポイントが爆発するぜ!』的なのは出来ませんよ」
「……あ、そうなんだ」
短い夢だった。
さよなら、俺のランキングナンバー1ちゃん。
ま、しょうがない。
気を取り直して、次はUマークのついたスキルブックを鑑定しようか。
俺はスキルブック(U)を鑑定する。
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