第84話 保留
「おおおおおお!パワーアップ!!」
勇気が雄叫びを上げる。
進化させたスキルを確認すると、八咫烏召喚(改)に名前が変わっていた。
名前雑過ぎ。
「どれぐらい強くなったんだ?というか前から気になってたんだけど、勇気ってステータスはどんな感じなんだ?」
「ステータスは秘密です!それは乙女のスリーサイズを聞くようなデリカシーの無い行為ですよ、マスター」
「三本目の足はチンコだって堂々と宣言する奴に、デリカシーも糞もあるかよ」
どの口がほざくのか。
「おお、鋭いご指摘痛み入ります。でも秘密です。まあ、一般的なシーカーよりはだいぶ高いぐらいだと思っててください」
「高いのか?」
「ええ。なにせ魔物は武器も防具も装備できませんからね。ステータス位高くないとやってられませんって」
勇気は武器や防具を装備できない。
カラスだから物理的に無理という訳では無い。
怪盗化で人型に変身できても、武器を使って攻撃する事が出来ないのである。
なので、装備不可は一種の制限だ。
そしてこの武器が装備できないって制限が、勇気の攻撃力が低かった要因でもある。
ずっと素手だったからな。
格闘系のクラスですら、拳装備——ちゃんと攻撃力は上がる――があるわけだし。
爪も牙もないんだから、そりゃ攻撃力が低いのも仕方ない事である。
「なんで、ヒーロークラスより高いです」
「かなり高いな」
レベルアップによって手に入るポイントは一緒だ。
だが初期値が違う。
ヒーロークラスの初期値は、下手したらノーマルクラスの倍近くあったりするからな。
これは結構な差になる。
あ、でも、幸運だけはノーマルもヒーロークラスも大差なかったりする。
まあ幸運が上がっても、強さにはほとんど影響しないからな。
だから据え置きなのだろう。
うん、ダンジョンやシーカーを生み出した神か何かがいるとして……幸運を設定した奴は絶対、ゴミステータスとして設定してるよな、これ。
もっとちゃんとバランスをとって欲しかった物だ。
それなら、【幸運】持ちの俺はもっと無双できたってのに。
「因みに、スキルが進化したのでもう一個スキルリンクが出来る様になりましたけど……それはまだ保留にしておきますね」
「保留?何でだ?」
スキルリンクは、お互いのスキルを共有できるようになる特殊なスキルだ。
最初の奴は俺の怪盗化と、勇気の魔眼をリンクしている。
「理由は二つあります。実は私がレベル70で取得するスキルが、今のマスターに凄く有用だってのと……ぶっちゃけ、今のマスターに私が欲しいって思える魅力的なスキルがないんで」
70で優秀なスキルを覚えるから、そっちを共有しようって訳か。
「まあ……スカンクバスターを覚えて、マスターと二人でダブルスカンクバスターも悪くはないんですけどね」
「それは覚えんでいい」
二人で豪快に屁をこくとか、完全に地獄絵図だろ。
そもそも効果は重複するのか?
しなさそうなんだが?
「そうですか。じゃあマスターのレベル90スキルに期待ですね」
期待も何も、お前絶対レベル90で習得するスキル知ってるだろ。
しらじらしい奴だ。
けどまあ逆に言うと、レベル90で覚えるスキルは、スキルリンクの候補になりうるぐらい強力なスキルって事の表れでもある。
そう考えるとワクワクするな。
怪盗のレベル90で覚えるスキルに。
レベル上げのモチベーションも上がるという物である。
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