第7話 クラスメート
「あ、神木の事が乗ってるな」
次のダンジョンへ向かうのに使った電車内で、ネットニュースを調べたところ、ある記事に目がいいく。
『新進気鋭のシーカー、早くもBランクへ!』
という見出しの記事だ。
開いて中を確認すると、シーカー神木聖が早くもレベル70でBランク入りしたと書かれていた。
「たった3年で70とか、やべぇなあいつ」
シーカーはレベルごとのランク分けがあった。
一けた台はFランクで。
10以上がE。
30以上がD。
50以上がC。
70以上がB。
80以上がA
そして、90以上がSランクである。
一般的なシーカーはCランク止まりが大半なので、Bランクは一部上澄みと考えて貰っていいだろう。
しかも神木聖は、たったの3年という短い期間でそこまで上がっているのだ。
大手ギルドのバックアップを含めて考えても、彼がどれほど優秀なシーカーであるかは語るまでもないレベルと言っていいだろう。
「まあでも、俺もすぐ追いつくからよ。【幸運】でな」
実は神木とは、高校の時のクラスメートだ。
あいつもシーカーを目指していたから、同じ夢を持った同士気の合う友人関係だった。
……ま、たった1年間ほどだったけどな。
2年の初めにあいつが覚醒して。
で、夢を追うためバッサリ学校をやめてしまったからな。
なので、同級生だったのは1年間だけだ。
因みに、あいつはレアクラスかつユニークスキル持ちに覚醒している。
まさに将来の有望株。
だからこそ、あいつは学校をやめて即シーカーの道に入った訳だ。
その後も、しばらくは電話でのやり取り位はしてたんだけど……
俺の両親が事故で亡くなって生活環境が激変したのと。
あいつもあいつでシーカー活動が忙しかったのもあって、自然と連絡が途切れてしまい。
気づけば2年って感じになっていた。
「久しぶりに連絡でも……いや、やめとこう」
どうせなら、強くなってから再会してびっくりさせた方が面白い。
こう、神木の奴がピンチに陥ってるときに、俺が颯爽と駆けつけて……って、それは流石に漫画の見過ぎか。
「よし!俺も頑張るぞ!」
周囲の視線が俺に集まる。
「あ、どうもすいません」
いかんいかん、電車の中だってことを完全に失念していた。
「さて……」
気恥ずかしい思いを抱きつつも電車に乗って目的地に着いた俺は、ダンジョンへと侵入する。
今回も変わらず洞窟っぽい場所だ。
まあダンジョンは大半が洞窟何で当たり前だが。
さて、今日来たダンジョンだが、ここはレベル9のカエル型の魔物がいる場所だ。
一応、Fランク最高難易度のダンジョンって事になってるが、まあ所詮はFランクなので、きっちり準備さえしてれば問題なく戦えるとネット情報にはあった。
ここも広さは昨日行ったダンジョンと同じぐらいで、使用中の通路の入り口に物が目印として置かれているのは一緒だ。
Eランク位になると一気に広さが増すそうなので、そういうのはなくなるそうだが。
俺は盾を手に持ち、空いてると思われる通路へと入った。
今までは木刀一本だったが、ここからは装備を変えている。
当たると結構痛いらしいので、ガードの為の小型の盾を。
そして犬っころ程柔らかくもないそうなので、武器は真剣のショートソードへ。
「出たな」
通路を少し進むと、赤と青のカエルが姿を現した。
サイズは子犬程度。
昨日戦ったベビーテンタクルドッグと大きさ自体は同じぐらいだ。
カエルとして考えるとくそデカいが、まあ魔物なんだから一緒にすること自体間違ってるか。
「ぐぇぐぇぐぇ!」
「ぐぇぐぇぐぇ!」
カエルが鳴き、赤い方が突っ込んでくる。
基本2匹セットで、赤色が近接。
そして青色が遠距離攻撃してくるのが、こいつらの戦闘スタイルだ。
「ぺっ!」
「っと……」
青い方がソフトボールサイズの水弾を飛ばしてきた。
俺はそれを手にした盾で受け止める。
腕がしびれるって程ではないけど、そこそこ重い。
確かにこれを喰らったら、結構痛いだろうな。
因みに、水弾を躱す事は難しくなかった。
が、敢えて受けたのは突っ込んで来た赤い方がいたからだ。
そう、こいつは水弾を躱した所に合わせて攻撃してくる。
いわゆる連携攻撃って奴だ。
まあ分かってるんならそれも合わせて躱せばいいって話ではあるんだが、慣れないうちは盾でガードした方がいい。
無理をして怪我をしたら損である。
と、ネットには書いてあった。
なのでまあ、俺もそれに倣った訳だ。
「ぐぇぇ!」
赤い方が飛び掛かって来る。
大きく開かれたその口には、ギザギザの鋭い歯が並んでいるのが見えた。
カエルには歯なんてないが、こいつはカエル型魔物なのでそこには当てはまらない。
齧りつかれたら確実に肉がえぐり取られそうだけど……
「ふっ!」
更に、動きはテンタクルドッグとは比べ物にならないぐらい早い。
が、訓練してきた俺にとって対処は難しくなかった。
その大きく開いた口に、右手に持ったショートソードを突き込んでやる。
「ぎゅええ」
それは奴の喉奥に突き刺さり、消滅して魔石へと変わる。
「盾でガードしてたから、対処も楽だったな……っと」
再び水弾が飛んで来たが、今度はそれを躱す。
赤いのはもういないので、態々ガードする必要もない。
飛んでくる攻撃を躱しながら一気に間合いを詰め、ショートソードで青い方も始末する。
「終了」
取りあえず、しばらくはこの狩場に籠る事になる。
ここで12まで上げて……その次はEランクダンジョンの簡単な奴だな。